古代兵器ミカエル

真綾

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「全てを従えるミカエルの力」

「何を言ってるの」

 弥生の声は震えている。

 知るはずもないだろう。

 ミカエルが僕に教えてくれた最終奥義。

 修復までに時間がかかる理由の一つかもしれない。

 寧ろミカエルさえいれば他の古代兵器は目覚めなくてもやっていける。


「弥生、どうして君が時の天使なのにモモを助けてやらなかった」

 恐怖に震えミカエルに愚痴っていた時に偶然教えてもらった。

 僕一人になって不安だというと時の天使がまだ生きていると。

 彼女の力があれば恐らく生き残れるであろうということも。

「そう、よ」

 見開かれた瞳には驚愕の色がにじんでいる。

 どうして僕はこんな告白よりももっと怖い思いをしてきたんだ。

 命がけで戦って、戦って、戦場で仲間が死んでいくのは当たり前に隣で見て来たのに。

 非戦闘員だと嘘をついて研究に明け暮れていた君には分からないだろう。

 実際に死と隣り合わせで戦っている者の気持ちなんて。

「モモを助けられたのにしなかったのはどうしてだ」

 スープに入っていた眠り薬のせいで僕は眠っていた。

 もしモモがそんな行動を取ると分かっていたら僕は逃げずに戦っていた。

 例え相打ちにならないと相手を倒すことが出来ないと知っていたとしても。

「相打ち以外で、倒せないの」

 久しぶりに話す許嫁はこんなにも感情のない人だっただろうか。

 少なくともハーツに入る前はもう少し笑顔が多く、そう陽だまりのように笑っていた。

 一族でハーツの研究所に入っていたため僕よりも先に力が開花したのかもしれない。

「分かった。ミカエルの特権を執行するよ」

 元々は僕が乗らなければならなかった場所。

 代わりにモモが命を落として良い訳が無い。

 弥生がその場に崩れ落ちる。

「知らないわ、特権なんて」

「ミカエルにしかないからな」

 逃げて言い訳無かったんだ。

 人類を助けるだなんて大それたこと思わなくて良かったんだ。

 目の前の君を守れれば僕はそれでよかったんだ。

 僕の代わりに誰かが命を落として許される世界なんて存在しちゃいけないんだ。
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