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初めての狩り
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「とりあえず腕輪は物理組のどっちかに装備してもらおうか」
部長がそう言った。
「俺はパス。村上さんがつければいいよ。男がその腕輪キッツイっしょ」
アキラは早々に腕輪の権利を放棄した。
ゲームのなかでなら腕輪装備も別におかしくはないが、現実となると装飾性のあるアクセサリーを身につけるのは男子には厳しい。
「わかった、私がつけるね」
村上幸子は部長から腕輪を受け取ると、右腕に通す。
「あ……」
「どした?」
「この腕輪、サイズ調整してくれるっぽい」
幸子が思わず上げた声に、アキラが問いかけると、そんな答えが返って来る。
「なるほど。小さく見えても誰でも装備出来るということか。その辺はゲーム準拠なんだな」
「ってことは。もしかするとその装備って存在しているように見えるけど、モンスターと同じで実体はないのかも?」
部長の感心したような声に、副部長がそう応じた。
副部長の言葉に全員が首を傾げる。
「どういうこと?」
アキラは詳しい説明を求めた。
「モンスターは死体が残らないし、物理攻撃が通じない。ということはそもそも実体がないということだ。つまりいきなりこの世界に蔓延した魔法によって存在している魔法生物のようなものと仮定することが出来る」
「おお、なるほど」
副部長の推測に、アキラは感心したようにうなずく。
「だから金属っぽいのにサイズ調整が出来るという腕輪も同じじゃないかと考えたんだ」
「ええっと、モンスターが魔法生物なら、装備品は魔法物質ってとこかな?」
副部長の説明に、ゆえりがそう補足した。
「いいねー、魔法生物に魔法物質。検証掲示板に書き込んじゃえ」
アキラはさっそくスコープグラスからネットに接続すると今の世界を検証している掲示板にその情報を書き込む。
「素早い」
「さすが検証オタ。他人より先んじないと嫌なのね」
部長と幸子がツッコむが、アキラは気にせずニコニコしていた。
少し停滞気味だった掲示板が盛り上がったのがうれしいのだ。
さらに今から狩りだと書き込むと、新情報を期待するレスも貰った。
「よっし、じゃあ狩りに行こうか。って言っても俺は戦力外だがな!」
なんとなく胸を張ってそう言うアキラに全員が笑った。
「さて、それでは狩りについてだが。この駅前広場に集まってもらったのは、見晴らしのよさと上空から見通しが悪いという二つの点を考慮してだ。モンスターからの不意打ちを極力減らせるので、狩りの拠点として使えると思った。それにいざというときに駅構内のトイレなどに逃げ込めば、少なくとも多数といっぺんに戦わずに済むし、大型のモンスターは入って来られない。ついでに言うと、公共施設はセーフティゾーンになっている可能性にも賭けた」
「あ、それは検証したいね。セーフティゾーン」
部長の話にアキラが相槌を打った。
セーフティゾーンとは、モンスターが出ない戦闘不可領域のことだ。
ゲームでは街中などがセーフティゾーンとなっていた。
部長もアキラの言葉にうなずく。
「とりあえず危険は極力避けるが、危険を避けていては狩りにならないという二律背反もある。悩ましいな!」
くぅーっと身悶えする部長を部員たちが冷たい目で見ていた。
いつものことなのだ。
「釣り役、俺でいいか? 戦いは出来ないけど、釣りは出来ると思う」
「さっき、偶発的にそうなったしね」
「うっせ」
アキラの言葉にゆえりがツッコむ。
釣り役とはゲームにおいて、戦うのにちょうどいいモンスターを、自分たちに有利な場所に引っ張って来る囮役のことだ。
スニーキングスキルと素早さを持つ軽業師のアキラはその点優秀な釣り役と言えた。
アキラはぐるっと公園の周囲を見渡す。
気配を感じるというと何か大げさだが、ゲームのときにモンスターが多く出没する場所の特徴のようなものがあり、そういった場所に似た条件を満たしているところをアキラは探した。
「あの花壇の辺り、イモがいるかも。行って来る。……スニーク」
