13 / 22
主砲発射!!
しおりを挟む
副武装の射撃精度は、戦車上部にて車長が発砲する際とさして変わらない評価を得た。
ターゲットをロックオンした状態で、今度は移動しながらの実弾発射評価試験に移行。
戦闘車輌では当たり前に行われる移動と射撃又は砲撃の同事行動。
しかし、歩兵の場合は戦闘中に味方の兵たちが移動を行う際、移動を行う兵を動いていない兵が敵兵に向けて牽制射撃を行い援護をする。
敵兵に向けて走りながら発砲するなんて、命中精度は格段に落ちるし、残存兵が一人でない限り行わない。
ロック・キャリバーはそういった点で、やはり車輌なのだと鷹子は感じていた。
(なかなか当たらないものね・・・)
焦りを見せながらモニターを2号機へと移す。と。
移動しながらだというのに、2号機は見事にターゲットに中てている。
2号機に搭載されている副武装が1号機や3号機よりも軽量でかつ反動も小さい小口径の機関銃だから?
それも理由の一つではあるが、明らかに経験値の差が出ているのだと理解した。
さすがに走行時に生じる上下の動作には対応出来てはいないものの、岳の2号機はターゲットを外さない。
戦車乗りとして培ってきた経験はロック・キャリバーに生かされているのだ。
これは大収穫だ。主任の黒石少佐が思わずニヤリと笑った。
―主砲射撃評価試験―
機体の具合を確かめ、調整を終えると、3機は再び射場へと戻った。
とうとう主砲射撃がはじまる。
サイレンが鳴り、試験開始。
ますは1号機が腕を水平位置に上げた。
「1号機、右肩部および右肘部関節をロックします」
告げて鷹子は関節をロックした。そしてターゲットに照準を合わせる。
仰角・俯角の上下調整は肩部関節をロックしている以上、腰部関節で行う。
肩部関節の一カ所で戦車砲の反動を緩衝するのは難しく、固定しておかないと砲弾が何処へ飛んで行くか分からない。
だからあらかじめ肩部関節と肘部間接とをロックする必要がある。
さらに腰を落として、右足をすり足で前へと突き出す。
「発射!」の声と共に東富士演習場に轟音が鳴り響く。
反動は駐退機と腰部で抑えて、腰部が若干仰け反った形を取った。
と同事に、機体そのものが後方へと擦り下がる。
「続いて2号機、実弾発射を許可します」
少佐からのGoサインが下る。
実弾と言っても実戦で使用する榴弾ではなく、火薬の入っていない同じ質量を持つ摸擬弾だ。着弾しても爆発はしない。
「あれれ?どうしちゃったんでしょう。寝住さん、あんなに砲撃評価試験を楽しみにしていたのに、まだ撃ちませんよ」
一向に主砲を発射しない2号機に楓は首を伸ばした。
「感極まって、中で感動の涙に溢れてるんじゃないんスか」
言った瞬間、少佐に睨まれている事に気づいて元哉は小さくなった。
「どうしました?2号機。トラブルですか?報告なさい」
少佐がマイクを取る。
「こちら2号機、右足下前方に障害物を発見、位置変更を願います」
「障害物?」
岳の報告に少佐はすぐさま双眼鏡を取ると、2号機の足下を見やった。
右足下に岩を発見。
戦車の履帯ならば差し当たって障害とならない高さ50センチほどの岩ではあるが、砲撃時に摺り足を行うロック・キャリバーにとっては大きな障害である。
途中で反動軽減動作が遮られてしまうと、反動を抑えきれずに後方へと転倒する恐れがある。
「こちら作戦指揮、位置の変更を許可します。3号機、先に砲撃評価試験を行ってください」「了解」
すると、3号機は腕を水平位置にまで上げながら右足を前へと擦り出す動作に入っている!?
その発射手順の間違いに気づいた少佐がすぐさま。
「3号機、主砲の発射を中止しなさい!今す―」ドォォォンッ!
中止命令は聞き入れられることなく、3号機は主砲を発射してしまった。
砲弾は!?
皆の視線がターゲットへと向けられた。すると。
3号機は見事ターゲットを粉砕していた。
その光景を目の当たりにした少佐は安堵のため息を漏らすと同事に力無く椅子へと腰掛けた。
「和泉試験官、今の3号機の挙動をモニターしていましたか?」
質問に、元哉は慌ててモニターを凝視した。
「3号機、肩部関節及び肘部関節共に異常ナシ!その他全ての関節に異常は見られません」
「現状報告はいい!3号機の挙動はどうでしたか!?」
元哉は再度モニターをチェック。
「3号機は主砲を発射する際に腕を前へと突き出しています。相撲の鉄砲の動きをそのままトレースして主砲を発射した模様」
その報告に少佐は思わず目を見開いた。
「あ、あの動きがそのまま実戦に使えるなんて・・・」
「ま、まぁ手を張り手を打つように広げておく必要はまったく無いんスけどね・・・」
少佐の驚く傍ら、さらに詳細な3号機の挙動報告を付け足した。
3号機の関節にストレスを与えずに主砲を発射した。この事実は人型兵器にとって革新的な事実として記録された。
「カッコイイ!作戦指揮、自分も、いや!2号機も今の3号機の挙動で砲撃を行ってもよろしいですか?」
岳からの申し出に「ダメです」少佐は静かに答えた。
ターゲットをロックオンした状態で、今度は移動しながらの実弾発射評価試験に移行。
戦闘車輌では当たり前に行われる移動と射撃又は砲撃の同事行動。
しかし、歩兵の場合は戦闘中に味方の兵たちが移動を行う際、移動を行う兵を動いていない兵が敵兵に向けて牽制射撃を行い援護をする。
敵兵に向けて走りながら発砲するなんて、命中精度は格段に落ちるし、残存兵が一人でない限り行わない。
ロック・キャリバーはそういった点で、やはり車輌なのだと鷹子は感じていた。
(なかなか当たらないものね・・・)
焦りを見せながらモニターを2号機へと移す。と。
移動しながらだというのに、2号機は見事にターゲットに中てている。
2号機に搭載されている副武装が1号機や3号機よりも軽量でかつ反動も小さい小口径の機関銃だから?
それも理由の一つではあるが、明らかに経験値の差が出ているのだと理解した。
さすがに走行時に生じる上下の動作には対応出来てはいないものの、岳の2号機はターゲットを外さない。
戦車乗りとして培ってきた経験はロック・キャリバーに生かされているのだ。
これは大収穫だ。主任の黒石少佐が思わずニヤリと笑った。
―主砲射撃評価試験―
機体の具合を確かめ、調整を終えると、3機は再び射場へと戻った。
とうとう主砲射撃がはじまる。
サイレンが鳴り、試験開始。
ますは1号機が腕を水平位置に上げた。
「1号機、右肩部および右肘部関節をロックします」
告げて鷹子は関節をロックした。そしてターゲットに照準を合わせる。
仰角・俯角の上下調整は肩部関節をロックしている以上、腰部関節で行う。
肩部関節の一カ所で戦車砲の反動を緩衝するのは難しく、固定しておかないと砲弾が何処へ飛んで行くか分からない。
だからあらかじめ肩部関節と肘部間接とをロックする必要がある。
さらに腰を落として、右足をすり足で前へと突き出す。
「発射!」の声と共に東富士演習場に轟音が鳴り響く。
反動は駐退機と腰部で抑えて、腰部が若干仰け反った形を取った。
と同事に、機体そのものが後方へと擦り下がる。
「続いて2号機、実弾発射を許可します」
少佐からのGoサインが下る。
実弾と言っても実戦で使用する榴弾ではなく、火薬の入っていない同じ質量を持つ摸擬弾だ。着弾しても爆発はしない。
「あれれ?どうしちゃったんでしょう。寝住さん、あんなに砲撃評価試験を楽しみにしていたのに、まだ撃ちませんよ」
一向に主砲を発射しない2号機に楓は首を伸ばした。
「感極まって、中で感動の涙に溢れてるんじゃないんスか」
言った瞬間、少佐に睨まれている事に気づいて元哉は小さくなった。
「どうしました?2号機。トラブルですか?報告なさい」
少佐がマイクを取る。
「こちら2号機、右足下前方に障害物を発見、位置変更を願います」
「障害物?」
岳の報告に少佐はすぐさま双眼鏡を取ると、2号機の足下を見やった。
右足下に岩を発見。
戦車の履帯ならば差し当たって障害とならない高さ50センチほどの岩ではあるが、砲撃時に摺り足を行うロック・キャリバーにとっては大きな障害である。
途中で反動軽減動作が遮られてしまうと、反動を抑えきれずに後方へと転倒する恐れがある。
「こちら作戦指揮、位置の変更を許可します。3号機、先に砲撃評価試験を行ってください」「了解」
すると、3号機は腕を水平位置にまで上げながら右足を前へと擦り出す動作に入っている!?
その発射手順の間違いに気づいた少佐がすぐさま。
「3号機、主砲の発射を中止しなさい!今す―」ドォォォンッ!
中止命令は聞き入れられることなく、3号機は主砲を発射してしまった。
砲弾は!?
皆の視線がターゲットへと向けられた。すると。
3号機は見事ターゲットを粉砕していた。
その光景を目の当たりにした少佐は安堵のため息を漏らすと同事に力無く椅子へと腰掛けた。
「和泉試験官、今の3号機の挙動をモニターしていましたか?」
質問に、元哉は慌ててモニターを凝視した。
「3号機、肩部関節及び肘部関節共に異常ナシ!その他全ての関節に異常は見られません」
「現状報告はいい!3号機の挙動はどうでしたか!?」
元哉は再度モニターをチェック。
「3号機は主砲を発射する際に腕を前へと突き出しています。相撲の鉄砲の動きをそのままトレースして主砲を発射した模様」
その報告に少佐は思わず目を見開いた。
「あ、あの動きがそのまま実戦に使えるなんて・・・」
「ま、まぁ手を張り手を打つように広げておく必要はまったく無いんスけどね・・・」
少佐の驚く傍ら、さらに詳細な3号機の挙動報告を付け足した。
3号機の関節にストレスを与えずに主砲を発射した。この事実は人型兵器にとって革新的な事実として記録された。
「カッコイイ!作戦指揮、自分も、いや!2号機も今の3号機の挙動で砲撃を行ってもよろしいですか?」
岳からの申し出に「ダメです」少佐は静かに答えた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち
半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。
最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。
本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。
第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。
どうぞ、お楽しみください。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる