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出会編
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明け方。
ディオンらは、エオハルトに見送られ、ダージル邸を後にした。
「ディオン様、よろしかったのですか」
昨夜のことだ。
御者から馬が回復したとの知らせを受けたディオンは、想定より早い出立を決めた。
それを聞いたエオハルトの心境としては、1秒でも早く立ち去って欲しいところだったが、残念だと引き留めるポーズを取ってみせた。名ばかりとはいえ、彼も貴族の端くれということだろう。
そんなやり取りがあったことなどつゆ知らず、今もレオルトは一人、客室で熟睡している。
「構わない。別れの挨拶をしたら、離れ難くなるだけだ」
暗に、挨拶をしなくて良かったのかと問われ、珍しくディオンは素直に答えた。
すやすやと眠っていたレオルトを思い出し、ディオンの顔は、わずかに緩む。
その返答にメイドは虚をつかれたように驚いたが、小さな主人の変化を嬉しく思った。
「左様でございますか。
それにしても、面白い方でしたね」
「………父には報告するな。一宿一飯の恩を返すために、屋敷に招待したとでも言っておけ」
「(招待することは決定事項なんですね)
承知しました」
馬車に揺られながら、ディオンの頭はレオルトでいっぱいになっていた。
王都の公爵邸に招待したら、どこを案内するか。
食事はどうするか。屋敷の料理人に言って、プリンと同じものを作らせて驚かせるのも、悪くないかもしれない。
彼の思考は、もてなしだけにとどまらず、どうやってレオルトを囲い込むか。王都に住まわせる大義名分を用意できないか。
様々な可能性を想定をし、考えを巡らせていく。
「ディオン様、辺境伯領へ行く目的をお忘れになっていませんよね?」
ダージル邸に寄る前と出た後の、機嫌の違いを見て、メイドはディオンに釘を指す。
普段であれば、気分を害するところだが、彼の機嫌は小言程度では左右されないほどに上がっていた。
「分かっている。
だが、正直もう必要はないかもしれないな」
「………レオルト様を見つけたからですか」
「誰にも悟らせるな。レオルトを守る準備が出来るまで、余計な干渉が入ったら困る」
「当主様は、すぐお気付きになるのでは」
「考えるさ。誰にも手を出させない方法を」
子供の戯言と言ってしまえば、そこまでだが、ディオンなら必ず成功させる。
彼女にそう感じさせる何かが、確かに彼にはあった。
「(いかにも田舎っ子というか、純粋そうな子だったけど、大丈夫かしら)」
まだ会って間もない子供を、メイドは少し不憫に思った。
一方、辺境伯領では、粛々と歓迎の準備が進められていた。
「お爺様! 公子様はそろそろ到着されるでしょうか? 先触れがあってから、もう6日経ちます」
辺境伯である祖父に、孫の少年は興奮した様子で尋ねた。
「おお、アレクよ。公子の前では、もう少し落ち着きを持たねばならんぞ。
そうだな、わしの予想では昼頃には着くと考えておったが、まだ近隣にも立ち寄った形跡がないようだ」
「ええ~」
「まあ、王都から此処は遠いからな。
公子もまだ幼い。休みながら移動しているんだろう」
「ふ~ん。
あっそうだ、教会の子たちも呼んでいいですか?
公子様に紹介したいです」
まだ会えないことが分かると、少年はがっくりと肩を落とした。
「ならん。
今回の訪問は、極秘だ。
だから領民にも報せてはいけないよ」
「皆んなに会わせたかったのになぁ。
でもそれなら仕方ないですね」
「フフ、本当にお前は優しい子だ。
きっと公子の良き友人になるだろう」
少年の頭をワシワシと撫で、辺境伯は言う。
そして少年は弾ける笑顔で、こう答えた。
「はい! 僕もそう思います。
だって僕たちは、そういう運命ですから!」
ディオンらは、エオハルトに見送られ、ダージル邸を後にした。
「ディオン様、よろしかったのですか」
昨夜のことだ。
御者から馬が回復したとの知らせを受けたディオンは、想定より早い出立を決めた。
それを聞いたエオハルトの心境としては、1秒でも早く立ち去って欲しいところだったが、残念だと引き留めるポーズを取ってみせた。名ばかりとはいえ、彼も貴族の端くれということだろう。
そんなやり取りがあったことなどつゆ知らず、今もレオルトは一人、客室で熟睡している。
「構わない。別れの挨拶をしたら、離れ難くなるだけだ」
暗に、挨拶をしなくて良かったのかと問われ、珍しくディオンは素直に答えた。
すやすやと眠っていたレオルトを思い出し、ディオンの顔は、わずかに緩む。
その返答にメイドは虚をつかれたように驚いたが、小さな主人の変化を嬉しく思った。
「左様でございますか。
それにしても、面白い方でしたね」
「………父には報告するな。一宿一飯の恩を返すために、屋敷に招待したとでも言っておけ」
「(招待することは決定事項なんですね)
承知しました」
馬車に揺られながら、ディオンの頭はレオルトでいっぱいになっていた。
王都の公爵邸に招待したら、どこを案内するか。
食事はどうするか。屋敷の料理人に言って、プリンと同じものを作らせて驚かせるのも、悪くないかもしれない。
彼の思考は、もてなしだけにとどまらず、どうやってレオルトを囲い込むか。王都に住まわせる大義名分を用意できないか。
様々な可能性を想定をし、考えを巡らせていく。
「ディオン様、辺境伯領へ行く目的をお忘れになっていませんよね?」
ダージル邸に寄る前と出た後の、機嫌の違いを見て、メイドはディオンに釘を指す。
普段であれば、気分を害するところだが、彼の機嫌は小言程度では左右されないほどに上がっていた。
「分かっている。
だが、正直もう必要はないかもしれないな」
「………レオルト様を見つけたからですか」
「誰にも悟らせるな。レオルトを守る準備が出来るまで、余計な干渉が入ったら困る」
「当主様は、すぐお気付きになるのでは」
「考えるさ。誰にも手を出させない方法を」
子供の戯言と言ってしまえば、そこまでだが、ディオンなら必ず成功させる。
彼女にそう感じさせる何かが、確かに彼にはあった。
「(いかにも田舎っ子というか、純粋そうな子だったけど、大丈夫かしら)」
まだ会って間もない子供を、メイドは少し不憫に思った。
一方、辺境伯領では、粛々と歓迎の準備が進められていた。
「お爺様! 公子様はそろそろ到着されるでしょうか? 先触れがあってから、もう6日経ちます」
辺境伯である祖父に、孫の少年は興奮した様子で尋ねた。
「おお、アレクよ。公子の前では、もう少し落ち着きを持たねばならんぞ。
そうだな、わしの予想では昼頃には着くと考えておったが、まだ近隣にも立ち寄った形跡がないようだ」
「ええ~」
「まあ、王都から此処は遠いからな。
公子もまだ幼い。休みながら移動しているんだろう」
「ふ~ん。
あっそうだ、教会の子たちも呼んでいいですか?
公子様に紹介したいです」
まだ会えないことが分かると、少年はがっくりと肩を落とした。
「ならん。
今回の訪問は、極秘だ。
だから領民にも報せてはいけないよ」
「皆んなに会わせたかったのになぁ。
でもそれなら仕方ないですね」
「フフ、本当にお前は優しい子だ。
きっと公子の良き友人になるだろう」
少年の頭をワシワシと撫で、辺境伯は言う。
そして少年は弾ける笑顔で、こう答えた。
「はい! 僕もそう思います。
だって僕たちは、そういう運命ですから!」
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