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40.立派なモノを持つ男、堀に潜む者たち
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百鬼夜行という言葉がある。
よく意味を知らないが、100体もの鬼たちが行進するというもの。
前方を塞ぐ大蜘蛛の化け物に、後方を塞ぐムカデの化け物。
まさに挟撃!
「前門の虎、後門の狼ってところね」
レインが呟く。
「あの、それ、意味をはき違えています。前門の虎、後門の狼ってのは、災害を乗り越えても、また次の災害がやって来るという意味で、絶体絶命を意味するものじゃないです」
昌樹が訂正を入れるも、「あら、そう」レインは胸のホルスターからハンドガンを取り出して前方を塞ぐ大蜘蛛の頭部に数発撃ち込んだ。
「うぐぁ!!」
呻き声を上げて、大蜘蛛は飛び上がり住宅の屋根を這って姿を消してしまった。
パン、パンと後方で鳴る銃声に、昌樹は振り向くと、ナンブが大百足をハンドガンで退けていた。
エイジは、退いてゆく大百足の頭部へと飛び乗ると、ザクザクとサバイバルナイフで突き刺して、やがて大百足はグッタリと動きを止めてしまった。
「一匹逃したな…」
見えなくなった大蜘蛛を目で追う。
「いや、殺せるのか?あんなバケモノ」
異世界の、異形の存在に、昌樹は圧倒されてしまい、てっきり勝てないものと思い込んでいた。
「アイツら、私たち人間を見るのが久しぶりだったようだけど、どれくらい前に会ったのかしらね」
告げつつ、レインはハンドガンから一旦マガジンを取り出して弾を込めている。
「願わくば、拳銃を見るのが初めてであって欲しいものだね」
昌樹は、自身に注がれる視線に気づき、「ん?どうした?」皆に訊ねた。
「あの…何で丸腰なんですか?」
口数の少ないナンブが訊ねた。
「サンジェルマンは異世界だと説明してくれたわよね?なのに、何で武器の一つも持ち合わせていないのよ」
思わぬレインの詰問。
「あのな、海外旅行に武器を持って行くか?普通」
危機管理能力に乏しい昌樹に二人は溜息を洩らした。
「まあ、コイツなら、あるけど」
昌樹はジャケットの懐から特殊警棒を取り出し、伸ばした。
「立派なモノがあるじゃない!」
リーチも短い護身用ではあるが、立派な武器である。これで、さっきの化け物を相手となると、心許ないのは誰の目にも明らか。
「男性相手に“立派なモノ”って言うんじゃないよ。そこは“立派な武器”と言ってくれ」
訂正を求めた。
ところが。
「何でです?」
真顔で訊ねるナンブ。そんな彼女にレインは顔を真っ赤にして、「私の言い方が悪かったの。気にしないで」
告げて、ナンブに後方の警戒に入らせた。
「さて、ここは携帯もネットも通じないし、どこからどうマンドレイクとやらを探したものか?」
長らく京都に住んではいるおかげで、今いる場所は知らない場所ではあるが、市内は碁盤の目で構成されている。道に迷う心配は無いだろう。
それに、相手はキノコ。当然ながら乾燥している場所には生えないはず。
木々や茂みの多い二条城を探すのが得策だ。
一行は二条城へと向かった。
二条城周辺を歩いていると、時折、堀の方からパシャッ!と水のはねる音が聞こえてくる。しかも、小さなものでは無く、明らかに水柱が立つ程の大きな音。
堀には鯉が放たれているが、どう考えても、この音は鯉よりもさらに大きい何かの音だ。
現在の二条城は、入口には強固な石橋が設けられている。
木製の跳ね橋でない限り、堀を泳いでいる何かが強力であろうとも橋を落とされる心配は無い。
恐れる事は無い。
堂々と渡ろう。
周囲を警戒しつつ、石橋を渡る。
無事に門前へとやってきた。
パシャ!パシャ!
水のはねる音。
昌樹たちの視線は自然に音の鳴る方へと向けられた。
すると、彼らの視線の先には全身ウロコに覆われた、月明かりにヌメった光を放つ異形の者たちが2体も。
「半漁人!?」
思わずレインが呟いた。
「違う、アレは河童だ」
頭にお皿、それにくちばしがある。おまけに全身緑色なので間違いなく河童だ。
さらに!
パシャ!パシャ!
反対側からも水のはねる音。
またもや河童が2体現れた。しかし、先程現れたのに比べて、若干色が異なり青みがかかっている。
先程は前後に挟まれ、今度は左右から挟まれてしまった!
ピンチに次ぐピンチ。
レインは再び懐に手を入れた。
「オメー、こっちから先は、俺たちの縄張りだって…!?」「それは、こっちの台詞だ…て??
昌樹たちを挟んで双方の河童たちがキョトンとしている。
「人間さ、入って来ちゃダメだって」「そだ、そだ」
共通の敵に遭遇し、意気投合。
どうやって、このピンチを切り抜ける?
よく意味を知らないが、100体もの鬼たちが行進するというもの。
前方を塞ぐ大蜘蛛の化け物に、後方を塞ぐムカデの化け物。
まさに挟撃!
「前門の虎、後門の狼ってところね」
レインが呟く。
「あの、それ、意味をはき違えています。前門の虎、後門の狼ってのは、災害を乗り越えても、また次の災害がやって来るという意味で、絶体絶命を意味するものじゃないです」
昌樹が訂正を入れるも、「あら、そう」レインは胸のホルスターからハンドガンを取り出して前方を塞ぐ大蜘蛛の頭部に数発撃ち込んだ。
「うぐぁ!!」
呻き声を上げて、大蜘蛛は飛び上がり住宅の屋根を這って姿を消してしまった。
パン、パンと後方で鳴る銃声に、昌樹は振り向くと、ナンブが大百足をハンドガンで退けていた。
エイジは、退いてゆく大百足の頭部へと飛び乗ると、ザクザクとサバイバルナイフで突き刺して、やがて大百足はグッタリと動きを止めてしまった。
「一匹逃したな…」
見えなくなった大蜘蛛を目で追う。
「いや、殺せるのか?あんなバケモノ」
異世界の、異形の存在に、昌樹は圧倒されてしまい、てっきり勝てないものと思い込んでいた。
「アイツら、私たち人間を見るのが久しぶりだったようだけど、どれくらい前に会ったのかしらね」
告げつつ、レインはハンドガンから一旦マガジンを取り出して弾を込めている。
「願わくば、拳銃を見るのが初めてであって欲しいものだね」
昌樹は、自身に注がれる視線に気づき、「ん?どうした?」皆に訊ねた。
「あの…何で丸腰なんですか?」
口数の少ないナンブが訊ねた。
「サンジェルマンは異世界だと説明してくれたわよね?なのに、何で武器の一つも持ち合わせていないのよ」
思わぬレインの詰問。
「あのな、海外旅行に武器を持って行くか?普通」
危機管理能力に乏しい昌樹に二人は溜息を洩らした。
「まあ、コイツなら、あるけど」
昌樹はジャケットの懐から特殊警棒を取り出し、伸ばした。
「立派なモノがあるじゃない!」
リーチも短い護身用ではあるが、立派な武器である。これで、さっきの化け物を相手となると、心許ないのは誰の目にも明らか。
「男性相手に“立派なモノ”って言うんじゃないよ。そこは“立派な武器”と言ってくれ」
訂正を求めた。
ところが。
「何でです?」
真顔で訊ねるナンブ。そんな彼女にレインは顔を真っ赤にして、「私の言い方が悪かったの。気にしないで」
告げて、ナンブに後方の警戒に入らせた。
「さて、ここは携帯もネットも通じないし、どこからどうマンドレイクとやらを探したものか?」
長らく京都に住んではいるおかげで、今いる場所は知らない場所ではあるが、市内は碁盤の目で構成されている。道に迷う心配は無いだろう。
それに、相手はキノコ。当然ながら乾燥している場所には生えないはず。
木々や茂みの多い二条城を探すのが得策だ。
一行は二条城へと向かった。
二条城周辺を歩いていると、時折、堀の方からパシャッ!と水のはねる音が聞こえてくる。しかも、小さなものでは無く、明らかに水柱が立つ程の大きな音。
堀には鯉が放たれているが、どう考えても、この音は鯉よりもさらに大きい何かの音だ。
現在の二条城は、入口には強固な石橋が設けられている。
木製の跳ね橋でない限り、堀を泳いでいる何かが強力であろうとも橋を落とされる心配は無い。
恐れる事は無い。
堂々と渡ろう。
周囲を警戒しつつ、石橋を渡る。
無事に門前へとやってきた。
パシャ!パシャ!
水のはねる音。
昌樹たちの視線は自然に音の鳴る方へと向けられた。
すると、彼らの視線の先には全身ウロコに覆われた、月明かりにヌメった光を放つ異形の者たちが2体も。
「半漁人!?」
思わずレインが呟いた。
「違う、アレは河童だ」
頭にお皿、それにくちばしがある。おまけに全身緑色なので間違いなく河童だ。
さらに!
パシャ!パシャ!
反対側からも水のはねる音。
またもや河童が2体現れた。しかし、先程現れたのに比べて、若干色が異なり青みがかかっている。
先程は前後に挟まれ、今度は左右から挟まれてしまった!
ピンチに次ぐピンチ。
レインは再び懐に手を入れた。
「オメー、こっちから先は、俺たちの縄張りだって…!?」「それは、こっちの台詞だ…て??
昌樹たちを挟んで双方の河童たちがキョトンとしている。
「人間さ、入って来ちゃダメだって」「そだ、そだ」
共通の敵に遭遇し、意気投合。
どうやって、このピンチを切り抜ける?
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