6 / 17
turn B - 破 -
04
しおりを挟む
ふいにシャワーの音が止まって、カチャリとドアが開く音がした。ペタリと湿った足音たちがふいに消えて、ギシっとベッドが弾む。今、あなたはどんな顔でオレに近づいてきているんだろう。気が狂いそうなほど見たい、触れたい、キスしたいのに、許されない。
ふわり、と頬に風を感じて、これまでにない距離で吐息を感じる。堰を切って溢れる愛しさに、胸が音を立てて軋んだ。
「お前は、何もしなくていいから」
同じセリフを吐いて、丁寧にそっと服を脱がせていく指先が、ひどく冷たい。ためらいで震えながら、壊れ物を扱うみたいにそっと触れてくるのは、あなたの優しさなのか、それとも。暗闇の中では空気すら推し量ることができない。
何一つ隠すものがなくなって、忍び寄る寒さに粟立つ肌に、そっと添えられた手が吸いつくようにしっとりと重なる。膝を割るように進んでくる何かが足の内側に触れて、少しゴワゴワとしたタオルのような感触が徐々に前進してくる。くすぐったさと恥ずかしさと、口には出せない期待に、血流が身体の中心に集中するのを感じた。いつもより何倍も鋭くなった感覚が、神経の針のような穴を高速で縫って駆け上がっていく。繋がりあった細胞全体が肥大して、ふるりと全身が震えた。
急に、太腿に圧迫感と重量感がのしかかってきた、と感じた瞬間、敏感な部分が温かくぬめりのある何かに包まれて、一気にきゅっと吸い上げられた。腰がガクガクっと跳ねて、思わずうわっと情けない声が漏れる。だって、いきなり、咥えるなんて思うわけない。
予想外の出来事に、ジリジリと身体が引いたのを敏感に感じ取ったのか、ねっとりとした余韻を残して離れていく温もり。濡れて晒された部分は気化熱で冷えるはずなのに、熱が逃げてくれない。
「…やっぱ、やめとくか?」
ーーーきもち、わるいよな。
そう確信的に尋ねる声が、ひどく震えていて、慌てて首を振った。
「ちが、ちがうんです。びっくり、しただけ、で。その、えっと、きもちいい、から」
何かオレ、めっちゃ頭悪そう。自分でも呆れるほどバカみたいに必死な言い訳をして、どこにあるのか分からない愛しいひとのカケラを探して、宙に手を伸ばす。
掠めることすら出来ない指先が、ふわふわと頼りなげにさ迷うだけ。繋がれない身体と繋がりたい気持ち。もどかしく首を振り、あなたを探すオレは、あなたの目にどう映っていますか。
無言のまま、ベッドを軋ませてまた近づいてくる気配の後から、温もりに包まれる。浮きそうになる腰をなだめるように押さえ込まれながら、何度も繰り返される上下の動きは滑らかで的確で、こんな行為を一度もしたことのないオレには到底マネ出来ない巧みさで、簡単にオレを高みまで運んでいってしまう。
狭い部屋に沈殿していく卑猥な水音と、呻くような自分の声。昂りを逃すように腹に力を入れて堪える。与えられる刺激が容易に快感にすり替えられていく過程を、暗い嫉妬に焼かれながらじっと耐えるうちに、もうこれ以上はキツいと張り詰めた痛みが爆発する寸前で、ぷはっという吐息と共に吐き出された。
ベッドの上をゆっくりと移動しながら沈み込む振動が繰り返された後に、ピリリと千切れるアルミの音。そして、また温かい何かが今度はギチギチと締めつけるように移動してオレを包み込んでいく。
…口で、被せるのとか、えっろ…何なのこのひと。やっぱりさっきのルールなんか無視して喰らいついてやろうか、と上半身を起こしかかった瞬間、また肩をトンと押されて仰向けに倒れ込んだ。とろり、と冷たい何かが、腹に、足に、滴のように垂れる。
「結局、女の子とヤるのと一緒だから……そのまま動かないで」
胸に押し当てられた大きな手が、わずかに震えていた。ん、と何かを堪えて焦がれるような甘い声が降ってきて、きゅうきゅうと吸い付くような暗がりに飲み込まれていく。
「え、待って、え」
いきなり、もう、そんな。混乱する頭とは裏腹に下半身は強烈な快感に包まれて。ずずずっと押し入るように狭い壁の中を進むにつれ、顔の横に置かれた手が、腕が、ベッドに深く沈んでいく。体重をかけて自らオレのものを飲み込んでいるのだろう、その姿を見られないなんて、ウソだろ。
気が狂いそうな愛しさと快楽に、一瞬理性を手放しそうになる。ん、ぐ、っと時折聞こえる呻き声に挟まる粗い息が厭らしさを増幅させて、腰が我慢できずに揺れれば、それに反応するようにぴったりと絡みついてくる内襞。感じたことのない快楽を味わった脳がドーパミンを大量に撒き散らす。
とうとう互いの肌が密着して全て深淵に飲み込まれた瞬間の恍惚に耐えられず、バカみたいに腰を突き上げた。優しさや労りなどカケラもないただがむしゃらな抽挿に、びくびくと震える肌が気持ちいいと訴えているようで、気がつけば手探りで腰を掴んでぐいぐいと揺さぶっていた。
ふわり、と頬に風を感じて、これまでにない距離で吐息を感じる。堰を切って溢れる愛しさに、胸が音を立てて軋んだ。
