16 / 17
16
しおりを挟む
「アリレザ様、おはようございます。朝食をお持ちしました。入室させていただいてもよろしいでしょうか」
そんなメイドの言葉と共に、なんとも言えない空気感の中朝食となった。
朝は大体質素なことが多い。パンとバター、短いペンネの入ったスープに牛乳、そして蜜柑1個。アルフォンスも同じ内容だった。
「……こちらの食事には慣れたか?」
「そうだね。美味しいよ」
隣接している国かつ実質占領地でもあった関係で、食事の味付けはそう遠くない。地域特有のものというのも当然あるが、そんなに違和感もなく食事は受け入れられていた。
「パーティーに参加したとき、すごく食事が美味しかったという記憶があるんだ。だから、こちらの食事が合わなければどうしいうかと心配していたんだ」
「いつも美味しい料理を作ってもらえてるよ。アルフォンスから伝えられるようだったら、シェフたちにありがとうって伝えて欲しい」
誰がどんな感情を抱いているのかもわからない。
もし憎悪や嫌悪を抱いている相手に話しかけて厄介なことになったら困ってしまう。
『情報は得ろ。しかし近付きすぎはするな、あくまで我々の敵だ』
そんな父の言葉を思い出す。未だに積年の恨みを晴らすべく執念を燃やす父はそう言った。
相手国だって同じような感情を持っていたっておかしくないのだから、せめて遠回しにでも伝えたい。もしかしたらそれさえ嫌がられてしまうかもしれないが。
(まあ、それはそれで仕方がないかな……)
内心で小さなため息をつく。日頃の感謝を伝えることさえ自由にはできない。
「アリレザの頼みなら。確実に伝えよう」
やけに息巻いているアルフォンスに思わず声をかける。
「そんな気張ることじゃないよ」
「頼まれごとはちゃんと果たしたい。それに、シェフたちも自分達の料理を褒められたら嬉しいはずだ」
「俺の言葉じゃ、どうだろう」
その言葉にアルフォンスは眉間にシワを寄せた。
彼自身も、アリレザが回りからどう扱われているかは実際に見ているから言葉がつまってしまう。
「……だが、シェフたちは自分の料理に自信を持っている。評価されることに違いはないし、人種はそこには関係ない。必ず伝える」
「そうだね。ありがとう、アルフォンス」
王族お抱えともなれば、国中のなかでもトップの人々。そこに誇りを持っていなければなることだって不可能なはずだ。
(喜んでくれると良いけどな)
自国の第一王子が伝えた伝言ともなれば、少しは魅力的な言葉になるだろうか。
食後に薬を飲んで、長い休日の一日が始まった。
そんなメイドの言葉と共に、なんとも言えない空気感の中朝食となった。
朝は大体質素なことが多い。パンとバター、短いペンネの入ったスープに牛乳、そして蜜柑1個。アルフォンスも同じ内容だった。
「……こちらの食事には慣れたか?」
「そうだね。美味しいよ」
隣接している国かつ実質占領地でもあった関係で、食事の味付けはそう遠くない。地域特有のものというのも当然あるが、そんなに違和感もなく食事は受け入れられていた。
「パーティーに参加したとき、すごく食事が美味しかったという記憶があるんだ。だから、こちらの食事が合わなければどうしいうかと心配していたんだ」
「いつも美味しい料理を作ってもらえてるよ。アルフォンスから伝えられるようだったら、シェフたちにありがとうって伝えて欲しい」
誰がどんな感情を抱いているのかもわからない。
もし憎悪や嫌悪を抱いている相手に話しかけて厄介なことになったら困ってしまう。
『情報は得ろ。しかし近付きすぎはするな、あくまで我々の敵だ』
そんな父の言葉を思い出す。未だに積年の恨みを晴らすべく執念を燃やす父はそう言った。
相手国だって同じような感情を持っていたっておかしくないのだから、せめて遠回しにでも伝えたい。もしかしたらそれさえ嫌がられてしまうかもしれないが。
(まあ、それはそれで仕方がないかな……)
内心で小さなため息をつく。日頃の感謝を伝えることさえ自由にはできない。
「アリレザの頼みなら。確実に伝えよう」
やけに息巻いているアルフォンスに思わず声をかける。
「そんな気張ることじゃないよ」
「頼まれごとはちゃんと果たしたい。それに、シェフたちも自分達の料理を褒められたら嬉しいはずだ」
「俺の言葉じゃ、どうだろう」
その言葉にアルフォンスは眉間にシワを寄せた。
彼自身も、アリレザが回りからどう扱われているかは実際に見ているから言葉がつまってしまう。
「……だが、シェフたちは自分の料理に自信を持っている。評価されることに違いはないし、人種はそこには関係ない。必ず伝える」
「そうだね。ありがとう、アルフォンス」
王族お抱えともなれば、国中のなかでもトップの人々。そこに誇りを持っていなければなることだって不可能なはずだ。
(喜んでくれると良いけどな)
自国の第一王子が伝えた伝言ともなれば、少しは魅力的な言葉になるだろうか。
食後に薬を飲んで、長い休日の一日が始まった。
5
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
病み墜ちした騎士を救う方法
無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。
死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。
死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。
どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……?
