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ミラーワールド編
46.生涯を乗っ取られる者、叫ぶ根菜
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何て罰当たりな光景だろう・・・。
田中・昌樹は驚きのあまり、開いた口が塞がらない。
弁護士、追風・静夜の姿をした宇迦之御魂神が景気よく口から炎を吐いては世界遺産の二条城を焼き討ちにしている。
当のレインも驚きのあまり、開いた口が塞がらない。
(わ、私が口から火を吐いている)
レインの目には、自身の姿に映っていた。
「う、宇迦、こんな事をして大丈夫なのか?現実世界の二条城は焼け落ちたりしないのか?」
もはや焦土と化しつつあるこの状況下になって訊ねた。
「大丈夫、ダイジョーブ。明日になったら、何事も無かったように、元に戻っているから。ただし現実の二条城が火事になっていなければだけど」
ひとまずは安心。だけど、最後に不吉な事を足してくれる。本当に大丈夫なのか?
「派手に焼き散らかしてくれているけれど、目的のマンドレイクも一緒に丸焦げになったり消し炭にしたりしていないでしょうね?」
レインが宇迦に釘を刺した。
「ノープロブレムよ異国の方。マンドレイクなんざ、ゴブリンが1人でも生き残っていれば調達は可能なのよん」
でも、ここまで派手に火を放って、果たしてゴブリンは無事でいられるだろうか?
「ヤツらが炙り出されて、ノコノコ出てきたら、オラたちが袋だたきにしてくれるさワ」
河童の連中もがぜんハリキリ出した。
これはゴブリン全滅間違い無しだわ。
「って、それじゃあダメじゃないか!」
「何がよ?」
昌樹が止めるも、宇迦は訊ねつつ、もういっちょう炎を吐く。
「止めぃ!もう炎は吐かなくて良い。そろそろゴブリンが炙り出されて、出てくる頃だ」
皆を鎮めるも。
「では私の出番ですね」
ニオブのナンブもやる気を見せる。
「その何とかステッチャーは出すな。アレは貫通力がスゴ過ぎて味方が危ない」
建物さえも貫通するビームは危険極まりない。
炎と黒煙に巻かれた二条城が崩れ落ちる。
(本当に大丈夫なのか・・・)
不安でしかない。
すると、ゲホゲホと咳き込みながら子供くらいの背丈をした緑色の人影が目に飛び込んできた。
ゴブリンだ!
「やっちまえー!」
まさに追い討ち。
河童共が棍棒を振りかざして、ゴブリン目指して一直線に走り出した。
「ヤバい!エイジ!頼む」
昌樹の声と同事に、彼の体から銀のエイジが飛び出した。
飛び出すと同事にサバイバルナイフを逆手に持ち替えて、まるでゴブリンに突進するかのような、凄まじいスピードで駆けて行く。
あっという間に河童共を追い抜いてゆくエイジ。
しかし!
その横を、あっさりと追風・静夜もとい!宇迦が抜き去ってしまった!
「あのバカ神様、せっかく出てきたゴブリンを殺すつもりじゃないだろうな」
そうなる可能性は大いにある。
「エイジィ!!ゼッタイに宇迦にゴブリンを殺させるな!」
とてもではないが、走って追いつける訳がなく、声が枯れるほどの大声でエイジに指示を送った。
昌樹の声を聞き届けて加速するエイジ。
少しばかり差は縮まったものの、さらに加速されて、差は一気に開いてしまった。
と、宇迦がゴブリンの頭頂部だけに生えている髪をグイッと掴んで捕らえる。
「やめろ!宇迦!そいつを殺してしまったら―」
昌樹の止める声も聞かずに、宇迦は掴んだゴブリンの髪を勢いよく引っ張り上げて、!!
