影牢 -かげろう-

帯刀通

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解放と君臨

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---だから、返して?僕の身体。
もういいんだよー。ゆっくりお休みー。
じゃあね、お疲れ、バイバーイ♪---

また明日、とでも言いたげな軽い口調で彼が振っていた手を下ろすと目の前に、がしゃん、と鉄格子が出現した。

黒い霞で出来たような其れは触れることも出来ず、雲を掴むように指の間を擦り抜ける。だのに何故か、明確にそこには境界が存在した。指は擦り抜けても、身体は見えない何かに阻まれて先へ進むことが出来ない。これは檻だ。影で出来た牢獄。

---ふふふ、君にも見えたみたいだね。
ソレ、君の最愛の人も囚われてるヤツだよ。
うふふふ、さっすが!魂の番、だっけ?
相思相愛だね!仲良しだね!おめでとう!---

途端、全身の血が逆流した。

「っ!あの人に何をした!?」

---ええ?別に何もしてないよー?心外だなぁ!
勝手に自分で壁作って、ありもしない檻の中に引き篭もって、
世界はこんなに広いのに、こんなに美しく希望に満ち溢れているってのに、
生きてるだけで、呼吸してるだけで、こんなにも幸福だっていうのに
この世の中で自分が一番不幸です、みたいな顔してるだけでしょ?あんたたちって。---

世界について語る時の泉は、初恋の人に抱く憧憬を語る少年のように、まだ見ぬ未来に目を輝かせて夢を語る子供のように、とても可愛らしく映った。全身から生きている喜びを発散しているのか、泉の身を包むような淡い虹色のオーラすら見えた。生命の謳歌。光の滴を凝縮して閉じ込めて出来た宝石のように煌煌しい。とても美しい姿だった。

だからこそ、

---そういうのってさぁ僕、
心底ムカつくんだよね---

そう言って僕を睨んだ顔の云い様のない恐ろしさが、酷く胸に迫った。

ーーーまあ、もうどうでもいっか。
そろそろお開きのお時間でーす。ーーー

突然、闇を区切る境界線を、走る光が描き出す。切り取られた長方形の向こうから眩い光が差し込んだ。明順応が追いつかない。逆光で泉の表情は見えなかった。

ーーーこれでも少しはさ、
美澄を演じきった君には偉いなーとか、
お疲れ様ーとか、思ってはいるんだよ?
その矜持は見習いたいとこあるし。
だから、ちょっとばかりの敬意を表して、
君の世界は終わらせないでいてあげる。
そこでのんびり眺めててよ。
僕がちょろっと、
天下を獲ってくるところをさ?ーーー

バイバイ、と気軽に手を振って背を向けると、泉の身体は光の向こうに吸い込まれていった。


そして、パタンと扉は閉ざされ、


僕の世界も閉ざされた。

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