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「キキィーッ!」
次から次へとアキラに飛びかかろうとするラッキーモンキー。
アキラはラッキーモンキーが踏み切った瞬間にサイドステップを踏んだ。
「吹っ飛べ! スコールラッシュ!」
「ギャッ!」
涼やかな声が高らかに魔法名を叫ぶと、アキラを襲おうと飛びかかったラッキーモンキーたちが文字通り吹っ飛んだ。
「潰れろ! スタンププレス!」
アキラの横に突き出された白い手が、広げたてのひらをギュッと握り込む。
すると、ラッキーモンキーたちがまとめて押しつぶされたと思うと、ガラスの割れるような音と主に砕け散った。
「助かった、桜山さん」
「どういたしまして。でも危なかったわね。やっぱり外で待ち合わせは非常識だわ」
お礼を言われて一度微笑んだ後に何やらプリプリ怒り出すという極端な感情変化を見せるのは、アキラの所属する部であるゲーム研究会、略してゲー研仲間の桜山ゆえりであった。
アバターでは魅力的な直立猫である彼女も、現実では少し可愛いただのメガネ女子である。
「俺がうかつだった。スニーキングが身についてないんだな。隠れるための段ボールとか必要かも」
「あはは」
そんな話をしながら待ち合わせの駅前広場の噴水前に急いだ。
世界が変わってしまった今、序盤のアドバンテージは、なんと言っても魔法職にある。
ゆえりは、そんな魔法職のなかでも、マゾいとかマニアックとか評判の、深淵の魔術師というジョブを選んでいた。
深淵の魔術師は、魔術師から派生した上位クラスジョブだ。
深淵の魔術師の特徴は、自分で魔術をデザイン出来るところにある。
しかしこのオリジナル魔術の開発にはプログラム知識が必要とあって、大変面倒くさいのだ。
彼らが遊んでいたVRMMOゲームのEOMでは、もっと簡単に大魔法をドカドカ撃てる黒魔術師などに人気が集まっていた。
実はゆえりはアプリ開発などをしていてプログラムを組むのは得意だったので、このジョブを選んだという経緯がある。何よりも、本人によれば面白いからというのが理由だった。
「お、アキラっち無事だったか」
やって来るアキラとゆえりを見て、部長が自分のメガネをくいっと持ち上げた。
部長もメガネ男子だ。
ゆえりが薄紅色の丸っこいフレームのメガネであるのに対して、部長のメガネは銀縁でレンズ部分が細いものとなっている。
「無事だったかじゃないですよ、部長。やっぱり現地集合は無謀すぎます。魔法職に送り迎えさせるべきでしょう」
「いや、訓練も兼ねて一人で行くって言ったの俺だし」
ゆえりの部長に対する抗議に、アキラはやんわりと反論した。
途端にゆえりがふくれっ面になってそっぽを向く。
「心配してあげたのに!」
「あー悪い」
女子ってめんどいというのがアキラの正直な気持ちだ。
一方で、ゆえりの抗議にもこゆるぎもしていなかった部長が、胸の前で腕を組んでうなずきながら宣言する。
「全員揃ったところで、さっそく狩りを始めよう。ゆえりくん。今のモンスター討伐でアイテムは入手出来たかね?」
部長の問いにゆえりは自分の背負った可愛らしいリュックを下ろした。
なかをごそごそと探る。
「あ、これ」
ゆえりが取り出したのは、半透明の短い棒状のものだ。
「もしかしてエネルギーコアかな?」
ゆえりに駆け寄って来ていた背の高い女子がそう推測する。
彼女は村上幸子。
現実の姿は大柄でナイスバディな女の子だ。
顔の造りはパーツのそれぞれがくっきりとしていて、日本人離れした顔立ちと言える。
「おー幸先いいね」
アキラはそう言った。
エネルギーコアはモンスターから採れる素材のなかで、合成に必須のアイテムだ。
「あと、これ」
もう一つ、ゆえりの手にしていたのは腕輪だ。
「おお、装備品! 性能は?」
「私、鑑定上げてない」
アキラの期待に満ちた声に、ゆえりは申し訳なさそうに言った。
「それじゃ、俺が」
近づいて来た副部長がその腕輪を受け取る。
副部長はEOMでは賢者を選んでいる。
賢者の専用クエには魔法書を巡るものが多く、読書家の副部長は作り込まれたその本を読みたいがために賢者になったという経緯があった。
「さすが神さま」
「その呼び名、リアルではちょっと恥ずかしいぞ」
褒め称えるアキラに、神谷副部長は困ったように眉を潜める。
困っていても直接アキラを叱らないのがこの先輩のいいところだ。
「鑑定! ……うわぁ、本当に使えた」
自分でスキルを使っておきながら、ドン引くという器用なことをしながら副部長はじっとドロップ品の腕輪を見た。
「力+2」
「あ~」
鑑定結果に、がっかりした声が上がった。
「本来は悪くないけど、今はなぁ」
「物理効かないしね」
アキラとゆえりのがっかりコメントに、神谷副部長は少し考えるように腕輪を見つめる。
「いや、これは案外悪くないかもしれないぞ。戦闘以外にも使えるとしたら」
「どういうことだ?」
「重いものを持てるようになるなら、利便性が高いと思わないか?」
「ああなるほど」
副部長の言葉に部長が問いかけ、その答えに納得したようにうなずいた。
「つまり力持ちになれるってこと?」
「そうかもしれない。試してみないとわからないが」
なるほどね、と、アキラは感心したように副部長の手のなかの腕輪を見たのだった。
次から次へとアキラに飛びかかろうとするラッキーモンキー。
アキラはラッキーモンキーが踏み切った瞬間にサイドステップを踏んだ。
「吹っ飛べ! スコールラッシュ!」
「ギャッ!」
涼やかな声が高らかに魔法名を叫ぶと、アキラを襲おうと飛びかかったラッキーモンキーたちが文字通り吹っ飛んだ。
「潰れろ! スタンププレス!」
アキラの横に突き出された白い手が、広げたてのひらをギュッと握り込む。
すると、ラッキーモンキーたちがまとめて押しつぶされたと思うと、ガラスの割れるような音と主に砕け散った。
「助かった、桜山さん」
「どういたしまして。でも危なかったわね。やっぱり外で待ち合わせは非常識だわ」
お礼を言われて一度微笑んだ後に何やらプリプリ怒り出すという極端な感情変化を見せるのは、アキラの所属する部であるゲーム研究会、略してゲー研仲間の桜山ゆえりであった。
アバターでは魅力的な直立猫である彼女も、現実では少し可愛いただのメガネ女子である。
「俺がうかつだった。スニーキングが身についてないんだな。隠れるための段ボールとか必要かも」
「あはは」
そんな話をしながら待ち合わせの駅前広場の噴水前に急いだ。
世界が変わってしまった今、序盤のアドバンテージは、なんと言っても魔法職にある。
ゆえりは、そんな魔法職のなかでも、マゾいとかマニアックとか評判の、深淵の魔術師というジョブを選んでいた。
深淵の魔術師は、魔術師から派生した上位クラスジョブだ。
深淵の魔術師の特徴は、自分で魔術をデザイン出来るところにある。
しかしこのオリジナル魔術の開発にはプログラム知識が必要とあって、大変面倒くさいのだ。
彼らが遊んでいたVRMMOゲームのEOMでは、もっと簡単に大魔法をドカドカ撃てる黒魔術師などに人気が集まっていた。
実はゆえりはアプリ開発などをしていてプログラムを組むのは得意だったので、このジョブを選んだという経緯がある。何よりも、本人によれば面白いからというのが理由だった。
「お、アキラっち無事だったか」
やって来るアキラとゆえりを見て、部長が自分のメガネをくいっと持ち上げた。
部長もメガネ男子だ。
ゆえりが薄紅色の丸っこいフレームのメガネであるのに対して、部長のメガネは銀縁でレンズ部分が細いものとなっている。
「無事だったかじゃないですよ、部長。やっぱり現地集合は無謀すぎます。魔法職に送り迎えさせるべきでしょう」
「いや、訓練も兼ねて一人で行くって言ったの俺だし」
ゆえりの部長に対する抗議に、アキラはやんわりと反論した。
途端にゆえりがふくれっ面になってそっぽを向く。
「心配してあげたのに!」
「あー悪い」
女子ってめんどいというのがアキラの正直な気持ちだ。
一方で、ゆえりの抗議にもこゆるぎもしていなかった部長が、胸の前で腕を組んでうなずきながら宣言する。
「全員揃ったところで、さっそく狩りを始めよう。ゆえりくん。今のモンスター討伐でアイテムは入手出来たかね?」
部長の問いにゆえりは自分の背負った可愛らしいリュックを下ろした。
なかをごそごそと探る。
「あ、これ」
ゆえりが取り出したのは、半透明の短い棒状のものだ。
「もしかしてエネルギーコアかな?」
ゆえりに駆け寄って来ていた背の高い女子がそう推測する。
彼女は村上幸子。
現実の姿は大柄でナイスバディな女の子だ。
顔の造りはパーツのそれぞれがくっきりとしていて、日本人離れした顔立ちと言える。
「おー幸先いいね」
アキラはそう言った。
エネルギーコアはモンスターから採れる素材のなかで、合成に必須のアイテムだ。
「あと、これ」
もう一つ、ゆえりの手にしていたのは腕輪だ。
「おお、装備品! 性能は?」
「私、鑑定上げてない」
アキラの期待に満ちた声に、ゆえりは申し訳なさそうに言った。
「それじゃ、俺が」
近づいて来た副部長がその腕輪を受け取る。
副部長はEOMでは賢者を選んでいる。
賢者の専用クエには魔法書を巡るものが多く、読書家の副部長は作り込まれたその本を読みたいがために賢者になったという経緯があった。
「さすが神さま」
「その呼び名、リアルではちょっと恥ずかしいぞ」
褒め称えるアキラに、神谷副部長は困ったように眉を潜める。
困っていても直接アキラを叱らないのがこの先輩のいいところだ。
「鑑定! ……うわぁ、本当に使えた」
自分でスキルを使っておきながら、ドン引くという器用なことをしながら副部長はじっとドロップ品の腕輪を見た。
「力+2」
「あ~」
鑑定結果に、がっかりした声が上がった。
「本来は悪くないけど、今はなぁ」
「物理効かないしね」
アキラとゆえりのがっかりコメントに、神谷副部長は少し考えるように腕輪を見つめる。
「いや、これは案外悪くないかもしれないぞ。戦闘以外にも使えるとしたら」
「どういうことだ?」
「重いものを持てるようになるなら、利便性が高いと思わないか?」
「ああなるほど」
副部長の言葉に部長が問いかけ、その答えに納得したようにうなずいた。
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「そうかもしれない。試してみないとわからないが」
なるほどね、と、アキラは感心したように副部長の手のなかの腕輪を見たのだった。
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