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黒衣(くろご)魔法
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「その、契約を結んだ後にこういう説明をするのは、なんだかこう……後出しみたいで悪いんだけど、僕の一族は、黒衣魔法という血統魔法が使えるんだ」
「血統……魔法ですか? 普通の魔法とは違うんですね」
僕はさっそく汚れた藁のひとかたまりを代償に、メディの服を召喚した。
背中には清潔な布を、包帯代わりに巻く。
注意しないと、布が背中に張り付いてしまうかもしれないので、薬は厚めに塗っておいた。
その上からシャツを着てもらう。
ふう。
やっと落ち着いて話が出来る。
「うん。血統魔法は、その血を受け継ぐ者にしか使うことが出来ない魔法だ。魔物の固有魔法と同じ原理だと思う」
「そんなものがあるんですね。カゲルさんすごいです」
いやいや、まだ何も説明してないからね?
褒めるのは説明した後にして欲しい。
「例えば、今使った召喚魔法も、普通の召喚魔法とは違う。小道具召喚と言って、そのときに必要なものを召喚出来る魔法だ。逆に言うと、必要じゃないものは召喚出来ない」
「その判断って誰がしているんですか?」
「おそらく自分の無意識だろうって言われてるけど、僕に魔法の使い方を教えてくれたじっちゃんは、思考する者全てが共有する認識の世界が別にあって、僕達は、そこに接続して事象を書き換えているんだろうって言ってたよ。さすがに、あれは大げさだとは思うけどね。だけど、黒衣魔法って、実は人の認識に大きく関わっているものが多くて、あながちボケた老人の妄言とも言い切れないところはあるんだよね」
「お祖父様がお師匠様なんですね」
「うん。その頃には父さんも母さんも生きていなかったからさ。じっちゃんしか僕に魔法を教えることが出来る人間がいなかったんだ」
「あ……ごめんなさい。無神経なことを聞いて」
「いや、何言ってるんだ。メディだって、似たような感じだったんだろ? こないだ教えてくれたじゃないか」
「そう言えば、そう、ですね。私達ちょっと似ているのかな?」
「そうかもしれない。もしそうなら、黒衣魔法的にはいいことだな」
僕がそう言うと、メディは首を傾げた。
「いいこと?」
「ん。黒衣魔法はね。簡単に言えば、契約を結んだ主の影になる魔法なんだ」
「えっ?」
メディは慌てて、ランプに照らされた自分の影を確かめて、再び僕を見る。
「私の影とカゲルさんとは全然違うみたいです」
「くっ……」
僕は笑いそうになるのを必死でこらえた。
駄目だ。
メディは真面目に言っているんだから。
笑っちゃ駄目だ。
「カゲルさん……そんな風に後ろを向いても笑っていることは丸わかりですよ」
振り向くと、むくれたメディの顔が近い。
うおおおおっ、薄暗いとは言え、アップはよしてくれ。
さっきまで裸を見ちゃってたんだぞ、いかに紳士な僕だって、その……、耐えられる限界はあるんだ。
「笑うなら笑うで、ちゃんとこっちを向いて笑ってください」
「うっ、くくっ。メディって天然って言われたことない?」
「あるはずないでしょ。もう」
せっかく契約した主に、へそを曲げられると困るので、僕はメディをなだめる。
「まあまあ。ちゃんと説明するからさ」
「むうっ。わかりました。聞いてさしあげます」
ほんと、僕の新しい主は可愛いなぁ。
「影っていうのはちょっと誤解されるけど、そういう物理的な影じゃなくって、サポート役? みたいなものだね。黒衣魔法を使うと、僕は周囲の人や生き物に認識されなくなる。例えば、今こうやって二人で話していても、メディが独り言を言っているように見えるんだ」
「ええっ。それは困ります。おかしな人みたいです」
「そうやってますます周囲が天然ちゃんだと思うように……」
「カゲルさん」
ポカリと、拳で叩かれた。
全然痛くないので、叩いた振りだけのようだ。
「真面目にお願いします」
「えっ、けっこう真面目なのに」
「むむっ」
メディが困ったような顔になる。
いかん、メディをいじるのが楽しすぎて少々暴走してしまった。
「まぁ、でも、そういう魔法だけじゃないよ。さっき使った召喚魔法は、主の影にならなくても使えるからね」
「難しいです」
「いっぺんに覚える必要はないさ。これからはずっと一緒なんだから、ぼちぼち理解してもらえばいいし」
「ずっと……一緒」
メディは噛みしめるように言った。
うっすらと微笑んだ顔は、まるで凶器のように僕の心臓をえぐる。
ヤバい。
メディって、僕の好みど真ん中すぎて、なんかいろいろヤバい。
「と、とにかく、まずはこの旅芸人の一座から離れよう。このままここにいても食い物にされるだけだからね。いいことなんてなにもないよ」
そう告げると、それまでメディの顔に浮かんでいた微笑みが消えて、悲しげな沈んだ様子になってしまった。
「血統……魔法ですか? 普通の魔法とは違うんですね」
僕はさっそく汚れた藁のひとかたまりを代償に、メディの服を召喚した。
背中には清潔な布を、包帯代わりに巻く。
注意しないと、布が背中に張り付いてしまうかもしれないので、薬は厚めに塗っておいた。
その上からシャツを着てもらう。
ふう。
やっと落ち着いて話が出来る。
「うん。血統魔法は、その血を受け継ぐ者にしか使うことが出来ない魔法だ。魔物の固有魔法と同じ原理だと思う」
「そんなものがあるんですね。カゲルさんすごいです」
いやいや、まだ何も説明してないからね?
褒めるのは説明した後にして欲しい。
「例えば、今使った召喚魔法も、普通の召喚魔法とは違う。小道具召喚と言って、そのときに必要なものを召喚出来る魔法だ。逆に言うと、必要じゃないものは召喚出来ない」
「その判断って誰がしているんですか?」
「おそらく自分の無意識だろうって言われてるけど、僕に魔法の使い方を教えてくれたじっちゃんは、思考する者全てが共有する認識の世界が別にあって、僕達は、そこに接続して事象を書き換えているんだろうって言ってたよ。さすがに、あれは大げさだとは思うけどね。だけど、黒衣魔法って、実は人の認識に大きく関わっているものが多くて、あながちボケた老人の妄言とも言い切れないところはあるんだよね」
「お祖父様がお師匠様なんですね」
「うん。その頃には父さんも母さんも生きていなかったからさ。じっちゃんしか僕に魔法を教えることが出来る人間がいなかったんだ」
「あ……ごめんなさい。無神経なことを聞いて」
「いや、何言ってるんだ。メディだって、似たような感じだったんだろ? こないだ教えてくれたじゃないか」
「そう言えば、そう、ですね。私達ちょっと似ているのかな?」
「そうかもしれない。もしそうなら、黒衣魔法的にはいいことだな」
僕がそう言うと、メディは首を傾げた。
「いいこと?」
「ん。黒衣魔法はね。簡単に言えば、契約を結んだ主の影になる魔法なんだ」
「えっ?」
メディは慌てて、ランプに照らされた自分の影を確かめて、再び僕を見る。
「私の影とカゲルさんとは全然違うみたいです」
「くっ……」
僕は笑いそうになるのを必死でこらえた。
駄目だ。
メディは真面目に言っているんだから。
笑っちゃ駄目だ。
「カゲルさん……そんな風に後ろを向いても笑っていることは丸わかりですよ」
振り向くと、むくれたメディの顔が近い。
うおおおおっ、薄暗いとは言え、アップはよしてくれ。
さっきまで裸を見ちゃってたんだぞ、いかに紳士な僕だって、その……、耐えられる限界はあるんだ。
「笑うなら笑うで、ちゃんとこっちを向いて笑ってください」
「うっ、くくっ。メディって天然って言われたことない?」
「あるはずないでしょ。もう」
せっかく契約した主に、へそを曲げられると困るので、僕はメディをなだめる。
「まあまあ。ちゃんと説明するからさ」
「むうっ。わかりました。聞いてさしあげます」
ほんと、僕の新しい主は可愛いなぁ。
「影っていうのはちょっと誤解されるけど、そういう物理的な影じゃなくって、サポート役? みたいなものだね。黒衣魔法を使うと、僕は周囲の人や生き物に認識されなくなる。例えば、今こうやって二人で話していても、メディが独り言を言っているように見えるんだ」
「ええっ。それは困ります。おかしな人みたいです」
「そうやってますます周囲が天然ちゃんだと思うように……」
「カゲルさん」
ポカリと、拳で叩かれた。
全然痛くないので、叩いた振りだけのようだ。
「真面目にお願いします」
「えっ、けっこう真面目なのに」
「むむっ」
メディが困ったような顔になる。
いかん、メディをいじるのが楽しすぎて少々暴走してしまった。
「まぁ、でも、そういう魔法だけじゃないよ。さっき使った召喚魔法は、主の影にならなくても使えるからね」
「難しいです」
「いっぺんに覚える必要はないさ。これからはずっと一緒なんだから、ぼちぼち理解してもらえばいいし」
「ずっと……一緒」
メディは噛みしめるように言った。
うっすらと微笑んだ顔は、まるで凶器のように僕の心臓をえぐる。
ヤバい。
メディって、僕の好みど真ん中すぎて、なんかいろいろヤバい。
「と、とにかく、まずはこの旅芸人の一座から離れよう。このままここにいても食い物にされるだけだからね。いいことなんてなにもないよ」
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