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ミトラの懸命
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城に入るとすぐ、俺は異変に気づいた。
魔物たちが部屋の至るところに倒れているのだ。
ほとんどの魔物は倒れていて、生き残った魔物たちも混乱していたため、魔物たちとの交戦は避けられた。
通路をかけめぐり、奥にある重厚な階段を駆け上がると、奥の広間からは戦いの音が聞こえてくる。
大きなトロールが、その巨体から拳を振り下ろす。轟音が響き渡った。
その戦闘相手は、間一髪のところで避けれたものの、その衝撃で勢いよく弾き飛ばされた。
その人物は、ボロボロになった白いローブから金髪を覗かせている、小さな少女。
ミトラだった。
「「ミトラ!」」
俺とアイは、ほぼ同時に叫んでいた。
トロールは新たな侵入者を見つけると、咆哮を上げる。
グオオオオオオオ!
俺はミトラを肩に抱え、安全地帯へと移動を始める。
アイは単身トロールに立ち向かっていた。
「はああっ!!」
腰の細い剣で、的確に相手の急所を狙っていく。トロールの攻撃は、寸前のところで全て躱していく。
アイ、あんなに強かったのか……
俺はミトラを部屋の隅に座らせると、こんぼうを持って全力で走り出した。
「こいつっ! よくもミトラを!」
走る音に気づいたトロールは振り向いたが、アイはそれを許さなかった。この隙を逃さないとばかりに、高速で敵の心臓を狙って突き抜く。
ギャアアアア!!
後ろから回り込んだ俺は、トドメとばかりにこんぼうを渾身の力を込めてジャンプしながら叩きつけた!
トロールの頭からは、ゴキッという嫌な音がし、断末魔の叫びを上げて、地面に崩れ落ちた。
「やったか!?」
「やりましたね! ラストさん!」
アイは健闘を讃えてくれ、俺はすぐにミトラに駆け寄った。
ミトラの身体には大きな外傷は無いようだったが、あちこちにダメージを負っているようだ。
薬草を与えると、ミトラの杖が動き、目をうっすらと開いた。
「あ……ラ、スト……?」
「もう大丈夫だ。トロールは俺たちが倒した」
「どう、して……?」
どうしてここにいるのか、ミトラは尋ねていた。
その理由を、俺は答える。
「あの時は力になってやれなくてごめん。でも、俺は覚悟を決めたんだ」
「どうしてここにいるかの、答えになってませんよ……」
ふっ、と笑うミトラは、いつもの口の減らないミトラだった。
しばらくミトラの回復を待ち、俺たちは広間でこの先に待ち受けているだろう魔王について話をすることにした。
「おそらく」
ミトラは切り出した。
「魔王はこの先にいるはずです。そして、魔王に決定的な有効打を与えるには勇者候補であるあなた達の力が必要です」
ミトラは、俺には願いを告げたあのときのような、しかし決意を強めた瞳で俺たちに言った。
「改めてお願いします、勇者候補に選ばれなかった私では、魔力に打ち勝てず、魔王は救えません。ーー私に力を貸してくれませんか」
俺とアイは、顔を見合わせて、答えた。
「当たり前だろ、ここまで来て何言ってんだ」
「水臭いですよミトラ、私に相談してくれないんですもの」
俺たちの答えは決まっていた。
「ありがとうございます」
ミトラは、深々と頭を下げた。
広間の奥に、禍々しい魔力を放つ、ひときわ大きな扉があった。
「私が魔王をなんとかしますので、アイとラストは上手く隙を作ってください」
「いけるのか?」
「はい」
ミトラの顔は決意に満ちていた。俺は、ミトラを信じることにした。
俺は魔王への扉を開ける。
魔物たちが部屋の至るところに倒れているのだ。
ほとんどの魔物は倒れていて、生き残った魔物たちも混乱していたため、魔物たちとの交戦は避けられた。
通路をかけめぐり、奥にある重厚な階段を駆け上がると、奥の広間からは戦いの音が聞こえてくる。
大きなトロールが、その巨体から拳を振り下ろす。轟音が響き渡った。
その戦闘相手は、間一髪のところで避けれたものの、その衝撃で勢いよく弾き飛ばされた。
その人物は、ボロボロになった白いローブから金髪を覗かせている、小さな少女。
ミトラだった。
「「ミトラ!」」
俺とアイは、ほぼ同時に叫んでいた。
トロールは新たな侵入者を見つけると、咆哮を上げる。
グオオオオオオオ!
俺はミトラを肩に抱え、安全地帯へと移動を始める。
アイは単身トロールに立ち向かっていた。
「はああっ!!」
腰の細い剣で、的確に相手の急所を狙っていく。トロールの攻撃は、寸前のところで全て躱していく。
アイ、あんなに強かったのか……
俺はミトラを部屋の隅に座らせると、こんぼうを持って全力で走り出した。
「こいつっ! よくもミトラを!」
走る音に気づいたトロールは振り向いたが、アイはそれを許さなかった。この隙を逃さないとばかりに、高速で敵の心臓を狙って突き抜く。
ギャアアアア!!
後ろから回り込んだ俺は、トドメとばかりにこんぼうを渾身の力を込めてジャンプしながら叩きつけた!
トロールの頭からは、ゴキッという嫌な音がし、断末魔の叫びを上げて、地面に崩れ落ちた。
「やったか!?」
「やりましたね! ラストさん!」
アイは健闘を讃えてくれ、俺はすぐにミトラに駆け寄った。
ミトラの身体には大きな外傷は無いようだったが、あちこちにダメージを負っているようだ。
薬草を与えると、ミトラの杖が動き、目をうっすらと開いた。
「あ……ラ、スト……?」
「もう大丈夫だ。トロールは俺たちが倒した」
「どう、して……?」
どうしてここにいるのか、ミトラは尋ねていた。
その理由を、俺は答える。
「あの時は力になってやれなくてごめん。でも、俺は覚悟を決めたんだ」
「どうしてここにいるかの、答えになってませんよ……」
ふっ、と笑うミトラは、いつもの口の減らないミトラだった。
しばらくミトラの回復を待ち、俺たちは広間でこの先に待ち受けているだろう魔王について話をすることにした。
「おそらく」
ミトラは切り出した。
「魔王はこの先にいるはずです。そして、魔王に決定的な有効打を与えるには勇者候補であるあなた達の力が必要です」
ミトラは、俺には願いを告げたあのときのような、しかし決意を強めた瞳で俺たちに言った。
「改めてお願いします、勇者候補に選ばれなかった私では、魔力に打ち勝てず、魔王は救えません。ーー私に力を貸してくれませんか」
俺とアイは、顔を見合わせて、答えた。
「当たり前だろ、ここまで来て何言ってんだ」
「水臭いですよミトラ、私に相談してくれないんですもの」
俺たちの答えは決まっていた。
「ありがとうございます」
ミトラは、深々と頭を下げた。
広間の奥に、禍々しい魔力を放つ、ひときわ大きな扉があった。
「私が魔王をなんとかしますので、アイとラストは上手く隙を作ってください」
「いけるのか?」
「はい」
ミトラの顔は決意に満ちていた。俺は、ミトラを信じることにした。
俺は魔王への扉を開ける。
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