古代兵器ミカエル

真綾

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「人には大きすぎる力なんです。時を戻すことは世界が前に進めないことを意味しています。時の天使は存在がバレればミカエルの手によっていつも処刑されています」

「ミカエルは、久しぶりに生まれたのよ」

 三日月のように口の端を上げるモモ。

 瞳は剣呑に煌いた。

「どの天使にもミカエルの血が通っています。ミカエルのみが特権の執行という名でどの天使の能力も使う。インターバルは必要ですけど。弥生様はアタシに二つの遺伝子をくれた。ミカエルと時の天使。アタシはミカエルに乗ったときに思い出したの」

 伸ばされる手。

 丞太郎が消えたショックで足に力の入らなかった私は簡単にモモに捕まってしまった。

 同じ女のはずなのにその握力だけで頭を握りつぶされそうだ。

「秘密裏に殺さなければならない」

 モモの声のはずなのに、どうして丞太郎の声に聞こえるの。

 愛していた。

 親同士が決めた相手じゃなかったとしても私は貴女に恋をしていた。

 虫も殺せないような貴女がミカエルの適合者だと知ったときは何かの間違いだと言いたかった。

 ハーツの本部にだって連れてきたくなかったのよ。

 なのに両親は嫌がる丞太郎を無理やり組員にした。

 丞太郎が組員になったら私の手から離れていく気がしたのよ。

 初めて貴女を失った時に私が丞太郎のサポートをしていたから。

 最期何かを言いかけていたその先を知りたくて。

 意地を張って好きだと言わなかった私。

 研究に没頭するだけの取り柄の無い私を丞太郎は初めて女として扱ってくれたから。

 罪ならいくらでも背負うつもりでいたの。

 貴女を助けられるなら、私の命なんてなくてもいいと。
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