俺と妹が異世界で生活することになったんだが、正直帰りたい

まぐろ定食

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2日目中盤

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俺こと妹尾セナとその妹のセリカは、街を出て西の森に向かうことにした。
装備も貸し武器ながらショートソードとダガーが手に入り、
初期装備ぐらいは整ったと言っていいだろう。

そこで俺はあることが気になった。

「そういやこの世界、魔物とか出るのか?」
「店主さんに聞いた話では、魔物はいるけど、
西の森はほとんど冒険者が討伐して今はほぼ見かけないそうよ」

いつの間にそんなことを聞いていたんだろうか、
昔からこいつは意外なところでしっかりしているのだ。

「じゃあ普通に山菜採りみたいな感じか、なんか拍子抜けだな」
「こんなわけのわからない世界でケガするよりはましでしょ」

やれやれ、といった風に両手の手のひらを上に向けて呆れる妹。
俺はいつもと変わらない妹の様子に内心安心していた。

「セリカお前、平然としてるけど、この世界で不安とかないのか?」

藪から棒にそんなことを聞いてみた。
なんのことはない、ただのふとした疑問だったのだが、
返ってきたのは意外な返答だった。

「そりゃ最初は不安だったけど……
そんなに危険な世界でもないみたいだし、すぐ帰れないんじゃ
焦ってもしょうがないでしょ」

その言葉に続けるように、妹はそっぽを向いてさりげなく、

「お兄ちゃんがいれば一人よりはましだしね」

と言った、ましとはなんだ、失礼な。
確かに、この世界には不思議な安心感があった。
まるでどこかで見たような、そんな気持ちにさせてくれるのだ。

住んでいた日本の東京とは違う、綺麗な空気、澄んだ青空。
石で舗装された道の端に生える緑の大地には、子供が無邪気に遊んでいる。

そんな平和な空気が、この異世界で安心感を与えてくれるのかもしれなかった。
でも帰る方法はあるのか……とそんなことを考えていると、

「日が暮れる前に早く行くよ」

セリカは俺の手を取り、強引に連れていく。
こんな世界も、生まれ変わるとしたら悪くないのかもな。

そう思っていました、この時までは。

西の森に着くまでには、人の通り道で道路ができており、
場所も店主に聞いていたので難なく到着することができた。

西の森の名前の通り、うっそうとした森……だったのだが、
移動に必要な通路は伐採され、冒険者が何度も通った痕跡がそこら中に見受けられた。
もはや森のテーマパークといったように、綺麗に人の通り道が作られ、看板まで建てられていた。

「ここが西の森か……まるでゲームのチュートリアルみたいだな」
「スライムの一匹でもいればそれっぽかったかもね、
でもここ、虫や動物はいるけどファンタジーみたいな魔物はいないみたいね」

確かに、森に生えているケヤキだかヒノキっぽい大木には
リスに似た角の生えた生物や、三つ矛のような攻撃に特化したカブトムシがいたが、
それらは小さく、人間にとって脅威にはなりそうになかった。

「あれも十分ファンタジーっぽいと思うけどな」
「そう?ファンタジーってもっと、触手っぽいのを持ってたり、醜い悪魔のような姿してない?」
「お前普段どんなゲームしてるんだよ……」

妹のゲーム生活が気になったが、まずはキノコを探さないといけない。
俺たちは道なりに進むと、また看板を見つけた。

"この先、荒ぶるキノコ注意"

「なんだ、ここに書いてあるじゃないか、こんな楽勝な依頼で良かったのか?」
「でもお兄ちゃん、普通キノコにこんな看板立てる?」
「親切な人が立ててくれたんだろ。とっとと採って帰ろうぜ」

うーん、と悩む妹を連れながら、看板の先を進むと少し開けた場所に出た。
そこにはポツンとキノコが生えており、まるで取ってくださいと言わんばかりだった。

「ねぇ、お兄ちゃん……ここの雰囲気なんか変じゃない?
さっきまでいた動物がいなくて、あからさまに怪しいっていうか……」
「何言ってんだよ、どうせキノコに毒とかがあって、それを避けてるだけだろ」

荒ぶるキノコはオレンジ色の傘で、見た目は美味そうだったが、
こういうキノコに限って毒を持っていたりするのだ、ゲームで見た。

「さあ取って帰ろ……、ん?なんかキノコが動いているような……」

風もないのにキノコが揺れている、もちろん触れてもいない。
おかしい、俺は何か危険を察知したが、突如地面が揺れた。

「きゃっ、なに?!地震?」

セリカが突然の揺れに立っていられなくなる、
キノコの周りの土が隆起し、近くにいた俺は吹き飛ばされる。

「いってて……な、なんなんだ?」

キノコ……だったものは、その下から巨体を覗かせ、
一体の巨大なモンスターへと姿を変えた。
生えていた小さなオレンジ色のキノコはてっぺんに生えている。
エサをおびき寄せるための罠だったのだ。

俺は今までの荒ぶるキノコに関する情報を思い出し、
やっと混乱から理解が追いついた。

「"荒ぶる"って、そういうことかよ……」

ただの採取依頼に宿屋が何泊もできる報酬を出すわけがないのだ。
あの酒場の親父……覚えてろよ。

「あ…え、え?お、お兄ちゃん……」

すっかり驚いてその場から動けないといった様子の妹のそばに近寄る。
昔からこいつは想定外の事態に弱いんだよな……

「セリカ、下がってろ、こいつは俺がなんとかする」

お兄ちゃんとして、カッコイイとこでも見せてやるか。
そんな言葉を頭に思い浮かべ、俺はショートソードを構えた。

大きいとはいえ、所詮キノコ、なんとかなるだろう。
そう思っていた時期が、俺にもありました……
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