「お、アキラの姿がよく見えなくなった」
「スニークすごい!」
仲間たちが騒いでいるところをみると、スニーキングスキルは人間にも効果があるようだ。
そんなことを頭の片隅で考えながら、アキラはスルスルと花壇に近づく。
「ビンゴ」
思った通りそこにグリーンキャタピラーを見つけて、アキラは密かにガッツポーズを取る。
「攻撃が通じないってことはヘイトが上がらないってことだよな。まぁ気づいてくれれば襲っては来るだろうけど」
アキラは花壇の花をムシャムシャしている緑イモ野郎に、背後から不意打ちを仕掛けた。
その辺で拾った木の枝での思いっきりの一閃。
しかしグリーンキャタピラーにぶつかったはずの一撃は、全く手応えがなかった。
とはいえ、当のグリーンキャタピラーには何か感じるところがあったらしく、背後を振り向く。
一瞬のお見合い。
アキラはすぐに踵を返すと、仲間たちの元へと走る。
背後を振り返ると、グリーンキャタピラーはのろまそうな外見を裏切って、それなりのスピードで追って来ていた。
「よしよし、ちゃんとついて来いよ」
アキラは誘導経路上に障害物のないルートを選び、適切な距離を保ちながらモンスターを誘導した。
時折頭上を確認することも忘れない。
モンスターを釣るときに最も気をつけなければならないのは、狙ったもの以外のモンスターを巻き込むことである。
パーティでの狩りにおいては、適切なモンスターのレベルと数があり、特に数が多いと事故が起こりやすい。
単体を多数で倒すのがセオリーだ。
「敵影なし、よっしゃ狩場到着!」
「ニードルドロップ!」
仲間たちのほうへとアキラが駆け込むと同時に、ゆえりの声が響き、グリーンキャタピラーに細い針のような雨が降り注ぐ。
攻撃を受けたグリーンキャタピラーは、ギュッと体を縮めるように立ち止まる。
「飛びかかりが来るぞ!」
「エアリアルバッシュ!」
アキラの叫びを聞いて、タイミングを合わせて部長が技を放つ。
空気を盾にすると同時に攻撃技でもある魔法防御である。
見えない盾に弾かれたグリーンキャタピラーは、ガラスの砕ける音を立てて消滅した。
「おー、やったな!」
「初戦勝利オメ!」
全員で拳をぶつけ合う。
そしてアキラは次の獲物を探して再びスニークを発動した。
部長がそう言った。
「俺はパス。村上さんがつければいいよ。男がその腕輪キッツイっしょ」
アキラは早々に腕輪の権利を放棄した。
ゲームのなかでなら腕輪装備も別におかしくはないが、現実となると装飾性のあるアクセサリーを身につけるのは男子には厳しい。
「わかった、私がつけるね」
村上幸子は部長から腕輪を受け取ると、右腕に通す。
「あ……」
「どした?」
「この腕輪、サイズ調整してくれるっぽい」
幸子が思わず上げた声に、アキラが問いかけると、そんな答えが返って来る。
「なるほど。小さく見えても誰でも装備出来るということか。その辺はゲーム準拠なんだな」
「ってことは。もしかするとその装備って存在しているように見えるけど、モンスターと同じで実体はないのかも?」
部長の感心したような声に、副部長がそう応じた。
副部長の言葉に全員が首を傾げる。
「どういうこと?」
アキラは詳しい説明を求めた。
「モンスターは死体が残らないし、物理攻撃が通じない。ということはそもそも実体がないということだ。つまりいきなりこの世界に蔓延した魔法によって存在している魔法生物のようなものと仮定することが出来る」
「おお、なるほど」
副部長の推測に、アキラは感心したようにうなずく。
「だから金属っぽいのにサイズ調整が出来るという腕輪も同じじゃないかと考えたんだ」
「ええっと、モンスターが魔法生物なら、装備品は魔法物質ってとこかな?」
副部長の説明に、ゆえりがそう補足した。
「いいねー、魔法生物に魔法物質。検証掲示板に書き込んじゃえ」
アキラはさっそくスコープグラスからネットに接続すると今の世界を検証している掲示板にその情報を書き込む。
「素早い」
「さすが検証オタ。他人より先んじないと嫌なのね」
部長と幸子がツッコむが、アキラは気にせずニコニコしていた。
少し停滞気味だった掲示板が盛り上がったのがうれしいのだ。
さらに今から狩りだと書き込むと、新情報を期待するレスも貰った。
「よっし、じゃあ狩りに行こうか。って言っても俺は戦力外だがな!」
なんとなく胸を張ってそう言うアキラに全員が笑った。
「さて、それでは狩りについてだが。この駅前広場に集まってもらったのは、見晴らしのよさと上空から見通しが悪いという二つの点を考慮してだ。モンスターからの不意打ちを極力減らせるので、狩りの拠点として使えると思った。それにいざというときに駅構内のトイレなどに逃げ込めば、少なくとも多数といっぺんに戦わずに済むし、大型のモンスターは入って来られない。ついでに言うと、公共施設はセーフティゾーンになっている可能性にも賭けた」
「あ、それは検証したいね。セーフティゾーン」
部長の話にアキラが相槌を打った。
セーフティゾーンとは、モンスターが出ない戦闘不可領域のことだ。
ゲームでは街中などがセーフティゾーンとなっていた。
部長もアキラの言葉にうなずく。
「とりあえず危険は極力避けるが、危険を避けていては狩りにならないという二律背反もある。悩ましいな!」
くぅーっと身悶えする部長を部員たちが冷たい目で見ていた。
いつものことなのだ。
「釣り役、俺でいいか? 戦いは出来ないけど、釣りは出来ると思う」
「さっき、偶発的にそうなったしね」
「うっせ」
アキラの言葉にゆえりがツッコむ。
釣り役とはゲームにおいて、戦うのにちょうどいいモンスターを、自分たちに有利な場所に引っ張って来る囮役のことだ。
スニーキングスキルと素早さを持つ軽業師のアキラはその点優秀な釣り役と言えた。
アキラはぐるっと公園の周囲を見渡す。
気配を感じるというと何か大げさだが、ゲームのときにモンスターが多く出没する場所の特徴のようなものがあり、そういった場所に似た条件を満たしているところをアキラは探した。
「あの花壇の辺り、イモがいるかも。行って来る。……スニーク」
「お、アキラの姿がよく見えなくなった」
「スニークすごい!」
仲間たちが騒いでいるところをみると、スニーキングスキルは人間にも効果があるようだ。
そんなことを頭の片隅で考えながら、アキラはスルスルと花壇に近づく。
「ビンゴ」
思った通りそこにグリーンキャタピラーを見つけて、アキラは密かにガッツポーズを取る。
「攻撃が通じないってことはヘイトが上がらないってことだよな。まぁ気づいてくれれば襲っては来るだろうけど」
アキラは花壇の花をムシャムシャしている緑イモ野郎に、背後から不意打ちを仕掛けた。
その辺で拾った木の枝での思いっきりの一閃。
しかしグリーンキャタピラーにぶつかったはずの一撃は、全く手応えがなかった。
とはいえ、当のグリーンキャタピラーには何か感じるところがあったらしく、背後を振り向く。
一瞬のお見合い。
アキラはすぐに踵を返すと、仲間たちの元へと走る。
背後を振り返ると、グリーンキャタピラーはのろまそうな外見を裏切って、それなりのスピードで追って来ていた。
「よしよし、ちゃんとついて来いよ」
アキラは誘導経路上に障害物のないルートを選び、適切な距離を保ちながらモンスターを誘導した。
時折頭上を確認することも忘れない。
モンスターを釣るときに最も気をつけなければならないのは、狙ったもの以外のモンスターを巻き込むことである。
パーティでの狩りにおいては、適切なモンスターのレベルと数があり、特に数が多いと事故が起こりやすい。
単体を多数で倒すのがセオリーだ。
「敵影なし、よっしゃ狩場到着!」
「ニードルドロップ!」
仲間たちのほうへとアキラが駆け込むと同時に、ゆえりの声が響き、グリーンキャタピラーに細い針のような雨が降り注ぐ。
攻撃を受けたグリーンキャタピラーは、ギュッと体を縮めるように立ち止まる。
「飛びかかりが来るぞ!」
「エアリアルバッシュ!」
アキラの叫びを聞いて、タイミングを合わせて部長が技を放つ。
空気を盾にすると同時に攻撃技でもある魔法防御である。
見えない盾に弾かれたグリーンキャタピラーは、ガラスの砕ける音を立てて消滅した。
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