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【神アカシ篇】(1項目)
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――悪霊。 若頭は写真を睨んでそう言った。
「この金髪少年が悪霊なの?」
僕は聞き返す。
「やだ、こわ~い。 やめてよ、あたしそういうの苦手なんだからぁ~;;」
お嬢が怖がってギュっと腕にしがみ付いてくる。
そんなにくっつかれると、その……ムネがあたる。
「この少年が喰らおうとしている苺! 悪霊に取り憑かれているゾヨ!!」
若頭はビシッと指をさす。
その指の先を見る。
少年が掴んで口に運ぼうとしている苺に、小さな不気味な顔のようなものがあった。
「今すぐ止めぬと大変なことになるゾヨ! 即刻、退治しに行くゾヨ!」
窓を開け放ち、そこから飛び降りようとする。
「きっともう無理だよ。この苺は少年の腹の中だよ」
呆れながら僕は止める。
「では吐き出させて除霊する」
「もう消化吸収されちゃってると思うけど」
「では腹を引き裂いて――」
「もうその先は言わなくていいよ……」
でもこれでやっと核心に迫れそうだ。
「実は数日間、報道部の連中に張り込みさせて調べさせたんだけど……この少年は夜にしか現れないんだ」
そう、これが夜の魔術師と呼ばれる原因だ。
僕が真剣な瞳を向けると、皆は空気を張り詰めさせた。
「ほう、そんなことをしておったのか、大棟梁の名も伊達ではなさそうだな」
「まあね」
僕は続ける。
「少年が姿を現す時間帯は深夜零時から夜明け前までだ。
だから若頭、夜の学園に張り込んで捕まえるのに手を貸して欲しい」
「……手を貸して欲しいだと? 自分独りで出来ぬのか?もしかして怖いのか?」
「そうかもね」
その言葉に皆が少し驚いて一瞬動きを止めた。
「うん、夜の学園ってお化け出そうで怖いんだぁ。
だからさ、一緒に付いてきてよ。 頼むよ若頭」
僕は顔の前で手を合わせて戯けてみせた。
若頭は少しビックリして頬を赤く染めながら、咳き込むような手振りをした。
「仕方が無い、付いて行ってやってもよいゾ。 余はこの学園の副棟梁でもあるしな」
「ありがとう」
「まったく、幽霊ごときに脅えるとは役に立たぬ大棟梁ゾヨ。 余が必ず捕まえてみせるゾヨー!」
「へえ、棟梁にも怖いものあったのね。 お化け怖いの、あたしと同じね」
僕の腕にしがみ付いたままのお嬢は優しく微笑みを向けてくれる。
お化けが怖いというのは言い訳だった。
夜の魔術師は何か危険な、嫌な気配を感じる。もしかすると自分独りでは歯が立たないかもしれない。
若頭はお寺の仕事も修行中ではあるが、ある程度の霊能力がある。
僕にも少し形は違うけれど、似たような能力が備わっている。
――と、これはまだ秘密だけど。
「それで、お嬢様には学園長に夜の学園潜入許可を取って頂きたいのですが、宜しいですか?」
お嬢の手を取り、姿勢を低くして敬礼してみせる。
「わかったわ♪ まかせといて!」
お嬢はうっとりとして満足そうに、もう片方の手を自分の頬に添えた。
「あのう、ぼくは何をすれば……」
アルが瞳を輝かせながら命令を待ち侘びていた。
……正直、存在自体を忘れていた。
「アルは……」 僕は考える。
「アルは……」 更に考える。
「足手まといだから要らない」
「ぶぎゃーーん!?」
盛大に泣かれてしまった。
冗談だよ、と頭を撫でてなだめる。
「アルは、学園内に教職員や生徒が残っていないように配慮して」
「わかりましたれす! 頼まれましたれす!」
アルは額に手を添えて軍人のようにビシッと敬礼した。
……本当に、夜の魔術師とは何者なのだろう。
これで苺の事件を解決することが出来るのだろうか。
不安はあるけれど、でも……。
窓の外を見て、もうすぐ満月が近いなと思った。
もう一度、皆のほうへ真っ直ぐに向き直す。
「決戦は今夜行う! 生徒会最高指揮官部、始動開始だ!」
「この金髪少年が悪霊なの?」
僕は聞き返す。
「やだ、こわ~い。 やめてよ、あたしそういうの苦手なんだからぁ~;;」
お嬢が怖がってギュっと腕にしがみ付いてくる。
そんなにくっつかれると、その……ムネがあたる。
「この少年が喰らおうとしている苺! 悪霊に取り憑かれているゾヨ!!」
若頭はビシッと指をさす。
その指の先を見る。
少年が掴んで口に運ぼうとしている苺に、小さな不気味な顔のようなものがあった。
「今すぐ止めぬと大変なことになるゾヨ! 即刻、退治しに行くゾヨ!」
窓を開け放ち、そこから飛び降りようとする。
「きっともう無理だよ。この苺は少年の腹の中だよ」
呆れながら僕は止める。
「では吐き出させて除霊する」
「もう消化吸収されちゃってると思うけど」
「では腹を引き裂いて――」
「もうその先は言わなくていいよ……」
でもこれでやっと核心に迫れそうだ。
「実は数日間、報道部の連中に張り込みさせて調べさせたんだけど……この少年は夜にしか現れないんだ」
そう、これが夜の魔術師と呼ばれる原因だ。
僕が真剣な瞳を向けると、皆は空気を張り詰めさせた。
「ほう、そんなことをしておったのか、大棟梁の名も伊達ではなさそうだな」
「まあね」
僕は続ける。
「少年が姿を現す時間帯は深夜零時から夜明け前までだ。
だから若頭、夜の学園に張り込んで捕まえるのに手を貸して欲しい」
「……手を貸して欲しいだと? 自分独りで出来ぬのか?もしかして怖いのか?」
「そうかもね」
その言葉に皆が少し驚いて一瞬動きを止めた。
「うん、夜の学園ってお化け出そうで怖いんだぁ。
だからさ、一緒に付いてきてよ。 頼むよ若頭」
僕は顔の前で手を合わせて戯けてみせた。
若頭は少しビックリして頬を赤く染めながら、咳き込むような手振りをした。
「仕方が無い、付いて行ってやってもよいゾ。 余はこの学園の副棟梁でもあるしな」
「ありがとう」
「まったく、幽霊ごときに脅えるとは役に立たぬ大棟梁ゾヨ。 余が必ず捕まえてみせるゾヨー!」
「へえ、棟梁にも怖いものあったのね。 お化け怖いの、あたしと同じね」
僕の腕にしがみ付いたままのお嬢は優しく微笑みを向けてくれる。
お化けが怖いというのは言い訳だった。
夜の魔術師は何か危険な、嫌な気配を感じる。もしかすると自分独りでは歯が立たないかもしれない。
若頭はお寺の仕事も修行中ではあるが、ある程度の霊能力がある。
僕にも少し形は違うけれど、似たような能力が備わっている。
――と、これはまだ秘密だけど。
「それで、お嬢様には学園長に夜の学園潜入許可を取って頂きたいのですが、宜しいですか?」
お嬢の手を取り、姿勢を低くして敬礼してみせる。
「わかったわ♪ まかせといて!」
お嬢はうっとりとして満足そうに、もう片方の手を自分の頬に添えた。
「あのう、ぼくは何をすれば……」
アルが瞳を輝かせながら命令を待ち侘びていた。
……正直、存在自体を忘れていた。
「アルは……」 僕は考える。
「アルは……」 更に考える。
「足手まといだから要らない」
「ぶぎゃーーん!?」
盛大に泣かれてしまった。
冗談だよ、と頭を撫でてなだめる。
「アルは、学園内に教職員や生徒が残っていないように配慮して」
「わかりましたれす! 頼まれましたれす!」
アルは額に手を添えて軍人のようにビシッと敬礼した。
……本当に、夜の魔術師とは何者なのだろう。
これで苺の事件を解決することが出来るのだろうか。
不安はあるけれど、でも……。
窓の外を見て、もうすぐ満月が近いなと思った。
もう一度、皆のほうへ真っ直ぐに向き直す。
「決戦は今夜行う! 生徒会最高指揮官部、始動開始だ!」
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