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45. エヴァンとルーフェス
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「それは……?エヴァンは何か知ってるの?」
言葉の続きを促すルーフェスの問いかけに、エヴァンはハッとして彼の方を見た。
彼は酷く深刻そうな表情でこちらの様子を伺って居るのだ。
その真剣な眼差しで真っ直ぐに見つめられては、エヴァンは観念するしかなかった。
仕方ないと言った感じで、エヴァンは「はぁーっ」と深く息を吐くと、恨みがましい目をルーフェスに向けて、質問に質問を返したのだった。
「貴方は昨日中央広場に行った?」
「は?行ってないよそんなとこ。」
急な突飛な問いかけに、ルーフェスは面食らった。彼自身、なぜそんな事を聞かれるのかまるで分かっていない様だった。
「けど姉さんは昨日中央広場で貴方に会ったんだって。一緒にいた女の人に知らない人って説明されてショックだったみたいだよ。」
それを聞いて、ルーフェスの表情が凍りついていたが、気にせずエヴァンは言葉を続ける。
「それにエミリアも、貴方が昨日女の人と一緒に劇を観に来てた所を目撃しているんだって。」
ここまで説明すると、エヴァンはルーフェスの様子をチラリと見た。彼は言葉を失い固まっていて、酷く難しい顔をしていたので、普段にこやかにしてる人間が真顔になるとこうも動揺が分かりやすいものなのかと妙な事に感心してしまった。
「それは……僕じゃない……」
少しの沈黙の後、ルーフェスは苦々しい顔で呟いた。
「そうだろうね。」
「……やけにあっさり信じてくれるんだね。」
ルーフェスは、エヴァンがさも当然かのように、自分の発言を肯定したのが意外で、拍子抜けした様だったが、エヴァンには、最初から昨日アンナが見かけた男性がルーフェスではないと確信があったのだ。
「だって……俺は見てるから。あの時、クライトゥール家にお使いに行った時に……屋敷から出て来る馬車の中を……」
そこまで聞くと、ルーフェスは今まで穏やかに話を聞いていた態度を一変させた。エヴァンの両肩を掴むと、深刻な顔で一言
「……見たの?」
と詰め寄ったのだった。
あまりの気迫にエヴァンは思わず顔を背け、俯きながら答えた。
「……見たけど、……何も見てない。」
その答えを聞いて、ルーフェスはゆっくりと彼の両肩を掴んでいた手を離すと、恐ろしく真剣な表情で釘を刺したのだった。
「それでいい。君は賢いね。」
エヴァンは、あの時馬車の中に見たものが、公爵家の暴いてはいけない秘密であり、自分が知ってはいけない事を見てしまったと薄々は勘づいていたが、今のルーフェスの態度で、その考えが正しかったと確信したのだった。
それから暫くルーフェスは黙ったまま、一人難しい顔でずっと思案を続けた。
話しかけられる雰囲気ではなかったので、エヴァンはその様子を静かに見守っていたが、いつまでも同じ姿勢で長考を続けるルーフェスを見兼ねて、堪らず声を掛けたのだった。
「ねぇ、それでどうするの?貴方は姉さんの誤解を解きたいんじゃないの?」
エヴァンの声に反応してルーフェスが顔を上げると、彼はとても思い詰めた様な、酷い顔をしていた。
「エヴァン、僕は君のお姉さんの誤解を解きたい。けどそれは、同時に彼女に公爵家の絶対に漏らしてはならない秘密を教えることにもなる。もし、この秘密を彼女が知っている事が公爵に知られたら、身の安全が保障できない。奴は平民なんて簡単に消すからね。」
そこまで言うと、ルーフェスは一度大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせてから話を続けた。
「……それでも僕は、彼女の誤解を解きたい。……いいかな?」
ルーフェスは真っ直ぐにエヴァンの目を見て訊ねると、緊張した面持ちで、彼の反応を待った。
その真剣な眼差しに、彼が姉に対してどれだけ真摯で誠実に向き合おうとしているのかを思い知った様な気がして、エヴァンは観念したかの様に溜息を吐くと、彼に対する決めかねていた態度を遂に決めたのだった。
「貴方が姉さんを守ってくれるなら、俺は何も口を出さないよ。」
この人はきっと姉を裏切らないだろうと直感的に思ったし、姉を心から笑顔に出来るのもきっとこの人なのだろうとなんとなく感じたのだ。
「有難う、エヴァン。」
ルーフェスが安心した様に微笑んでエヴァンの手を取り感謝の言葉を述べるので、エヴァンは慌ててその手を振り払った。
「だけれどもね、言っとくけどね、俺は姉さんの味方だからね。貴方に協力するわけじゃないよ。姉さんが嫌がれば諦めてよね。」
「分かったよ。」
「絶対だからね!」
ぶっきらぼうに振る舞いながらも、姉を心配するエヴァンの態度が微笑ましくて、ルーフェスは思わずクスッと笑った。
「それにしても、君は本当にアンナの事が好きなんだね。」
「そうだよ、悪い?!」
「いや、悪くないと思うよ。僕も同じだしね。」
「どうしてそう言うことを恥ずかしげも無く言える訳?!」
「恥ずかしい事じゃないからね。」
自分が恥ずかしくて素直に言えないような事をさらっと言うルーフェスに、エヴァンは何とも言えない表情で、ドギマギしていた。
そんなエヴァンをルーフェスは微笑ましく眺めると、目を瞑り深呼吸をした。そしてゆっくりと目を開けると、かしこまった様子でエヴァンに向き合って、彼にお願い事を頼んだのだった。
「それで、アンナに伝えてくれないかな。
誤解を解きたいから明日の十五時に、クライトゥール公爵家の庭師ジェフを尋ねてきてと。」
「分かった。伝えるよ。」
「……お願いね。」
こうして、エヴァンにアンナとの取り次ぎを依頼すると、ルーフェスは少し不安げな表情で家へと帰っていったのだった。
言葉の続きを促すルーフェスの問いかけに、エヴァンはハッとして彼の方を見た。
彼は酷く深刻そうな表情でこちらの様子を伺って居るのだ。
その真剣な眼差しで真っ直ぐに見つめられては、エヴァンは観念するしかなかった。
仕方ないと言った感じで、エヴァンは「はぁーっ」と深く息を吐くと、恨みがましい目をルーフェスに向けて、質問に質問を返したのだった。
「貴方は昨日中央広場に行った?」
「は?行ってないよそんなとこ。」
急な突飛な問いかけに、ルーフェスは面食らった。彼自身、なぜそんな事を聞かれるのかまるで分かっていない様だった。
「けど姉さんは昨日中央広場で貴方に会ったんだって。一緒にいた女の人に知らない人って説明されてショックだったみたいだよ。」
それを聞いて、ルーフェスの表情が凍りついていたが、気にせずエヴァンは言葉を続ける。
「それにエミリアも、貴方が昨日女の人と一緒に劇を観に来てた所を目撃しているんだって。」
ここまで説明すると、エヴァンはルーフェスの様子をチラリと見た。彼は言葉を失い固まっていて、酷く難しい顔をしていたので、普段にこやかにしてる人間が真顔になるとこうも動揺が分かりやすいものなのかと妙な事に感心してしまった。
「それは……僕じゃない……」
少しの沈黙の後、ルーフェスは苦々しい顔で呟いた。
「そうだろうね。」
「……やけにあっさり信じてくれるんだね。」
ルーフェスは、エヴァンがさも当然かのように、自分の発言を肯定したのが意外で、拍子抜けした様だったが、エヴァンには、最初から昨日アンナが見かけた男性がルーフェスではないと確信があったのだ。
「だって……俺は見てるから。あの時、クライトゥール家にお使いに行った時に……屋敷から出て来る馬車の中を……」
そこまで聞くと、ルーフェスは今まで穏やかに話を聞いていた態度を一変させた。エヴァンの両肩を掴むと、深刻な顔で一言
