ゲームが現実と融合した!――そんなことより明日のご飯どうしよう?

蒼衣翼

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帰宅

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「出来たポーションは五本だからちょうどいいね。全員に一本ずつ」
「OK」
「はい!」
「これはうれしいね」
「おお、現実でポーションを飲める日が来ようとは……」
「こら洋介、飲もうとしない」

 副部長が全員にポーションを配る。
 途中感激のあまり部長がさっそくポーションの試飲を行おうとしたが、副部長が止めた。
 貴重なポーションなのだから当然だ。
 
「さて、各素材はプールしておくとして、問題はウサギ肉と果実酒だな」
「はい!」
「はい、桜山さん」

 生ものと、学生では飲めないお酒に副部長は困った顔をした。

「お肉は切り分けること出来ませんか?」
「なるほど、やってみる」

 副部長は肉を持ってキッチンへと引っ込む。
 ガサガサと物音がした後、ラップに包まれたお肉を持った副部長が戻って来た。

「切り分けOKだった」
「興味深いな」

 副部長の言葉に部長が興味しんしんという顔で切られたウサギ肉を見つめる。

「果実酒は何かの合成レシピがあったような気がする。……う~ん。そうだ! 強壮剤。パワーアップ用アイテムだ。あと、MP回復用のケーキの材料」
「MP回復は大切ね!」

 アキラの言葉にゆえりがずいっと身を乗り出して来た。
 幸子も熱のこもった目を向けている。

「桜山はわかるけど、なんで村上も興味ありそうなんだよ」
「だって、スイーツよ! 魔法のスイーツ!」
「ああ、はいはい」

 女子は甘いものが好きというのは世界の常識なのだろうか?
 アキラはため息をつく。

「じゃあ果実酒もプールしておくよ。材料が揃って料理を取っている人が見つかったら合成を試すということで」
「料理私いけるよ!」

 副部長の言葉にゆえりが勢いよく手を上げる。
 アキラは料理の条件を思い浮かべる。
 器用と知識だっけ、なるほど魔法職ならいけそうだな。そう考える。

「それなら材料が揃ったら桜山さんに試してもらおう。俺が預かっていて大丈夫かな?」
「異議なーし!」

 副部長の問いにすぐさまアキラが賛成する。
 ほかのメンバーも全員うなずいた。

「それじゃあ、これで一応解散しよう。明るいうちに家に戻ったほうがいいからね」
「わかりました!」
「あ、女子はうちの親父が送って行くから。ちょい待ち」

 アキラはスコープグラスで父親のアドレスを呼び出す。
 インカムを引き出して電話で連絡を取った。

「今から帰る」
『わかった! すぐ行くからな!』

 テンション高い。嫌な予感しかしないとアキラはうんざりと肩を落とす。

「じゃあ俺はこのまま帰るな。みんな気をつけて」
「部長、大鎌持ってったら?」
「エントランスで捕まると思う」

 部長の帰宅宣言にアキラとゆえりがちゃちゃをいれた。

「大鎌いいよなぁ」

 案外本人は乗り気である。

「政府発表でOKになってからね」

 副部長が苦笑いで答えた。
 部長が出た後、副部長は残った三人にお茶のお代わりを勧める。

「みんな遠慮して伊勢海老食べないから残っちゃったな」
「だって、二匹しかいないし、部長が一匹食べた後だとどうも手を出し辛くて」

 おせちのお重はまだ結構残っていた。だが、今残っている分ぐらいなら明日までに副部長が一人で食べることが出来るだろうという量だ。

「ローストビーフはいただきましたから。美味しかったです!」
「あーあれうまかったなぁ」

 ゆえりがお礼を言ったせいで味を思い出したアキラはうっとりと言った。

「ローストビーフなんて私初めて」
「マジか」

 幸子が言って、アキラが驚く。
 もちろん日常的に食べるものではないが、お祝いごとなんかに出て来る料理ではないかと思うのだ。

「うちほら食堂でしょ? おかずは基本残り物だから」
「それはそれで美味しそうではあるな」
「美味しいんだけど、同じメニューになりがちなんだよね。お母さんがそれなりに工夫はしてくれるけど」
「食べ物屋は食べ物屋なりの苦労があるんだな」

 そんな話をしている内にアキラの父から下に到着したという連絡が入る。

「それじゃあ神さま、いや、副部長、いろいろありがとうございました!」
「お世話になりました」
「ごちそうさまでした!」
「いやいや、大したおもてなし出来なくてごめんな」
「そこ謝るところじゃないですよ。今後は食料は大切なんですから、あんまりほいほい振る舞っちゃだめですよ」

 副部長の言葉に幸子がきっちりと釘を刺す。

「わかってるよ。君たちは可愛い後輩だから特別だ」
「やーだ、副部長、可愛いだなんて」
「ほらほら村上、デカイ図体で玄関邪魔だから」
「くっそアキラコロス」

 心あたたまる挨拶を交わしたのち、エレベーターでエントランスに下りた。
 途端に避難している人たちの視線が集まり、浮き立っていた気分が少ししぼむ。

「おお、アキラ! 無事でよかった!」
「いや、無事なのは電話でわかってたろ」
「実際に顔を見るまで安心出来ないのが親心というものだよ」
「はいはい」

 すぐに玄関ホールにアキラは父の姿を見つけたが、そのあまりの熱烈歓迎ぶりに避難している人たちの冷たい目もすっかり吹き飛んでしまった。
 女子二人は笑っている。

「アキラくんから送っていただけるって聞きました、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「当然だろ。女の子だけでモンスターの跋扈する外を歩かせる訳にはいかないよ」
「父さん、それ、男女差別」
「男女差別結構! 俺は女の子を守ってやれない男になるぐらいなら差別主義者になるね」
「おじさまカッコイイ!」
「憧れます」
「いやー、ははは」
「親父、母さんにチクるぞ」
「なぜだ! 悪いことは何もしていないぞ! 俺は潔白だ!」
 
 そんな他愛もない話をしながら車に乗り込む。

「ガソリン、大丈夫ですか?」
「ああ、電気自動車だから今のところ問題ない」
「電気はまだ来ていますね」

 ゆえりが少し不安そうに電柱と電線を見る。
 モンスターに壊されたらおしまいだという意識があるからだ。

「今の所、モンスターが戦闘の余波以外で建造物を壊したという話は聞かないな」

 父の言葉にアキラは先程のゲー研メンバーとの話し合いを思い出す。
 魔法生物と魔法物質。
 このキーワードは今後の文明生活を送るために重要なものになりそうだ、とそう改めて思うアキラだった。
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