「お前は、何もしなくていいから」
同じセリフを吐いて、丁寧にそっと服を脱がせていく指先が、ひどく冷たい。ためらいで震えながら、壊れ物を扱うみたいにそっと触れてくるのは、あなたの優しさなのか、それとも。暗闇の中では空気すら推し量ることができない。
何一つ隠すものがなくなって、忍び寄る寒さに粟立つ肌に、そっと添えられた手が吸いつくようにしっとりと重なる。膝を割るように進んでくる何かが足の内側に触れて、少しゴワゴワとしたタオルのような感触が徐々に前進してくる。くすぐったさと恥ずかしさと、口には出せない期待に、血流が身体の中心に集中するのを感じた。いつもより何倍も鋭くなった感覚が、神経の針のような穴を高速で縫って駆け上がっていく。繋がりあった細胞全体が肥大して、ふるりと全身が震えた。
急に、太腿に圧迫感と重量感がのしかかってきた、と感じた瞬間、敏感な部分が温かくぬめりのある何かに包まれて、一気にきゅっと吸い上げられた。腰がガクガクっと跳ねて、思わずうわっと情けない声が漏れる。だって、いきなり、咥えるなんて思うわけない。
予想外の出来事に、ジリジリと身体が引いたのを敏感に感じ取ったのか、ねっとりとした余韻を残して離れていく温もり。濡れて晒された部分は気化熱で冷えるはずなのに、熱が逃げてくれない。
「…やっぱ、やめとくか?」
ーーーきもち、わるいよな。
そう確信的に尋ねる声が、ひどく震えていて、慌てて首を振った。
「ちが、ちがうんです。びっくり、しただけ、で。その、えっと、きもちいい、から」
何かオレ、めっちゃ頭悪そう。自分でも呆れるほどバカみたいに必死な言い訳をして、どこにあるのか分からない愛しいひとのカケラを探して、宙に手を伸ばす。
掠めることすら出来ない指先が、ふわふわと頼りなげにさ迷うだけ。繋がれない身体と繋がりたい気持ち。もどかしく首を振り、あなたを探すオレは、あなたの目にどう映っていますか。
無言のまま、ベッドを軋ませてまた近づいてくる気配の後から、温もりに包まれる。浮きそうになる腰をなだめるように押さえ込まれながら、何度も繰り返される上下の動きは滑らかで的確で、こんな行為を一度もしたことのないオレには到底マネ出来ない巧みさで、簡単にオレを高みまで運んでいってしまう。
狭い部屋に沈殿していく卑猥な水音と、呻くような自分の声。昂りを逃すように腹に力を入れて堪える。与えられる刺激が容易に快感にすり替えられていく過程を、暗い嫉妬に焼かれながらじっと耐えるうちに、もうこれ以上はキツいと張り詰めた痛みが爆発する寸前で、ぷはっという吐息と共に吐き出された。
ベッドの上をゆっくりと移動しながら沈み込む振動が繰り返された後に、ピリリと千切れるアルミの音。そして、また温かい何かが今度はギチギチと締めつけるように移動してオレを包み込んでいく。
…口で、被せるのとか、えっろ…何なのこのひと。やっぱりさっきのルールなんか無視して喰らいついてやろうか、と上半身を起こしかかった瞬間、また肩をトンと押されて仰向けに倒れ込んだ。とろり、と冷たい何かが、腹に、足に、滴のように垂れる。
「結局、女の子とヤるのと一緒だから……そのまま動かないで」
胸に押し当てられた大きな手が、わずかに震えていた。ん、と何かを堪えて焦がれるような甘い声が降ってきて、きゅうきゅうと吸い付くような暗がりに飲み込まれていく。
「え、待って、え」
いきなり、もう、そんな。混乱する頭とは裏腹に下半身は強烈な快感に包まれて。ずずずっと押し入るように狭い壁の中を進むにつれ、顔の横に置かれた手が、腕が、ベッドに深く沈んでいく。体重をかけて自らオレのものを飲み込んでいるのだろう、その姿を見られないなんて、ウソだろ。
気が狂いそうな愛しさと快楽に、一瞬理性を手放しそうになる。ん、ぐ、っと時折聞こえる呻き声に挟まる粗い息が厭らしさを増幅させて、腰が我慢できずに揺れれば、それに反応するようにぴったりと絡みついてくる内襞。感じたことのない快楽を味わった脳がドーパミンを大量に撒き散らす。
とうとう互いの肌が密着して全て深淵に飲み込まれた瞬間の恍惚に耐えられず、バカみたいに腰を突き上げた。優しさや労りなどカケラもないただがむしゃらな抽挿に、びくびくと震える肌が気持ちいいと訴えているようで、気がつけば手探りで腰を掴んでぐいぐいと揺さぶっていた。
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜
トマトふぁ之助
BL
某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。
そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。
聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる