6 / 10
渋谷ビルディング迷宮十九階
しおりを挟む
階下に降りると、ムッとする空気と錆びた鉄のような臭いが鼻をついた。
本来は広々としていたはずのロビーは奇妙な歪みを見せ、錆びた鉄のような大きな塊がいくつか転がる瓦礫の廃墟と化している。
そんな風景のなか、うごめくのは、肉塊のような色合いの不定形のモンスターだ。
「スライム……か?」
「ちょっとでか過ぎないか? スライムって普通ちっこいだろ」
「特殊個体も多いモンスターだから、決めつけないほうがいい」
光夜が相手を特定するように呟くと、真逆と花鶏がそれぞれの意見を言う。
真逆の言う通り、そのモンスターは一般的なスライムよりもかなり大きかった。
平均すると、大柄な相撲取りぐらいのサイズだ。
「試し撃ちをする」
言うなり、光夜はショットガンにベルトホルダーから抜き取った弾を込めた。
見た目はごついが、火薬を使わないため、空気銃に近い発射音だ。
それでも十分に大きな音が響き、巨大なスライム達が活発に動き始めた。
とは言え、まだ光夜達を発見してはいない。
ガガガッ! と、一回の発射で一つの音に聞こえる連続音が響いた。
そして、光夜が的としたスライムが弾ける。
スライムは飛び散ったが、その飛び散った小さな塊が、またそれぞれうごめき始めてしまう。
「散弾は無意味か……いや、小さくすることで脅威度は下がる……か?」
「いやいや、数が増えるのは悪手だろ。柔らかそうなんだからなんかで溶かせないかなぁ」
試し撃ちに対する光夜の感想に、真逆がかぶせるように言う。
「溶かすのはあいつらの得意技でしょ。たしかスライムタイプのモンスターは溶解魔法を使う場合が多いって聞く」
「うー、溶解魔法はヤベえな。武器や防具が溶かされると、戦いどころじゃないぞ」
花鶏からの情報にうんざりとしてみせる真逆。
そんな二人に何も言わず、光夜は先へと進み始めた。
そして、弾を込めないままのショットガンで、道を塞ぐスライムを狙う。
「これならどうだ!」
ガウンッ! という衝撃音と共に、ショットガンの銃口を向けられたスライムが吹き飛ばされる。
「なんだそりゃあ!」
驚いた真逆が光夜に聞く。
「ショットガンには弾の撃ち出しのために、衝撃の魔法が仕込んである。空撃ちでも、魔法は発動する」
光夜は律儀に真逆の問いに答えた。
真逆は銃口から距離を取る。
もちろん真逆に銃口が向けられている訳ではないが、少しでも遠ざかりたいという気持ちの表れだろう。
「うへえ、こええな。てか、ダンジョンにある魔力だけで発動出来る魔法なのか?」
「もちろん大気中の魔力だけじゃ無理だ。魔法発動用の魔石カートリッジは消費するが、弾の消費が抑えられるだけお得だろ?」
「経済的」
光夜の説明に花鶏がうなずいた。
花鶏は節約大好き女子である。
スライムは目が存在せず、気配のようなものを感じて襲ってくるモンスターだ。
そのため、一定の距離が開くと、光夜達を薄っすらとしか認識出来なくなるようで、積極的に攻撃しては来ない。
ただし、ゆっくりと距離を詰めようとはして来るので、油断は危険である。
スライムの持つ溶解魔法は、硬い金属でも時間を掛ければ溶かせるのだ。
動きが緩慢だからと無視していい相手ではない。
光夜は四方に警戒を向けつつ、オフィスとして使われていただろう内部へ侵入すべく、扉らしきものを探す。
扉もダンジョンとの融合によって姿を変えていると共に、もともと入室にICカードを必要としていたため、もはや、鉄の壁も同然となっている。
侵入する手段は破壊しかない。
「継ぎ目、ここ」
扉の継ぎ目を花鶏が確認すると、真逆が自分の得物の双剣を取り出す。
オートロックだろうとなんだろうと、扉がロックされる仕組み自体は同じである。
扉と壁を物理的に繋げているのだ。
ならば切ればいい。
柄のデザインだけが違う揃いの剣は、剣身の部分がまるでカーボンのように真っ黒だ。
ダンジョン鉱石であるアダマス鉱という、切断に特化した鉱石を用いた剣である。
「我が剣に切れぬものなし!」
気合いと共に継ぎ目を狙った剣は、キイーン! と言う甲高い音を周囲に響かせた。
そして刃こぼれ一つなく、目的を果たす。
「よし、開いたぞ」
自慢げに扉を開けて見せる真逆だが、仲間達の視線は冷たい。
「少年の心を持ち続けてるんだな」
「闇に呑まれる?」
「ちげーよ! 自分が信じることで、魔力の干渉をプラスに書き換えてるんだ!」
光夜と花鶏のからかい含みであるはずなのに真剣に聞こえる声に、真逆はお約束と知りつつも、そう返したのだった。
本来は広々としていたはずのロビーは奇妙な歪みを見せ、錆びた鉄のような大きな塊がいくつか転がる瓦礫の廃墟と化している。
そんな風景のなか、うごめくのは、肉塊のような色合いの不定形のモンスターだ。
「スライム……か?」
「ちょっとでか過ぎないか? スライムって普通ちっこいだろ」
「特殊個体も多いモンスターだから、決めつけないほうがいい」
光夜が相手を特定するように呟くと、真逆と花鶏がそれぞれの意見を言う。
真逆の言う通り、そのモンスターは一般的なスライムよりもかなり大きかった。
平均すると、大柄な相撲取りぐらいのサイズだ。
「試し撃ちをする」
言うなり、光夜はショットガンにベルトホルダーから抜き取った弾を込めた。
見た目はごついが、火薬を使わないため、空気銃に近い発射音だ。
それでも十分に大きな音が響き、巨大なスライム達が活発に動き始めた。
とは言え、まだ光夜達を発見してはいない。
ガガガッ! と、一回の発射で一つの音に聞こえる連続音が響いた。
そして、光夜が的としたスライムが弾ける。
スライムは飛び散ったが、その飛び散った小さな塊が、またそれぞれうごめき始めてしまう。
「散弾は無意味か……いや、小さくすることで脅威度は下がる……か?」
「いやいや、数が増えるのは悪手だろ。柔らかそうなんだからなんかで溶かせないかなぁ」
試し撃ちに対する光夜の感想に、真逆がかぶせるように言う。
「溶かすのはあいつらの得意技でしょ。たしかスライムタイプのモンスターは溶解魔法を使う場合が多いって聞く」
「うー、溶解魔法はヤベえな。武器や防具が溶かされると、戦いどころじゃないぞ」
花鶏からの情報にうんざりとしてみせる真逆。
そんな二人に何も言わず、光夜は先へと進み始めた。
そして、弾を込めないままのショットガンで、道を塞ぐスライムを狙う。
「これならどうだ!」
ガウンッ! という衝撃音と共に、ショットガンの銃口を向けられたスライムが吹き飛ばされる。
「なんだそりゃあ!」
驚いた真逆が光夜に聞く。
「ショットガンには弾の撃ち出しのために、衝撃の魔法が仕込んである。空撃ちでも、魔法は発動する」
光夜は律儀に真逆の問いに答えた。
真逆は銃口から距離を取る。
もちろん真逆に銃口が向けられている訳ではないが、少しでも遠ざかりたいという気持ちの表れだろう。
「うへえ、こええな。てか、ダンジョンにある魔力だけで発動出来る魔法なのか?」
「もちろん大気中の魔力だけじゃ無理だ。魔法発動用の魔石カートリッジは消費するが、弾の消費が抑えられるだけお得だろ?」
「経済的」
光夜の説明に花鶏がうなずいた。
花鶏は節約大好き女子である。
スライムは目が存在せず、気配のようなものを感じて襲ってくるモンスターだ。
そのため、一定の距離が開くと、光夜達を薄っすらとしか認識出来なくなるようで、積極的に攻撃しては来ない。
ただし、ゆっくりと距離を詰めようとはして来るので、油断は危険である。
スライムの持つ溶解魔法は、硬い金属でも時間を掛ければ溶かせるのだ。
動きが緩慢だからと無視していい相手ではない。
光夜は四方に警戒を向けつつ、オフィスとして使われていただろう内部へ侵入すべく、扉らしきものを探す。
扉もダンジョンとの融合によって姿を変えていると共に、もともと入室にICカードを必要としていたため、もはや、鉄の壁も同然となっている。
侵入する手段は破壊しかない。
「継ぎ目、ここ」
扉の継ぎ目を花鶏が確認すると、真逆が自分の得物の双剣を取り出す。
オートロックだろうとなんだろうと、扉がロックされる仕組み自体は同じである。
扉と壁を物理的に繋げているのだ。
ならば切ればいい。
柄のデザインだけが違う揃いの剣は、剣身の部分がまるでカーボンのように真っ黒だ。
ダンジョン鉱石であるアダマス鉱という、切断に特化した鉱石を用いた剣である。
「我が剣に切れぬものなし!」
気合いと共に継ぎ目を狙った剣は、キイーン! と言う甲高い音を周囲に響かせた。
そして刃こぼれ一つなく、目的を果たす。
「よし、開いたぞ」
自慢げに扉を開けて見せる真逆だが、仲間達の視線は冷たい。
「少年の心を持ち続けてるんだな」
「闇に呑まれる?」
「ちげーよ! 自分が信じることで、魔力の干渉をプラスに書き換えてるんだ!」
光夜と花鶏のからかい含みであるはずなのに真剣に聞こえる声に、真逆はお約束と知りつつも、そう返したのだった。
0
あなたにおすすめの小説
親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました
空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが日常に溶け込んだ世界――。
平凡な会社員の風間は、身に覚えのない情報流出の責任を押しつけられ、会社をクビにされてしまう。さらに、親友だと思っていた男に婚約者を奪われ、婚約も破棄。すべてが嫌になった風間は自暴自棄のまま山へ向かい、そこで人々に見捨てられた“放置ダンジョン”を見つける。
どこか自分と重なるものを感じた風間は、そのダンジョンに住み着くことを決意。ところが奥には、愛らしいモンスターたちがひっそり暮らしていた――。思いがけず彼らに懐かれた風間は、さまざまなモンスターと共にダンジョンでのスローライフを満喫していくことになる。
ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~
楠富 つかさ
ファンタジー
ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。
そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。
「やばい……これ、動けない……」
怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。
「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」
異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!
Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。
絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。
一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。
無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる