淡雪の子守唄

雪桜 モノ

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邂逅

白く吹雪く中で

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 真っ白な世界にさらに白が降る。冷たく吹雪く風は重い雪を被った木すらも揺らし、どこからとも無くドサッ─っと音が鳴る。
 
 小さな灰色の足跡もその白で隠されていく。点々と続くそれは辿ってゆけば洞窟へと繋がっているようだった。
 
 
 …その洞窟は元々何かの後だったようだ。幾らか整えられた岩肌にはいつから置いてあるかわからない箱があった。ところどころ鉄を使われていたりはしているが、主に木を使ってあった。
 
 
 だからだろうか。彼は一匹その中の一つの箱の中で体を丸め寒さをしのいでいた。なれぬ一匹の夜はよく冷えて、眠りにつくのにも時間ばかりがかかる。
 
 「クゥン」
 
 悲しげに鳴くもその声を拾う者はいない。ただただ空虚な洞窟に音が響き木霊するだけだった。
 
 
 
   □■□■□■□■□■□
 
 
 ふと紅月が闇の中に煌めく。小さな体で箱の中から首を出す。夜は明けたようで外は少し明るくはなっていたが未だゴウゴウと吹雪いていた。
 
 紅月が見るのはその白の中にある“赤”だった。
 
 
 それに駆け寄り紅月は臭いをかぐ。“それ”は月色を殺した者と良く似た姿をしていた。手足が伸び倒れる時も横っ腹を晒すわけではなくうつ伏せだ。
 顔を白に埋めているため息苦しいのか唸っている。倒れてからいくらも立っていないらしい。
 
 ほかと違うのはその身に纏う赤だろう。血ではない。何かで染められた赤い衣服がやたらに目立つその生き物は、確かに生きている。
 
 
 「グルルル」
 
 警戒し唸る紅月にその生き物はうっすらと目を開ける。その目は紅月と同じような色をしていた。
 
 
 思わず唸るのをやめ硬直する紅月の頭を黒い手で撫で付ける。それに反射的に紅月が噛み付いても生き物は反応することは無かった。
 
 「ちい、さいな…同色の…狼…」
 
 目は見えているらしい。紅月のことをじっと見てやんわりと微笑む生き物に紅月は口から手を離す。痛覚は既に死んでいるらしい、噛み付いた手も冷たく、このままここに置けばこの生き物は死に絶えるだろう。
 
 
 そうすればこれは生き物ではなくエサとなる。
 
 
 紅月はその目をグッと細め、遠吠えをした。その声は少しばかり力んでいるようだった。
 
 
 
 
 
 
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