チート願望者は異世界召還の夢を見るか?

扶桑かつみ

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第一部

095「乱獲クエスト?(1)」

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「じゃあ、さっさと大切な事済ましちゃおうよ!」

「もう今日のうちに王宮まで行くのは無理じゃないか?」

「え? 何言ってるの。死者の埋葬とお宝集めをするんだよ」

 空中戦にケリが付いたので、これから王都へ向かういう意味での言葉だと思ったけど、どうやら違っていた。
 周囲も、向こうの飛龍をヴァイスに任せ、走って合流してきたボクっ娘に賛成する雰囲気が強い。

「まあ、私達しかいないし、しない訳にはいかないわよね」

「埋葬はともかく、ドラゴン2体の解体は大ごとだ。後回しでいいだろ」

 マリアさん達が、串刺しで穴だらけになった飛龍を見上げている。

「王都の途中に、もう1体落ちてるよ」

「何にせよ、ドラゴン解体は街に行って業者呼びたいところだなー」

「取りあえず一番お高いとこだけ取っとこうぜ」

 そう言うジョージさんは、既にドラゴンの側にいて腰に差している大降りの短剣をパンパンと叩く。

「じゃあハルカ、埋葬した後のお祈りは頼んでいい?」

「もちろん。けど、埋葬から手伝うわよ」

「病み上がりは体力温存していなさい」

「さてと、死体包む毛布かマントあったっけ?」

「倒れた竜騎兵ので足りなければ、神殿で借りればいいだろ。近くだし馬で行ってくる」

 テキパキと話し合いながら、さっそく死体の片付けを始めてる。けっこう手慣れている。
 オレも流されるままに、倒したばかりの『帝国』のドラゴンライダーの埋葬を手伝う。

 この間の『ダブル』たちの葛藤としては、この世界的にも主のいないマジックアイテムは天下の回りものという考えがあるものの、竜騎士の装備をどこまでひっぺがすかという問題があった。

 敵の死者、戦場での死者から装備を手に入れるのは権利の一つらしいが、竜騎士も騎士の一種なので最低限の名誉を尊重するべきだから。

 他の連中が、取り敢えずこっちの人であるアクセルさんにお伺いをたてている。
 そうするとアクセルさんは意外に淡白で、騎士の名誉の証や品以外は構わないだろうとの事だった。

 そして竜騎士たちは、それほどいい剣や装備は持っていなかったので、ほとんどが主とともに埋葬することになった。
 それでも主武装の長槍と強固な龍の鱗で作ったドラゴン・スケイル・メイル・アーマーの鎧など幾つかの高級アイテムを手に入れた。

 もっとも、鎧はサイズを仕立て直す事が多いので、その場で装備変更するというわけにもいかない。
 もちろんだけど、着用者の体のサイズに合わせて勝手に大きさが変化するというような、ゲーム的ご都合主義もなかった。
 逆にオーダーメイドで作ると、ハルカさんの鎧のように体の線にぴったりフィットすることで、防御効果をさらに高める事もできる。

 そうして装備を剥いだり、念のため遺品を確認しているレンさんが、アクセルさんを手招きしていた。
 手には、金属製のペンダントのようなものを持っている。どうやらロケットペンダントらしい。

「こっちの竜騎士って、けっこうな身分の人じゃないですか?」

「そうだね、詳しい事は分らないが、男爵位を持つ貴族で騎士長のようだね」

「外交とかで不味くないですか?」

 そう聞くオレに対して、アクセルさんはほぼ無表情だ。
 もちろんだけど、さっきの戦闘からこっちいつもの笑顔もない。

「国や所属を明かさずに戦った彼らに正義はないし、彼らの本国は少なくとも表立っては何もしないだろう。公的には、彼らは無名の戦士だよ」

 オレがアクセルさんに念のため聞いていると、他の人たちも近づいてくる。

「この人が今回の隊長や一番の責任者でしょうかね?」

「どうだろう。『帝国』は国の規模が大きいから、彼くらいの身分や階級の者はそれなりの数がいる筈だけど、指揮官の可能性は高いだろうね」

「向こうで撃墜した人はそういうの無かったから、ドラグーン隊の隊長さんなんだろうね。ちゃんと空中戦だけで落としてあげたかったな」

 いつになくボクっ娘が、しんみりとした口調で話す。

「やっぱりそういうものなのか?」

「ボクら『ダブル』はともかく、こっちの世界の空を飛ぶ人は、倒れるなら空中戦でって思うからね」

「そうだね。……さあ、無用な詮索もまた失礼に当たるよ。時間もないし埋葬をして龍の方を手伝おう」

 アクセルさんの言葉通り、全員で埋葬を進めるのではなく、一部の者はドラゴンの高価な部位を切り取ったりしている。
 様々な素材となる、角、牙、爪、目などすぐに取れるものは幾つかある。

 中でも価値のあるのが、ドラゴンの魔石である「龍石」だ。
 「龍玉」や「龍核」とも言われる、龍の体内中枢にある半透明の石のことだ。

 龍の力の根源とされ、基本的には心臓と脳の側にそれぞれ存在する。
 血液などで魔力の循環しやすい場所に形成されるものらしく、大型のドラゴン、年を経たドラゴンほど大きな龍石を持つ。

 そして大きさと純度、中に含まれている情報によって高額で取引される。さらに自動充填型の魔石として価値が高く、魔法使い垂涎のアイテムだ。
 1つあれば、Cランクの魔力持ち一人分に匹敵する魔力を外付けバッテリーのような形で利用出来るという。

 また、心臓の側の龍石は大量の魔力を内包出来て、脳の側の龍石は龍の英知を蓄えているとされ、心臓の側の龍石を「龍玉」、脳の側の龍石を「龍核」と呼び分ける。
 そして、ドラゴンの死体から真っ先に取るのがこの龍石だ。
 価値が高いのもあるが、魔力の塊である龍石を核にドラゴンがアンデッド化する事が多いため、問答無用で解体して取り出される。

 しかし、一番最初に行っているのは血抜きだった。
 龍の血と聞くと、重要なファンタジーアイテムっぽいが、腐りやすい上に意外に役に立たない。
 別に飲んだからといってパワーアップするわけでもなく、せいぜい強壮剤になるくらいだ。

 試しに少し飲んでみたが、進んで飲みたいようなものでもなかった。
 この血抜きのために、わざと完全に止めをささない事も多いらしい。でないと、簡単に血抜きできないからだ。

 あと、できるだけ早く腐りやすい内蔵を取り出して乾燥させるほうがいい。このあたりは、普通の動物と変わりない。
 冷凍保存などできれば話も変わるが、中型ドラゴンほどの大きさとなると、魔法を用いても長期間の保存は非常に難しい。

 ただ、大して飲食しないドラゴンは、体の大きさと比べると消化器系がかなり小さいし、内蔵も普通の生き物との違いはあるそうだ。

 なお、ドラゴンの肉は、ヴァイスのこれ以上ないご馳走になった。なんでも龍を食料にするのは巨鷲と巨鷹くらいで、おかげで龍と巨鷲、巨鷹の乗り手の関係は微妙らしい。

 そして龍の肉は悪食ではなく人間様でも食べられるものなので、龍石を取るついでに一部を切り取ってその日の夕食とした。
 ドラゴンと言えども、飛龍程度だと動物の一種に過ぎないといえる情景だ。
 見た目が鳥の巨鷲の方が、希少な上により魔物に近いらしい。

 そして埋葬が終わる頃には、それぞれの場所で倒されたドラゴンからは、合計4つの龍石が取り出されていた。
 5~6センチぐらいの赤紫色の水晶のようで、中心部には魔力の揺らめきが見える。
 普通の魔石より大きく、パッと見でもかなり大きな魔力が内包されているのも感じられた。

「飛龍にしてはけっこう大きい龍玉、龍核が2個ずつだけど誰がもらう? それとも後で換金してお金分配する?」

 ボクっ娘が気軽に声をかける。
 先ほどまで龍石をとるため全身飛龍の血で真っ赤に染まっていた体と服は、ハルカさんの清浄化の魔法できれいにしてもらっている。
 オレも何度かお世話になった便利魔法の一つだけど、意外に高位の魔法なので簡単かけられるものではないと、体を汚した時に怒られた覚えがある。

「1匹は単独撃墜だから、レナの分でいいんじゃないの?」

「いや、それは悪いよ。この2匹はみんなの戦果だよ」

 ハルカさんの言葉に、ボクっ娘はかなり殊勝な態度と口調だ。

「レナさんがそう言うなら、取りあえず次の戦いで必要なヤツに持たせて、その後で売り払うか決めてもいいんじゃないか?」

「じゃあ、とりあえずそれでいきましょう。でも、誰か欲しい人はいないの?」

「『帝国』の龍のものだし、足とかつかないかしら?」

「それは大丈夫でしょう。ライダーも死んでるから、個体判別出来るものでもない」

「なら、買い取りでもいいから、その大きい方の龍核が欲しいです」

 オレとボクっ娘以外の相談に、サキさんが小さく手を上げる。

「龍核の情報目当てか?」

「先着お一人様だからね」

「もう片方はどうする?」

「二つ買うのは無理」

 そう言って手を左右にヒラヒラする。

「じゃあ、私がもらうわ」

 オレはほとんど傍観しているだけで、話がどんどん進んで行く。
 龍核は、今後も踏まえて仮でマリアさんとサキさんが買い取ることして、龍玉は取りあえず回復担当でもあるハルカさんが二つとも預かった。

「こんなに持ったら、魔法打ち放題ね」

 龍玉を大小2つ持つハルカさんは、やや苦笑気味だ。
 手にしているだけでAランクの一人分の魔力になるが、何よりその金額と希少性から、こんなに手にする者が稀だからだそうだ。

「出来れば片方は治癒用に残しておいてね」

「分かってるって。なるべく使わないようにするわ」

「けど、『光槍陣』を撃ちながら進んだら楽勝じゃね? あの魔法で12本とかヤバいよな」

「これだけ龍玉があっても、そんなに連射できるわけじゃないから、蹂躙戦だったけ? そういうのは無理よ」

「マジックミサイルだと?」

「そっちの方が燃費は随分マシだけど、1人じゃ無理ね」

 ハルカさんが、ジョージさんの言葉にウンザリ気味に答えている。多分、今までも聞かれた事があるのだろう。
 そこにマリアさんが助け舟を出すほどだ。

「まあ、遠距離からの蹂躙戦は、相手の数にもよるけど専門の魔法職が4、5人は欲しいわね」

「なら、地道に進むしかないか」

「そう言う事ね」


 何とか話はまとまったが、既に午後をかなり回っていたので、念のため空からの追撃がないのかの周辺の偵察と、前進予定路を途中まで確認するに止めた。
 そしてみんなが魔物の気配を感じてドラゴンの死体まで戻ってくると、大量の魔物が集まっていた。

「うわっ! こりゃ餌にたかるアリだな」

 ジョージさんの言葉は、本当に上手く言い表していた。

「この辺に集まってたのか」

「道理で他で見かけなかったわけだ」

「一度にこれだけの数は珍しいね」

「ドラゴンの死体の魔力放出に引き寄せられたのね」

 みんなも半ば呆れている。

「あっち見ろ。まだよって来てるぞ。どんだけいるんだよ」

 ジョージさんが示した先に、確かに数体ずつに分かれた20体ほどの魔物が近づきつつある。
 そしてドラゴンの周りは、100体に達するだろうか。

「まあ、この辺の連中が全部寄って来てるなら、明日が楽になっていいんじゃないかしら」

 マリアさんの半ばヤケクソ気味な声だ。

「マリアさん、すげー前向き」

「何にせよ、放っておくわけにもいかないですよね」

「アクセルさん、あいつらの分も懸賞金出ますかー?」

「もちろん。ちゃんと証拠を取っておいてくださいね」

「「よっしゃー!」」

 ドラゴンに群がるモンスターの群れを前に、マリアさんたちのテンションが上がっている。
 オレは、ハルカさんに慣らされたせいか、害獣駆除くらいにしか思えない。ハルカさんも、表情からして同じように思っている感じだ。
 そしてボクっ娘が空の偵察に出ているので、こっちの頭数は7人。

 見た感じ、魔物の主力は矮鬼系の小柄な人型と、魔狼のような四つ足の獣。ちらほらと食人鬼のような大型の人型も見える。
 獣型も、首が2つ、3つあるような異形や大型のやつも見受けられる。低空ながら飛んでいる魔物も何匹かいる。
 北の地方のせいか、虫型の魔物は相変わらず見かけない。

「見た事ないやつもいるな」

「その辺の動物どうしが魔力でくっ付いた即席キメラだろうな」

「そうね。けど殆どは定番系ね」

「上位の魔物もいませんね」

「アンデッドもな」

「あの3つ首は、何してくるか確かめたいな」
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