※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
【完結】陰キャなΩは義弟αに嫌われるほど好きになる
grotta
BL
蓉平は父親が金持ちでひきこもりの一見平凡なアラサーオメガ。
幼い頃から特殊なフェロモン体質で、誰彼構わず惹き付けてしまうのが悩みだった。
そんな蓉平の父が突然再婚することになり、大学生の義弟ができた。
それがなんと蓉平が推しているSNSのインフルエンサーAoこと蒼司だった。
【俺様インフルエンサーα×引きこもり無自覚フェロモン垂れ流しΩ】
フェロモンアレルギーの蒼司は蓉平のフェロモンに誘惑されたくない。それであえて「変態」などと言って冷たく接してくるが、フェロモン体質で人に好かれるのに嫌気がさしていた蓉平は逆に「嫌われるのって気楽〜♡」と喜んでしまう。しかも喜べば喜ぶほどフェロモンがダダ漏れになり……?
・なぜか義弟と二人暮らしするはめに
・親の陰謀(?)
・50代男性と付き合おうとしたら怒られました
※オメガバースですが、コメディですので気楽にどうぞ。
※本編に入らなかったいちゃラブ(?)番外編は全4話。
※6/20 本作がエブリスタの「正反対の二人のBL」コンテストにて佳作に選んで頂けました!
俺の婚約者は小さな王子さま?!
大和 柊霞
BL
「私の婚約者になってくれますか?」
そう言い放ったのはこの国の王子さま?!
パミュロン王国で次期国王候補の第1王子アルミスから婚約を求められたのは、公爵家三男のカイルア。公爵家でありながら、長男のように頭脳明晰でもなければ次男のように多才でもないカイルアは自由気ままに生きてかれこれ22年。
今の暮らしは性に合っているし、何不自由ない!人生は穏やかに過ごすべきだ!と思っていたのに、まさか10歳の王子に婚約を申し込まれてしまったのだ。
「年の差12歳なんてありえない!」
初めはそんな事を考えていたカイルアだったがアルミス王子と過ごすうちに少しづつ考えが変わっていき……。
※不定期更新です
世界が僕に優しくなったなら、
熾ジット
BL
「僕に番なんていない。僕を愛してくれる人なんて――いないんだよ」
一方的な番解消により、体をおかしくしてしまったオメガである主人公・湖川遥(こがわはる)。
フェロモンが安定しない体なため、一人で引きこもる日々を送っていたが、ある日、見たことのない場所――どこかの森で目を覚ます。
森の中で男に捕まってしまった遥は、男の欲のはけ口になるものの、男に拾われ、衣食住を与えられる。目を覚ました場所が異世界であると知り、行き場がない遥は男と共に生活することになった。
出会いは最悪だったにも関わらず、一緒に暮らしていると、次第に彼への見方が変わっていき……。
クズ男×愛されたがりの異世界BLストーリー。
【この小説は小説家になろうにも投稿しています】
いい加減観念して結婚してください
彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話
元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。
2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。
作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。
【Amazonベストセラー入りしました】僕の処刑はいつですか?欲しがり義弟に王位を追われ身代わりの花嫁になったら溺愛王が待っていました。
美咲アリス
BL
「国王陛下!僕は偽者の花嫁です!どうぞ、どうぞ僕を、処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(笑)」意地悪な義母の策略で義弟の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王子のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?(Amazonベストセラー入りしました。1位。1/24,2024)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる