魔人に就職しました。

ミネラル・ウィンター

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第3章 Outside brave

第47話 過去の関係

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 ワイシングはおどろきながらも今、死にかけているリックを治療した。百数年ぶりの再会を喜びながらも、嘗ての友を死なせる訳にはいかないという強い気持ちで治療ちりょう専念せんねんした。
 リックの治療が終わると、途端にリックの意識が戻った。リックは何とか生き延びる事が出来たのだ。

「・・・ココハ?」

 リックは辺りを見渡すと、この場所が村の近くではない事に気が付いた。リックの意識はカケルと村に戻ってきた所で飛んでおり、そこから先に何があったかは知らない。そこですぐ側でリックの様態を見守っていた"アンデッド・ナイト"が簡単に事情を説明する。
 意識がない間に何があったかを知ったリックは「・・・ソウカ」と一言だけつぶやいた。

「さて、お話は終わりましたかな?久しぶりですな。異端のアンデッド。いや、今は"リック"という名前で呼ばれているみたいですな」

 ワイシングが回復したリックに話しかける。
 先ほどから見慣れないアンデッドがいると思ったら自分の事を懐かしい呼び名で呼んだ。リックは久しぶりに昔の記憶を遡りながら、改めて自分の事をそう呼んだアンデッドを見た。

「オマエハ・・・マサカ・・・"ワイシング"カ?」

「そうですぞ」

「随分ト久シブリ・・・ダナ」

「それはこちらのセリフですぞ?我々はてっきり死んだと思ってましたので」

「色々・・・アッタノダ」

 お互いに昔話で色々話したい事もあるだろう。しかし、今は緊急事態の最中だ。呑気のんきに昔話に花を咲かせている場合ではない。

「さて、貴方も動けるようになったのなら他のアンデッド達を回復して回りますぞ。色々と話すのはその後にしましょう」

「アア・・・ソウダナ」

 ワイシングとリックは残りの負傷したアンデッド達をアンデッド用の回復魔法で治療して回った。
 リックは魔法の範囲を強化する事が出来るため、複数の負傷者を一度に治療する事ができた。
 トロル達とワイシング、そしてリックのおかげで全ての負傷者を治療し終えた。しかし気を失ったまま、まだ目が覚めていない魔物も複数いる上にまだ魔人様からの連絡も来ていないのでしばらくここに留まった方が良いだろう。

「今は何をしてるのか聞いてもいいですかな?」

 治療を終え余裕が出て来たのでワイシングはリックに話しかけた。

「今ハ・・・」

 リックの言葉はそこで、一度詰まる。彼の話し方はゆっくりでよく間が空くが、今の間だけはいつもより長かった。
 その話し方は昔から変わっていないので、ワイシングはリックの続きの言葉をまった。
 実の所、リックは迷っていた。魔人様の事を話してもいいのかという事を。
 現在リックは嘗ての様に魔王に仕えている訳ではなく、今の主は魔人様だ。勝手に自身の主の事を話すのはいかがなものか。
 だがワイシングは嘗ての知り合いの中で一二を争うほど信頼できる男だ。自分やエクス様のように魔法の研究が大好きなアンデッド。アンデッドの種類こそ違うがとても気の合う男だ。
 それに今回は彼に命を救われている・・・。
 リックは考えた末、ワイシングに言うことにした。

「今ハ・・・魔人サマニ仕エテイル」

「な、なんですと!?」

 ワイシングは思わず大きい声をあげてしまった。今、リックは魔王軍が探している人物に仕えていると、そう言ったのだ。
 驚かないハズがない。しかも探している魔人という存在は実在するのか、しないのかわからない状態だったのだ。それが実在すると分かり、それに昔の友人がその魔人という存在に仕えていると言ったのだ。

「し、失礼。取り乱しました」

 リックは大きな声を出してしまった事を軽く詫びた。

「失礼ですが、リック。貴方が仕えているという魔人ですが、ワタクシ達と会っていただくことはできますか?」

 そこでワイシングはアポイントメントを取る事にした。今、オラクガに連絡して指示をあおぐにも少し時間が掛かってしまう。それなら一度、この話を持ち帰えり後日改めて訪問することでオラクガや魔王様の準備を整えることができると考えた。
 もしも、万が一の可能性だが魔人側の陣営と敵対する可能性もある。その可能性を少しでも減らすためにこちらも考える時間が欲しかった。

「今ハ恐ラク・・・難シイダロウ。我々ノ村ハ・・・襲撃サレタ。ソノ処理ニモ・・少シ時間ガ掛カルダロウ。ダカラ・・・直グニハダメダ。時間ヲ・・・置イテカラ・・・我々ノ村ヲ訪問スルトイイ」

 ワイシングはリックの話を聞いて、いつも魔法研究に費やしている頭を回転させて考えた。
 "村"とは。魔人という存在はここにいる魔物達彼らを使い、村を作ったのか。そしてその魔人の村を襲撃してきた人間がいる。
 先ほど事情を聴いた時は彼らが魔人に仕えている魔物達だとは思っても見なかった。そうか、魔人が作った村を人間が襲撃し、その時に負傷した彼らは魔人によって避難させられたのか。そしてその襲撃者と魔人が今まさに戦っている・・・と。
 なるほど、先ほどのアンデッド・ナイトがリックに説明していた会話の詳細はそういう事でしたか。
 魔人と敵対する存在・・・。
 まだ決まったわけではないが、そう聞いて考えてしまうがいる。それは"勇者"と呼ばれる人間達だ。魔王と敵対する存在達。
 過去の歴史では魔人は勇者勝ったとなっていたが、もしも本当に今魔人が戦っている人間達が勇者ならば、今回も勝てるものなのだろうか。
 だが、彼らの様子をみるとその魔人が負ける事はないと確信している様子だ。
 魔人とは本当にそれほどまでの力をもっているのか。

「わかりました。では、時間を置いて貴方達の村に訪問させていただく事にしますぞ。それで、貴方達の村はどちらに?」

「場所ハ・・・アイタル森林ダ」

「アイタル森林?そんな場所からここまでどうやって・・・ああ、トロル達の転移魔法ですな。それでは、しばらく時間を置いて訪問させていただく事にします。恐らくその時はオラクガ様か、魔王様と一緒だと思われます」

「何?・・・魔王様ダト?」

「?。ええ、魔王様ですぞ。・・・もしかして魔王様が復活されたのをご存じなかったのですか?」

「ア、アア。・・・初耳ダ」

 今度はリックが驚く番だ。
 リックは魔王が復活したとは知らなかった。封印されたとは聞いていたがいつの間にか復活していたとは・・・。
 その時、リックは昔にエクスに頼まれていた事について思い出した。

 『お前にこれを託して置く。今回も魔王様が負けてしまった後、次の魔王様か今回の魔王様が復活した時にこれを魔王様に渡して欲しい』

『エクス・・・コレハ?』

『そうだな保険とだけ言っておこう。とにかくもしその時が来た場合は頼んだぞ』

『ハイ。ワカリマシタ』

 まだエクスが生きていた時の話だ。エクスの拠点が人間に襲われる少し前。リックはエクスからあるアイテムを魔王に渡して欲しいという頼み事をされていた。
 そして今もそのアイテムは体の内側に大切にしまってあるのだ。

「ワイシング・・・」

「ん?なんですかな?」

「これを・・・」

「これは?」

「エクス様カラ・・・魔王ニ渡シテ欲シイ・・・ト」

「エクス様から!?このアイテムは一体?」

「ソレハ私ニモ・・・聞カサレテイナイ・・・」

「なるほど、わかりました。このアイテムは私がしっかり魔王様に渡しておきましょう」

「・・・頼ム」

 ワイシングにエクスからの頼み事を託した後、ちょうどジャックの方に魔人様から連絡があった。
 どうやら全て終わったらしいく、もう戻ってきてもいいそうだ。
 それを聞いた魔物達は喜び、トロル達はすぐに転移魔法の準備を始めた。

「どうやらそろそろお別れのようですな」

「アア・・・本当ニ助カッタ、礼ヲ言イウ」

 ワイシングによってリックが命を救われた。今、ここにいる魔物達が一人も命を落とさなかったのはワイシングのおかげだ。
 魔物達は戻る際にワイシングに向けてお礼を言った。彼は「気にしなくていいですぞ」と一言いうだけだった。

「今回ハ本当ニ助カッタ」

―――助かったありがとう 

 ジャックやマサムネもワイシングに改めてお礼を言う。
 ワイシングは恩人だ。彼がたまたま居なかったらリックは死んでいたのだ。
 今日はただでさえ、大勢の仲間が死んでいった。これ以上、犠牲になる魔物は見たくなかったのだ。

「何度も言いますが気にしなくていいですぞ?」

 どこまで、いってもワイシングは気にしなくていいと言うだけだった。
 だとしても今回ワイシングは偶然にも魔人に恩を売る事ができた。魔人の存在や、魔人が拠点にしている村のある場所、そして魔人に恩を売る事が出来たワイシングはほくほくだ。
 最後に転移魔法を使っていたトロル達がペコリと丁寧なお辞儀をしてこの場所から消えていった。
 ワイシングは全員を見送った後、急いで魔王城に戻り今回の事をオラクガと魔王に報告するのだった。






「アア、アノ時ハ助カッタ。改メテ礼ヲ言オウ」

「いえいえ。魔物同士、困ったときはお互い様ですぞ。"リック"殿」

 そんなやり取りがあり、オラクガ達はこの村に来ていたのだ。
 ワイシングは二度目の再会をしたがどうも違和感があった。それは話し方だ。あの独特な間のある話し方が変わり、間が短くなっている。別に悪い事でもないのだが、やはり昔から変わらなかったものがある日突然、変わってしまうと違和感がすごいのだ。

「所で話し方が随分と変わりましたな」

「アア、コレカ。タダ、慣レタダケダ」

 慣れたとは?研究者として是非聞きたい事ではあるが、今は魔人に会わせて貰えるかどうかの方が重要だ。
 ワイシングは探求心をグッと抑えてこれ以上は聞かなかった

「お前がリックか。それで魔人と会わせてくれるのか?」

「剛炎ノオラクガ、貴方モ会ウノハ久シブリダナ」

「・・・そうだな。で、どうなんだ?」

 魔王軍幹部を相手に随分と態度がでかいリック。しかしオラクガも魔人と敵対するのは避けたいため、イラッとする気持ちを抑えここは何も言わず堪える事にした。だが、少しイラつきが態度に出てくしまう。オラクガには少し難しかったようだ。

「・・・今、魔人サマハ外出中ダ。ダガ、直ぐニ戻ッテクル。ソレマデ、コノ村デ、自由ニシテモラッテ構ワナイ。ソレト魔人サマガ、話ヲ聞クカドウカ、ソレハ直接話シテミナケレバ、ワカラナイ」

「なるほどな。では言葉通り自由にさせてもらおう」

 今はタイミング悪く魔人は外出中だった。
 だがそれは想定していた事だ。何故ならこちらも事前に今日訪ねると伝えている訳ではないからだ。
 流石にオラクガもそこまで理不尽ではない。

「自由ニ、トハ言イッタガ、マズハ、マサムネ様ニ挨拶ヲシナクテハナラナイ。魔人サマガ不在ノ時ハ、マサムネ様ガ、基本的ニコノ村の指揮ヲシテイル」

「ほう。俺達でいう所の幹部的な存在という訳か」

 実際はそうではないのだが、リックは面倒に思ったので特に訂正はしなかった。

(実質ここのNo.2という事か、一体どれほどの魔物だ?)

(魔人の代わりを務める魔物ですか・・・予想するにオラクガ様の様な突然変異で生まれた様な上位の魔物でしょうな) 

 リックに案内されてオラクガ達は村の中心に居るマサムネの所に向かった。
 彼らはマサムネの所に向かっている最中、マサムネの存在がどういう存在なのかそれぞれ思案した。
 二人とも魔人の不在時を任せられているのだから必然的に上位の魔物で、相当の実力者だとの結論を出す。しかしそれは大きく裏切られることになる。

「なにっ!?」

「なんと!?」

 そこにいたのはスライム。普通のスライムよりは少し大きいがどこらかどう見てもただのスライムだ。
 そのスライムにリックは丁寧な口調で話している。本当にこのスライムがリックより立場が上の様だ。

「マサムネ様。彼ラハ客人デス。魔人サマニ話タイ事ガ、アルソウデス。魔人サマニハ、既ニ伝エテアリマス。直グニ戻ルカラ、ソレマデ村デ自由ニシテモラッテテイイ、トノ事デス」

 バカな、と驚きを隠せないでいるとスライムの目線が一瞬だけリックからオラクガ達に移る。
 するとドンッという威圧感が二人に圧し掛かった。
 それは明らかに自分達よりも遥かに強いという事の証。格上の物と対峙した時に感じる威圧感だった。
 そのスライムから出る圧倒的な威圧感に完全に萎縮いしゅくしてしまっている2人を他所よそにリックは平然とマサムネ様と会話を続けた。
 2人はそんなリックを見てどうしてそう平然といられるのか不思議に思った。
 報告が終わるとプルプルと体を揺らしてオラクガ達の方に向き直る。
 その時、ワイシングは突然マサムネから放たれる威圧感から解放された。だが逆にオラクガはスライムさんの威圧が増したようだ。

 オラクガは今まで感じた事のない威圧感を受け、思わず冷や汗を流した。
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