俺と妹が異世界で生活することになったんだが、正直帰りたい

まぐろ定食

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4日目後半

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来るべき鉄巨人戦に向けて、俺たちはパーティの必須役である、
傷を癒す力を持つ人を探していた。

まず向かったのはやはり冒険者の集まる酒場だが、
話こそ聞いてくれるものの、大抵が他を回ってくれという反応だった。

それはフラグ、つまり仲間にする条件の立っていない
NPC(ノンプレイヤーキャラクター)に話しかけているような状態だったのだ。

「なかなか見つからないもんだな、ここが記憶のゲーム世界なら、
回復役なんて腐るほどいると思ったんだが」
「お兄ちゃん人望ないんじゃない?」
「そもそも酒場にはいなかっただろ!言葉の暴力だ!」
「冗談だよ、お兄ちゃん意外と頼りになるもんね」
「セナ君が昨日一番稼いでたもんね、やっぱり力仕事は男の子だ」

俺は2人に素直に褒められたのが何か気恥ずかしくて、
話題を変えることにした。

「それより、神官でもヒーラーでも戦えそうな奴が集まる場所にいなかったんだから、
この街にはいないんじゃないか?」
「一か所行っただけで諦め早すぎでしょ、お兄ちゃん……」

判断力があると言ってほしい。
セリカの責めるようなジト目から視線を逃しつつ、俺は別の提案をする。

「人がいないんなら、物を調達するしかないな」

薬屋と書かれた看板を視線の先に発見し、
そんなことを言ってみた。
結果、他に行くあてもないので行くことにしたのだが。

その店は一見普通の民家で、"薬屋"と表記してある看板でようやく薬屋だと認識できるような、
良く言えばアットホームな、くすんだ赤のレンガ作りの外観だった。

まだ日は高く、ドアには開店を知らせる札が訪問客を待ち受けていた。
ナミははしゃぎながら、

「ファンタジー映画の面白い雑貨屋さんみたい!」

と一番に木製の扉を開け、中に入った。
俺と妹はそれに続くように屋内に入る。

店の端にある棚には奇妙な形をした植物や、動物の牙や角などが並んでいて、
真ん中にあるカウンター兼商品机には、フラスコや試験管のような容器に、
赤や青や緑、色とりどりの液体が蓋をされ陳列されている。

「これ、回復薬って奴かな」
「あっちの植物なんか見たことある気がする、毒持ってる奴じゃない?」

セリカは物珍しそうに店内の商品を眺めていたが、
ナミは対照的に、

「イメージと違うんですけどぉ~!」

と、可愛いものがないのがお気に召さなかったようだ。
俺と二人が騒がしくしていると、奥から何やら人影が出てきた。

「いらっしゃい、お客様かな」

肩までかかるぐらいの金髪をなびかせながら、
けだるそうに登場したのは、俺と同じくらいの年齢の美少女だった。

身長はセリカやナミより少し低いものの、逆にそれが男心をくすぐるような、
まるで人を魅了する小悪魔のよう……そんな危うさと可愛さを感じた。

いや、俺は知っているのだ。
この人は、クラスメートの……

「サユ……さん?」

俺は思わずそう呟いていた。
佐賀サユ。高校の男子なら知らないものはいない、クラスのアイドル。
色白の天使とも呼ばれているその透き通るような雰囲気は、異世界でも健在だった。

「は?気安く呼ばないでよ、それにそんな変な苗字じゃないし、あんた誰?」

ところが返ってきた反応は冷たいものだった。
現実のサユさんのような優しい雰囲気は、そこにない。
セリカも驚いているようだった。

「サユ先輩、なんでここに……?」
「なんでって、サユは店番してるんですけど」

サユさんって自分のこと名前で呼ぶのか、
あまり話したことなかったから知らなかった。
いや、そんなことはどうでもいい、何故この世界にいるのか。

静かになっていたナミは、考え事をしていたようだ。
ナミはこう説明しだした。

「え~っと、たぶんだけどね?セナ君かセリカちゃんか私の印象が強かったから、
サユちゃんが記憶から作りだされた……みたい?」

疑問形で言うナミに、俺は突っ込みたくなったが、
現実に、いや異世界に起こっているのだから仕方がない。

つまり、俺たちは無意識に佐賀サユに強い思い入れを抱いており、
それが記憶から作られるゲームの世界に干渉して、キャラクターとして作りだされたというわけだ。

サユはしびれを切らしたように、

「なに?なんかわけの分かんないこと言ってるけど、
冷やかしなら帰ってほしいんですけど」

と言い放つ。
俺は生じた違和感に、幼馴染に耳打ちした。

「サユさんって、もしかして普段はああなのか?」
「あはは……男子の前では猫被ってるから……」

ショックだ。クラスのアイドルサユさんが、
カウンターで頬杖を突きながら舌打ちをしているなんて。

「用がないなら帰ってよ、こっちも忙しいんですけど?」

こっちを追いやるようなジェスチャーを取るサユに、
セリカは店内を見渡して、

「サユ先輩、もしかして医者も兼業してます?」
「医者もやってるよ、よく気づいたね」

サユはびっくりしたように返した。
セリカが注視した方をよく見ると治療受付のボードが壁にかけてある。
よく見つけたな……
セリカはそのまま続ける。

「サユ先輩……回復魔法、使えます?」
「サユはセンパイって名前でもないけど、使えますけど?」

意外な場所で回復役を見つけた。
しかし好感度が低いようだ。
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