「ウォォギャァァァァ!!」
ジェット機の噴射音か、はたまた悲鳴なのか?とにかく耳が張り裂けんばかりの大きな叫び声が辺り一帯に響いた。
両手で耳を塞ぐ昌樹、レイン、それにナンブ。
最も近くにまで近づいていたエイジは滑り込むようにして転倒した。
「こ、この距離でこれほどまでの声。もっと近くにいたら、鼓膜どころか脳にダメージを被っていたところだった。
頭痛に苛まれながらも、レインはこの状況を分析、辺りを見回すと、河童共は皆白目をむいて仰向けに倒れていた。
どうやら、彼らは人間以上の聴覚を持っているようだ。
恐らく、視界の効かない水中での生活では、聴力が最も頼れる情報収集器官なのだろう。
「お待たせ。これがお目当てのマンドレイクよ」
そう言って宇迦が差し出してくれたのは、髪の毛が付いたドクロ・・頭蓋骨(脊髄付き)だ。
この光景、まるで昔に見た、武器を持った人間を狩る宇宙人が登場する映画の場面のよう。
差し出された昌樹は、一瞬嘔吐をもよおすも、よくよく考えてみれば頭蓋骨に頭髪が付いているのも不自然だと気付く。
「あ、あぁコレね。私とした事が。ふふふ。ごめんなさいね」
謝りつつも頭蓋骨を握りつぶす。
頭蓋骨は一瞬にして木っ端微塵に砕け散った。
「ハイ、『冒険者はマンドレイクを手に入れた』とさ」
再び人のカタチをした、奇妙な根菜を差し出してくれた。
「これが、マンドレイク・・」
手に取る。
植物だとばかり思っていたのに、何と!葉っぱの代わりに頭髪をもうけた根菜ではないか。しかも、薄気味悪いことに、根菜部分は人のカタチをしている。
「さっきの叫び声は?」
カタチもさることながら、先程の叫び声も気になる。
「ああ、さっきのアレね。マンドレイクは外に出る事をとことん嫌う植物でね、引っこ抜こうとすると、大きな声を上げて抵抗するの。あの声で心臓マヒを起こして死んじゃう者もいるから、気をつけないと」
度重なる心遣い、感謝の至り。
宇迦が、用済みとなったゴブリンの遺体を傍に放り投げた。
ゴブリンの死骸は、頭部は頭蓋骨が抜き取られて萎んでいる。
「宇迦、ひとつ訊きたい。ゴブリンはマンドレイクなのか?」
おかしな質問と思いつつも、どう質問を繰り出せば良いのか?頭が回らない。
「ゴブリンってね、憐れな生き物で、生涯のほとんどをマンドレイクに寄生されて過ごし死んでゆくのよ。彼らの残虐で、非礼で、モラルの欠片も無い行動は、すべてマンドレイクによるものなの」
カマキリに寄生するハリガネムシを思い出す。
アレもロクな人生じゃないなと。つくづく思う。
取り敢えずは、目的のマンドレイクも手に入った事だし、あとは元の世界に戻るだけだな。
田中・昌樹は驚きのあまり、開いた口が塞がらない。
弁護士、追風・静夜の姿をした宇迦之御魂神が景気よく口から炎を吐いては世界遺産の二条城を焼き討ちにしている。
当のレインも驚きのあまり、開いた口が塞がらない。
(わ、私が口から火を吐いている)
レインの目には、自身の姿に映っていた。
「う、宇迦、こんな事をして大丈夫なのか?現実世界の二条城は焼け落ちたりしないのか?」
もはや焦土と化しつつあるこの状況下になって訊ねた。
「大丈夫、ダイジョーブ。明日になったら、何事も無かったように、元に戻っているから。ただし現実の二条城が火事になっていなければだけど」
ひとまずは安心。だけど、最後に不吉な事を足してくれる。本当に大丈夫なのか?
「派手に焼き散らかしてくれているけれど、目的のマンドレイクも一緒に丸焦げになったり消し炭にしたりしていないでしょうね?」
レインが宇迦に釘を刺した。
「ノープロブレムよ異国の方。マンドレイクなんざ、ゴブリンが1人でも生き残っていれば調達は可能なのよん」
でも、ここまで派手に火を放って、果たしてゴブリンは無事でいられるだろうか?
「ヤツらが炙り出されて、ノコノコ出てきたら、オラたちが袋だたきにしてくれるさワ」
河童の連中もがぜんハリキリ出した。
これはゴブリン全滅間違い無しだわ。
「って、それじゃあダメじゃないか!」
「何がよ?」
昌樹が止めるも、宇迦は訊ねつつ、もういっちょう炎を吐く。
「止めぃ!もう炎は吐かなくて良い。そろそろゴブリンが炙り出されて、出てくる頃だ」
皆を鎮めるも。
「では私の出番ですね」
ニオブのナンブもやる気を見せる。
「その何とかステッチャーは出すな。アレは貫通力がスゴ過ぎて味方が危ない」
建物さえも貫通するビームは危険極まりない。
炎と黒煙に巻かれた二条城が崩れ落ちる。
(本当に大丈夫なのか・・・)
不安でしかない。
すると、ゲホゲホと咳き込みながら子供くらいの背丈をした緑色の人影が目に飛び込んできた。
ゴブリンだ!
「やっちまえー!」
まさに追い討ち。
河童共が棍棒を振りかざして、ゴブリン目指して一直線に走り出した。
「ヤバい!エイジ!頼む」
昌樹の声と同事に、彼の体から銀のエイジが飛び出した。
飛び出すと同事にサバイバルナイフを逆手に持ち替えて、まるでゴブリンに突進するかのような、凄まじいスピードで駆けて行く。
あっという間に河童共を追い抜いてゆくエイジ。
しかし!
その横を、あっさりと追風・静夜もとい!宇迦が抜き去ってしまった!
「あのバカ神様、せっかく出てきたゴブリンを殺すつもりじゃないだろうな」
そうなる可能性は大いにある。
「エイジィ!!ゼッタイに宇迦にゴブリンを殺させるな!」
とてもではないが、走って追いつける訳がなく、声が枯れるほどの大声でエイジに指示を送った。
昌樹の声を聞き届けて加速するエイジ。
少しばかり差は縮まったものの、さらに加速されて、差は一気に開いてしまった。
と、宇迦がゴブリンの頭頂部だけに生えている髪をグイッと掴んで捕らえる。
「やめろ!宇迦!そいつを殺してしまったら―」
昌樹の止める声も聞かずに、宇迦は掴んだゴブリンの髪を勢いよく引っ張り上げて、!!
「ウォォギャァァァァ!!」
ジェット機の噴射音か、はたまた悲鳴なのか?とにかく耳が張り裂けんばかりの大きな叫び声が辺り一帯に響いた。
両手で耳を塞ぐ昌樹、レイン、それにナンブ。
最も近くにまで近づいていたエイジは滑り込むようにして転倒した。
「こ、この距離でこれほどまでの声。もっと近くにいたら、鼓膜どころか脳にダメージを被っていたところだった。
頭痛に苛まれながらも、レインはこの状況を分析、辺りを見回すと、河童共は皆白目をむいて仰向けに倒れていた。
どうやら、彼らは人間以上の聴覚を持っているようだ。
恐らく、視界の効かない水中での生活では、聴力が最も頼れる情報収集器官なのだろう。
「お待たせ。これがお目当てのマンドレイクよ」
そう言って宇迦が差し出してくれたのは、髪の毛が付いたドクロ・・頭蓋骨(脊髄付き)だ。
この光景、まるで昔に見た、武器を持った人間を狩る宇宙人が登場する映画の場面のよう。
差し出された昌樹は、一瞬嘔吐をもよおすも、よくよく考えてみれば頭蓋骨に頭髪が付いているのも不自然だと気付く。
「あ、あぁコレね。私とした事が。ふふふ。ごめんなさいね」
謝りつつも頭蓋骨を握りつぶす。
頭蓋骨は一瞬にして木っ端微塵に砕け散った。
「ハイ、『冒険者はマンドレイクを手に入れた』とさ」
再び人のカタチをした、奇妙な根菜を差し出してくれた。
「これが、マンドレイク・・」
手に取る。
植物だとばかり思っていたのに、何と!葉っぱの代わりに頭髪をもうけた根菜ではないか。しかも、薄気味悪いことに、根菜部分は人のカタチをしている。
「さっきの叫び声は?」
カタチもさることながら、先程の叫び声も気になる。
「ああ、さっきのアレね。マンドレイクは外に出る事をとことん嫌う植物でね、引っこ抜こうとすると、大きな声を上げて抵抗するの。あの声で心臓マヒを起こして死んじゃう者もいるから、気をつけないと」
度重なる心遣い、感謝の至り。
宇迦が、用済みとなったゴブリンの遺体を傍に放り投げた。
ゴブリンの死骸は、頭部は頭蓋骨が抜き取られて萎んでいる。
「宇迦、ひとつ訊きたい。ゴブリンはマンドレイクなのか?」
おかしな質問と思いつつも、どう質問を繰り出せば良いのか?頭が回らない。
「ゴブリンってね、憐れな生き物で、生涯のほとんどをマンドレイクに寄生されて過ごし死んでゆくのよ。彼らの残虐で、非礼で、モラルの欠片も無い行動は、すべてマンドレイクによるものなの」
カマキリに寄生するハリガネムシを思い出す。
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