「……見たの?」
と詰め寄ったのだった。
あまりの気迫にエヴァンは思わず顔を背け、俯きながら答えた。
「……見たけど、……何も見てない。」
その答えを聞いて、ルーフェスはゆっくりと彼の両肩を掴んでいた手を離すと、恐ろしく真剣な表情で釘を刺したのだった。
「それでいい。君は賢いね。」
エヴァンは、あの時馬車の中に見たものが、公爵家の暴いてはいけない秘密であり、自分が知ってはいけない事を見てしまったと薄々は勘づいていたが、今のルーフェスの態度で、その考えが正しかったと確信したのだった。
それから暫くルーフェスは黙ったまま、一人難しい顔でずっと思案を続けた。
話しかけられる雰囲気ではなかったので、エヴァンはその様子を静かに見守っていたが、いつまでも同じ姿勢で長考を続けるルーフェスを見兼ねて、堪らず声を掛けたのだった。
「ねぇ、それでどうするの?貴方は姉さんの誤解を解きたいんじゃないの?」
エヴァンの声に反応してルーフェスが顔を上げると、彼はとても思い詰めた様な、酷い顔をしていた。
「エヴァン、僕は君のお姉さんの誤解を解きたい。けどそれは、同時に彼女に公爵家の絶対に漏らしてはならない秘密を教えることにもなる。もし、この秘密を彼女が知っている事が公爵に知られたら、身の安全が保障できない。奴は平民なんて簡単に消すからね。」
そこまで言うと、ルーフェスは一度大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせてから話を続けた。
「……それでも僕は、彼女の誤解を解きたい。……いいかな?」
ルーフェスは真っ直ぐにエヴァンの目を見て訊ねると、緊張した面持ちで、彼の反応を待った。
その真剣な眼差しに、彼が姉に対してどれだけ真摯で誠実に向き合おうとしているのかを思い知った様な気がして、エヴァンは観念したかの様に溜息を吐くと、彼に対する決めかねていた態度を遂に決めたのだった。
「貴方が姉さんを守ってくれるなら、俺は何も口を出さないよ。」
この人はきっと姉を裏切らないだろうと直感的に思ったし、姉を心から笑顔に出来るのもきっとこの人なのだろうとなんとなく感じたのだ。
「有難う、エヴァン。」
ルーフェスが安心した様に微笑んでエヴァンの手を取り感謝の言葉を述べるので、エヴァンは慌ててその手を振り払った。
「だけれどもね、言っとくけどね、俺は姉さんの味方だからね。貴方に協力するわけじゃないよ。姉さんが嫌がれば諦めてよね。」
「分かったよ。」
「絶対だからね!」
ぶっきらぼうに振る舞いながらも、姉を心配するエヴァンの態度が微笑ましくて、ルーフェスは思わずクスッと笑った。
「それにしても、君は本当にアンナの事が好きなんだね。」
「そうだよ、悪い?!」
「いや、悪くないと思うよ。僕も同じだしね。」
「どうしてそう言うことを恥ずかしげも無く言える訳?!」
「恥ずかしい事じゃないからね。」
自分が恥ずかしくて素直に言えないような事をさらっと言うルーフェスに、エヴァンは何とも言えない表情で、ドギマギしていた。
そんなエヴァンをルーフェスは微笑ましく眺めると、目を瞑り深呼吸をした。そしてゆっくりと目を開けると、かしこまった様子でエヴァンに向き合って、彼にお願い事を頼んだのだった。
「それで、アンナに伝えてくれないかな。
誤解を解きたいから明日の十五時に、クライトゥール公爵家の庭師ジェフを尋ねてきてと。」
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こうして、エヴァンにアンナとの取り次ぎを依頼すると、ルーフェスは少し不安げな表情で家へと帰っていったのだった。
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