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25. 観劇を終えて
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「……皇女が早まらなくて、本当に良かったですわ!!政略結婚を迫られて、国の為にその身を犠牲にする……その覚悟も立派ですが、夢の中で愛を確かめ合うのも素敵でしたわ!」
終幕を迎えカーテンコールが始まると、舞台にふたたび現れた演者達を称える観衆の割れんばかりの拍手で場内は熱狂に包まれた。
私も立ち上がって、演者達への称賛の拍手を送りながら、横に座るロキシード様に、この感動をお伝えしただけれども、私とは反対に、ロキシード様の反応は薄く、あまり感動されている様子はないようだった。
「殿下、あまりお気に召しませんでしたか?」
「いや?凄く良かったと思うよ。しっかり話が作られているし、歌や踊りと融合させて美しく魅せる演出は素晴らしかったよ。皇女のアリアも良かったし、ラストの群衆を巻き込んでのユニゾンは圧巻だったね。」
言葉では誉めているものの、私や他の観客程の熱量は、やはり感じられなかった。
「……にしては、殿下の感動は薄くありませんか?」
「まぁ、三回目だからね。観るの」
その言葉の意味を、私は瞬時に理解してしまった。
つまり、リリエラ様とローゼリア様――他の婚約者候補とも、同じように観劇をしたのだ。……私の前に。
(そっか……、当たり前だけど殿下は他の二人とも観劇を楽しんでいたのね……)
婚約者候補は三人。家格で言えば我が家は一番下だった。
だから私が最後なのは当然だけれども、胸の奥に小さな靄がかかった。
「しかし、意外だったな。君、こういう大衆向けの恋愛劇が好きなんだね。」
少し沈んでいた私に、不意にロキシード様がそんなことを聞いてきた。
私は、首を傾げながら答えた。
「意外……ですか?女の子はこういう話好きですよ?」
「うん、一般的にはね。でも君は今まで一般的な令嬢とは異なる反応ばかりだったから、なんか新鮮だ。」
「まぁ、ひどい。私そんなに変わり者ですか?」
「それが君の良いところだよ。」
“そんなことないよ” と言って欲しかったのに、ロキシード様はにこやかに笑って、迷うことなく肯定してしまった。
褒められてるはずなのに、私はなんだか少しだけ釈然としなかった。
……釈然としなかったが、殿下が自然と腕を差し出されて「そろそろ行こうか」と言うので、私は何も言わずにそっと手を添えた。
「さて、アディルナ嬢。いつもとは違ってこうして二人で街に出てきている訳だけど……今日も勝負はするのかい?」
二人で並んで劇場を出たところでロキシード様は足を止め、私の方をにこやかに見つめた。
言われてみれば、確かにこれも“お茶会”の一種だ。
そう気づいた瞬間、私はハッとした。
――しまった。
今日は観劇だとばかり思っていて、勝負事を何ひとつ用意していないのだ。
私は慌てて、今すぐできる勝負を必死に探し始めた。
……なのに、私が懸命に思考を巡らしてる横で、ロキシード様は構わずに話しかけてくるのであった。
「たまには勝負なしで、二人で街を散策するのもいいと思うんだ。君が行きたい場所があれば、そこへ行こう」
その言葉を聞いた瞬間、私の脳内に稲妻が走った。
「それですわ!!」
「何が?!」
突然声を張り上げた私に、殿下は目を丸くする。
そんな殿下をよそに、私は思いついたばかりの案を胸を張って告げたのだった。
「殿下、勝負はもちろんいたしますわ。内容はこうです。殿下が”私の行きたい場所”を当てられたら殿下の勝ち、間違えたら私の勝ちですわ!」
今思いついたとは思えないくらいの名案に、私は心の中で盛大に拍手を送った。
これならきっと、殿下も面白いと言ってくれるはずだと自信があった。
……しかし、ロキシード様は何か不服があるようで、私の提案に眉を寄せたのだった。
「それ、僕にかなり不利じゃないかな?アディの匙加減でいくらでも正解を変えられるじゃないか」
そこまで考えていなかったが、殿下の指摘は確かにそのとおりだった。
私は急遽、ルールを訂正した。
「では、こうしましょう。殿下の従者と私の侍女。この二人には予め場所を教えておきます。それなら公平でしょう?」
「そうだね。それなら、受けて立つよ」
殿下はそう言ってニコッと笑うと、私の手を腕からそっと外し、くるりと私の前へ回り込んだ。
そして、少しだけ腰を落とし、左手を胸に添え、右手を優雅に差し出す――
完璧な所作で、まるで舞台の一幕のように私を誘った。
「ではアディルナ嬢、お手をどうぞ。目的の場所までエスコートさせていただきます」
「まぁ、どこへ連れて行ってくださるのでしょう……とても楽しみですわ」
私は殿下の思わぬ行動にドキドキしながら、差し出されたその手に、そっと自分の手を重ねた。
終幕を迎えカーテンコールが始まると、舞台にふたたび現れた演者達を称える観衆の割れんばかりの拍手で場内は熱狂に包まれた。
私も立ち上がって、演者達への称賛の拍手を送りながら、横に座るロキシード様に、この感動をお伝えしただけれども、私とは反対に、ロキシード様の反応は薄く、あまり感動されている様子はないようだった。
「殿下、あまりお気に召しませんでしたか?」
「いや?凄く良かったと思うよ。しっかり話が作られているし、歌や踊りと融合させて美しく魅せる演出は素晴らしかったよ。皇女のアリアも良かったし、ラストの群衆を巻き込んでのユニゾンは圧巻だったね。」
言葉では誉めているものの、私や他の観客程の熱量は、やはり感じられなかった。
「……にしては、殿下の感動は薄くありませんか?」
「まぁ、三回目だからね。観るの」
その言葉の意味を、私は瞬時に理解してしまった。
つまり、リリエラ様とローゼリア様――他の婚約者候補とも、同じように観劇をしたのだ。……私の前に。
(そっか……、当たり前だけど殿下は他の二人とも観劇を楽しんでいたのね……)
婚約者候補は三人。家格で言えば我が家は一番下だった。
だから私が最後なのは当然だけれども、胸の奥に小さな靄がかかった。
「しかし、意外だったな。君、こういう大衆向けの恋愛劇が好きなんだね。」
少し沈んでいた私に、不意にロキシード様がそんなことを聞いてきた。
私は、首を傾げながら答えた。
「意外……ですか?女の子はこういう話好きですよ?」
「うん、一般的にはね。でも君は今まで一般的な令嬢とは異なる反応ばかりだったから、なんか新鮮だ。」
「まぁ、ひどい。私そんなに変わり者ですか?」
「それが君の良いところだよ。」
“そんなことないよ” と言って欲しかったのに、ロキシード様はにこやかに笑って、迷うことなく肯定してしまった。
褒められてるはずなのに、私はなんだか少しだけ釈然としなかった。
……釈然としなかったが、殿下が自然と腕を差し出されて「そろそろ行こうか」と言うので、私は何も言わずにそっと手を添えた。
「さて、アディルナ嬢。いつもとは違ってこうして二人で街に出てきている訳だけど……今日も勝負はするのかい?」
二人で並んで劇場を出たところでロキシード様は足を止め、私の方をにこやかに見つめた。
言われてみれば、確かにこれも“お茶会”の一種だ。
そう気づいた瞬間、私はハッとした。
――しまった。
今日は観劇だとばかり思っていて、勝負事を何ひとつ用意していないのだ。
私は慌てて、今すぐできる勝負を必死に探し始めた。
……なのに、私が懸命に思考を巡らしてる横で、ロキシード様は構わずに話しかけてくるのであった。
「たまには勝負なしで、二人で街を散策するのもいいと思うんだ。君が行きたい場所があれば、そこへ行こう」
その言葉を聞いた瞬間、私の脳内に稲妻が走った。
「それですわ!!」
「何が?!」
突然声を張り上げた私に、殿下は目を丸くする。
そんな殿下をよそに、私は思いついたばかりの案を胸を張って告げたのだった。
「殿下、勝負はもちろんいたしますわ。内容はこうです。殿下が”私の行きたい場所”を当てられたら殿下の勝ち、間違えたら私の勝ちですわ!」
今思いついたとは思えないくらいの名案に、私は心の中で盛大に拍手を送った。
これならきっと、殿下も面白いと言ってくれるはずだと自信があった。
……しかし、ロキシード様は何か不服があるようで、私の提案に眉を寄せたのだった。
「それ、僕にかなり不利じゃないかな?アディの匙加減でいくらでも正解を変えられるじゃないか」
そこまで考えていなかったが、殿下の指摘は確かにそのとおりだった。
私は急遽、ルールを訂正した。
「では、こうしましょう。殿下の従者と私の侍女。この二人には予め場所を教えておきます。それなら公平でしょう?」
「そうだね。それなら、受けて立つよ」
殿下はそう言ってニコッと笑うと、私の手を腕からそっと外し、くるりと私の前へ回り込んだ。
そして、少しだけ腰を落とし、左手を胸に添え、右手を優雅に差し出す――
完璧な所作で、まるで舞台の一幕のように私を誘った。
「ではアディルナ嬢、お手をどうぞ。目的の場所までエスコートさせていただきます」
「まぁ、どこへ連れて行ってくださるのでしょう……とても楽しみですわ」
私は殿下の思わぬ行動にドキドキしながら、差し出されたその手に、そっと自分の手を重ねた。
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