俺と妹が異世界で生活することになったんだが、正直帰りたい

まぐろ定食

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2日目後半

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俺は早くも後悔していた。
俺の2倍の高さもあろうバカでかいキノコの化け物は、動きこそ遅かったが、
キノコらしからぬ触手を振り回し、獲物を攻撃してくる。

俺にできたのは逃げ回ることぐらいだった。
男子高校生という一般人に剣がすぐに扱いこなせることもなく、
たまに触手の攻撃の盾にするのが精いっぱいの抵抗というありさまだった。

「くそっ……!アクションゲームでならあんなに上手く動けてたのに!」

軽々と剣を振るうゲームの主人公には尊敬を禁じ得ない、
そんなことを現実逃避に考えるぐらいキノコ戦は劣勢だった。

「お兄ちゃん、なにモタモタしてるのよ!私だって……!」

ようやく正気を取り戻したセリカがダガーを構え、俺とは反対側から化けキノコに走り寄る。
短剣の一撃が入った――かのように見えたが、キノコの弾力で弾かれ、セリカは尻もちをついた。

荒ぶるキノコはその隙を逃さないと言ったように方向を回転し、触手でセリカを掴む。

「きゃあっ!ちょっと、なにするのよ!」
「セリカ!」

セリカはキノコの触手によって捕らえられ、
もがくが大きな化けキノコの力は想像以上に強いらしく、振りほどけない。

「セリカ!今助ける!」

俺はショートソードを両手で持ち、記憶にある剣の持ち方を思い出して走り出す、
しかしキノコは残った触手を器用に操り、俺の進路を妨害するかのように迎撃してくる。

「クソっ!なんなんだよこの触手!」

切っても切ってもしつこく襲い掛かってくる触手たちが邪魔をし、
俺は焦りを感じながらもキノコの元に近づくことができなかった。

RPGでレベル1であるキャラクターがいきなりボスに挑んだかのように、
大化けキノコに弄ばれるパーティ2人がそこにいた。

「お兄ちゃん…ああっ!」

セリカに目をやると、触手に掴まれているのは変わらないが、
スタイルのいい身体はきつく縛られ、
そこそこの大きさはある胸と、形のよい尻が強調され、
苦しそうな表情からは吐息が漏れていた。

あまり良い状況とは言えない、
そう判断した俺は一旦距離を取り、手頃な小石を手に取り草むらに身を隠す。

荒ぶるキノコは敵が逃げたと思い込んだのか、
セリカに向き直り、捕食のためか服を剥ごうとした。

その瞬間俺は反対側の木に当たるように小石を投げ、音を響かせる。
そちらの方向に俺がいると勘違いしたキノコはあさっての方向に向いた。
今がチャンスだ。

「この……変態キノコがぁぁぁぁぁ!!」

俺は草むらから勢いよく飛び出し、
全速力の勢いのままショートソードでセリカを掴んでいた触手を切り裂いた。

キノコの叫び声がォォォ……っと響き、セリカは地面に落ちた。
俺はそれを抱え、ひとまず距離を取る。

「セリカ!大丈夫か!」
「おにい……ちゃん……?」

体力は消耗しているが、意識はあるようだ。
俺はひとまずホッとしたが、キノコのモンスターは怒り狂い、
さっきよりも危険度は増している。

「これ、やばいんじゃないの……?」

レベル1の剣士のような俺、戦闘不能のシーフの妹。
絶対絶命のピンチに、いざとなったらセリカだけでも逃がそうと考えていると、

「焼き尽くせ!ファイアーボール!」

森の影から火の玉が飛び出し、キノコは炎に包まれた。
キノコはもがき苦しみ、火を消そうと身を左右に振る。
かなり効いているようだ。

「セナ君!今だよ!」

俺は何者かに名前を呼ばれ、ハッと正気に戻り、
炎に包まれているキノコに剣を突き立てる。
キノコは二度三度振り払おうともがいたが、やがてその巨体を地面に横たえた。

「やった…のか?」

どうやら荒ぶるキノコを完全に倒したようだ。
動く気配がないのを確認すると、俺は一息をついた。

「あ……危なかった……セリカ、大丈夫か!」

俺は倒れてあられもない姿になっている妹に近寄ると、
呼吸を確認し、

「気絶してる……けど生きてるな」

安心した。まったくひやひやさせてくれる。
しかし、あの火の玉は……?
そう思っていると、森の影から意外な人物が現れた。

「や、やっほーセナ君、げ、元気そうだね……?」

そこにいたのは幼馴染の長野ナミだった。
ミニスカートの黒い魔法使い服をまとい、茶目っ気のある表情の茶髪の女の子は、
間違いなくクラスメートのナミだった。

「ナミ、お前なんで……?」
「そ、そのね……あ!セナ君妹ちゃん倒れてるけど大丈夫?」
「あ、ああ、早く街に運んでやらないと……」
「じゃあ一緒についてくよ!」

元気という言葉をそのまま性格にしたようなナミは、
何かを隠しているようだったが、今は確かに妹を連れていく方が先決だ。

「ああ、悪いな……一人背負ったままじゃまたあんな魔物に襲われたらどうしようもないからな」

俺はナミがここにいる理由には触れず、妹を背負い、日が暮れる前に街に帰ることにした。
ナミは俺の後をついて森を出るようだ、パーティは3人になった。

剣士風の格好の俺と、盗賊風のセリカ、そして魔法使いのナミ。
その姿はまるで、俺が今までやった正統派ファンタジーRPGのように、
森の道を妹を背負いながら、街を目指して帰路につくのだった。
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