三度目の衝撃。

帯刀通

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三度目の衝撃。

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中学も二年生になった初夏。うちの中学にも教育実習生がやってきた。当然うちの卒業生で、男の人で、某有名私大の四年生だった。偶然にも、担任の元教え子だったということもあり、僕たちのクラスを受け持つことになった。

背が高くて、イケメンで、ガタイもよくて、サッカー部出身で、ほんの数年の違いでこんなに変わるのかと思うほど大人のオトコの人だった。

いかにも勝ち組なタイプ。実際に教師になりたいわけではなく単位と資格目的なのが見え見えだったが、気さくで明るく、頼れる兄貴みたいなポジションをするりと獲得してしまうくらいには要領よく世慣れた感じだった。

クラスメイトたちからは概ね好意的に迎えられていた。自分から話しかけにいく奴らもいた。いつも人に囲まれている、クラスの人気者ってところか。何にしろ、僕には関わりのない人種だった。

だが、センセイはちょくちょく僕に声をかけてきた。初日の日直がたまたま僕だった、ただそれだけの縁だったが、授業に必要な荷物を準備室から運んできたり、職員室にあるプリントをクラスで配ったり、そういうたわいもない雑用をよく任された。正直面倒だったが、点数稼ぎにちょうどいいかと諦め半分、素直に従っていた。どうせすぐいなくなる。

もう明日で実習も終わる、という日の放課後。
授業で使った資料を準備室に戻すのを手伝ってくれ、と頼まれた。特に用事もない僕は、二つ返事で引き受けて、荷物を机に置いたままセンセイの後ろに着いていった。

非力なチビの僕などわざわざ指名しなくても、といつものように思ったけれど、それも明日で終わりと思えば腹も立たない。キュッキュッと床が鳴る。窓の外では運動部の声。差し込む夕暮れの淡い光が目に眩しかった。

ガラガラっと引き戸を開けてセンセイが僕を招き入れる。少し埃っぽくて紙の乾いた匂いが心地よかった。机の上にドサリと資料を置いて、さあ帰るかと振り向いた時、声をかけられた。

「明日で終わりだし、たくさん手伝ってくれたから、お礼にコーヒーでも飲んでいかないか?」

それは思ってもみない誘いで、特に断る理由もなかった僕は、こくんと頷いた。すすめられた椅子に腰を下ろして、センセイがコーヒーをセットする間、ぼんやりと窓の外を眺めていた。

鴉の鳴き声が遠くに聞こえる。校舎の隅にある準備室は静かで、夕暮れに取り残されたようにひんやりと淋しい空気が漂っていた。お湯を沸かすケトルの音、立ち上る湯気、コポコポと泡の音がする。部屋に漂い始める少し苦くて芳しい香り。気持ちのいい夕暮れだった。

はい、と渡された白いマグカップを両手で受けとる。ブラックしかできなくて、と申し訳なさそうな顔をしたセンセイに、大丈夫です、と小声で答えた。

ふぅふぅと息をかけて冷ましてもまだまだ熱くて飲めやしない。啜るのも行儀が悪いかと諦めて、一度机にカップを置こうとした瞬間。

「あ、ごめん」

と感情のない声が降ってきた。そして右手の甲に遅れてやってきた痛みと熱さ。

座る僕の向かいに腰を下ろそうとしたセンセイがバランスを崩して、膝同士がぶつかった衝撃で、カップが揺れた。手にかかるコーヒーの熱さにビクッとして、さらに表面が揺れた。軽く、ズボンにもかかってしまった。

「大丈夫かい?ごめんな」

特に慌てた様子もなくセンセイは僕の手からカップを取り上げると、右手を取った。茶色く濡れた部分がヒリヒリとする。こっちに来て、と引っ張られて蛇口をまわし、水道の水を勢いよくかけられた。冷たくて痛くて、思わず顔をしかめると、すぐ近くにセンセイの顔があった。
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