チート願望者は異世界召還の夢を見るか?

扶桑かつみ

文字の大きさ
215 / 528
第三部

215「ダンジョン攻略?(2)」

しおりを挟む
「地下2階というか、実質本来の地下1階への階段だけど、このまま進むか?」

 さらに地下に続く階段の前で、オレが振り返って問う。
 階段は幅が広いながらも長めで、ここからは地下を掘った構造をしている。
 そして地下に対して、シズさんが何かの魔法を使っていた。

「行くしかないでしょう。シズ、魔物の反応は?」

「降りた先にかなり居るな。ハルカは『光槍陣』の準備をしながらゆっくり進んでくれ。私も準備する」

「スミレさん、下の構造は分かる?」

「存じ上げません。ですが、元主人はこの方角、距離約40メートルです」

「魔物の集団のさらに先だな」

 シズさんは進もうとしたが、オレにはもう一人聞くべきヤツがいる。計測とか測定が得意な、オレのおバカさをカバーしてくれる頼れるヤツだ。

「クロ。下の構造は分かるか?」

「降りた先が縦長のホール状になっており、そこから廊下と扉によって、さらに小さな区画が多数存在しています。詳細な図面は必要ですか?」

「いいや、それだけ分かれば十分だ」

「じゃ、先制攻撃受けないように、慎重に進みましょう」

 そうして地下への階段を半分ほど降りたところで、シズさんが目で合図する。
 すでにハルカさんの体の周囲には、なんだか見慣れてきた魔法陣が3つ、ゆっくりと回っている。
 またシズさんも、魔法陣が3つ浮かび上がっている。

 そしてシズさんが手をかざし、それを小さく振り下ろす。
 「行け、『光槍陣』!」「『炎弾乱撃』」という二人の声が重なると、地下の奥へと二つの魔法で生み出された破壊の塊が、突入していく。

 そして片方は、いかにも痛そうな突き刺さる音が連続して発生し、もう片方は階段からも見える炎の小さな爆発がそこかしこで発生した。
 どちらも同じ数かそれ以上の悲鳴や何かの叫び声を伴っていて、その効果を伝えている。

 そして一連の破壊が収まる次の瞬間、シズさんが矢継ぎ早に次の魔法を投射する。
 『闇避け』という広い場所を短時間強く照らす呪文だ。
 暗闇に慣れた者に対しては、ある程度目くらましに使えるほどの明るさがある。
 ゲームなどと違い、暗い場所で行動する際は自前で明かりを用意しないといけないので、特に魔法使いはこの手の魔法を豊富に持っている。

 「行くぞ、二人とも!」と声をかけて、キューブな2体を従えて地下二階へと突入する。
 すぐ後ろからは、弓で援護するボクっ娘が続く足音も聞こえる。少し遅れて、シズさんを護衛しながらハルカさんも続く。

 魔法の強い明かりで照らされた地下空間は、約20メートル×7、8メートル、高さ3メートルくらいの広いホール。
 天井は半円状態に丸くなっていて地面まで続き、天井の形で支える構造になっている。丁度板付きのかまぼこみたいな感じだ。
 そしてその部屋を中心に、通路が伸びたり部屋への入り口が見られる。

 地下にあるが、やたらと広い廊下といったイメージの場所で、用途は今ひとつ分からない。
 ホールの壁には沢山の扉があるが、多くが随分前に朽ち果てた感じで吹き抜けてしまっている。
 それでも、その場所は片付けらたりしているなど、一定程度の人もしくは人型の知的生命体が使用した痕跡が見られる。

 そしてその空間のそこかしこには、今の魔法を受けた魔物たちが倒れている。数十体いたであろう魔物の群れは、動いているのはもはや10体程度。
 地下に爆風は届いていなかったみたいだけど、こっちの先制の魔法ですでに多くが倒れている。

 生き残りには食人鬼サイズの魔物もいるが、魔力の反応の高い魔物は見られない。
 すでに倒れたか、この場にはいないのだろう。
 前哨戦で戦った砦には下級悪魔がいたと言うが、この場にはいない。
 もしかしたら上の建物ごと吹き飛ばされたのだろうか。
 ゲームだったら、強敵やラスボス不在のゲームバランスを嘆くところだけど、危険が少ないに越したことはない。

 などと頭の片隅で思いつつ、とりあえず残っている魔物を斬り倒していく。集団で襲ってくるが、敵より早い動きで1体また1体と斬り倒す。
 クロとスミレさんも同様で、オレほどのパワーはないが無駄なのない正確無比な動きで、敵を次々に斬り伏せていく。

 そこに一歩遅れてボクっ娘が援護の弓を、主にオレたちから距離の遠い敵に投射していく。
 第一列とはいえ魔法を使ってくる魔物がいたので、こういう攻撃はありがたい。

 また、大量の魔石があるとはいえ、シズさんやハルカさんの魔力を温存できるに越したことはない。
 何しろ、すでに何度も派手な魔法を使っているので、昨日新たに手に入れた龍石と外での戦闘で手に入れた大量の魔石があるからと言って、残りの敵の数が分からない以上、魔法のバーゲンセールをするわけにはいかない。
 加えて言えば、ハルカさんが接近戦に参加するまでもなく、残りの魔物も一掃できた。

「これで終わりか?」

「うん、それフラグ」

「だが、強い反応は見当たらないな」

「そんな事より、スミレさん、あのオタク博士はどっち?」

「あちらです。水平方向」

 ロリッ娘猫耳メイドが指差す先は、ホールのような廊下から伸びる廊下の突き当たりにある扉だ。

「2人並ぶのが精一杯ね。クロ、スミレさん前衛頼める? 次はショウと私、レナはシズを守って」

「ラジャ」

「あと、防御魔法をかけ直すわ」

「私も耐火魔法を使っておこう」

「それと全員に明かりね」

「あとは、これだ」

 シズさんがそう言うと、進行方向の廊下に明かりの塊を投射する。
 そうすると、光の塊が通過した場所が次々に照らされ、一番奥と思われる場所で浮かんだ状態で止まる。
 とりあえず、進路上に敵も障害物も無い。

 この光の塊を進行方向に投げかけるのが、この世界での暗いダンジョン探索の基本行動の一つだそうだ。
 そして何もなくても慎重に進む。

 なお、一部のゲームや物語のように、建物に罠を探したりはしない。
 ハリウッド映画やピラミッドの盗賊避けじゃあるまいし、かつて自分達の住んでいた場所に罠を仕掛けるなど普通はありえない。

 仮に当時罠が仕掛けられたとしても、それが長い年月維持されている事は凄く稀だ。
 魔物が新たに設置する可能性を指摘する者もいるそうだけど、単純な罠以外に実例もない。

 この世界には様々な時代の古代遺跡も沢山あるが、手作業で解除できる罠を仕掛ける遺跡はほとんどなかったそうだ。
 だからこの世界では、探検や冒険で罠を探索、解除する盗賊っぽい職業はあまり流行らない。
 少なくとも『ダブル』には、ほとんどいない。そういう技能も使える者が多少居る程度だ。
 そして罠も何もなく、目的地前へと到着した。

「ボス部屋だよね」

「扉はどうする? 蹴破るか?」

「我らが開きましょうか?」

「その前に魔法で調べよう。あと、スミレさんは奴の正確な位置を示してくれ」

 言うなりシズさんが魔法の構築を始める。

「はい、この方向。距離11メート40センチ。生存しています」

「部屋は10メートル程度の奥行きがあるのか」

「私は魔法準備するわ。それで開いて、敵を認めたら速攻で片付けましょ」

「じゃ、ボクも前だね」

「私も魔法を放つ時には加わろう」

「オレは強そうなのがいたら、そいつに牽制しに飛び込む。クロとスミレさんは、博士の保護を優先してくれ」

「「畏まりました」」

 と、そこで、シズさんが探知魔法を使い終える。

「妨害魔法はないし、魔力を抑えている奴もいない。下級悪魔程度の反応が一つ、それ以下が10ほどある。部屋の奥に固まっている。だが、慎重を期してもう少し調べるから少し待ってくれ」

「博士を人質にして、こっちを動けないようにする積りでしょうね」

「なんだかもう、オレ達が悪役状態ですね」

 思わず本音が出たが、みんなも同意のようだ。

「これだけ一方的に蹂躙すればねー」

「そもそも、攫われたレイ博士が攻めてた側だし、向こうから見れば魔物の方が被害者でしょうね」

「けど、容赦しないんだ」

「魔物だもの。神殿としては当然だし、生き物ですらないんだから、人とはどうやっても相容れないわ」

 シズさんの魔法の探知を待っている間に少し雑談となったが、ハルカさんの言葉は魔物とは一体何なのかと少し考えさせられなくもない。
 しかし考えている暇は与えられなかった。

「敵は大した事ない。魔法はそこまで強くなくていいぞ。それにあと、部屋の中に大きな構造物もないな。多分だが、机か家具を倒して盾かバリケードにしている」

「じゃあ二人で魔法の矢で十分かしら」

「ボクは一応ピンポイント狙いで、後追いで撃つね」

 シズさんがその言葉に頷く。

「それでいいと思う。誤射も避けられるしな。私の閃光の魔法の後、すぐに攻撃してくれ」

「それじゃあ躊躇せず行きますか。開けてくれ」

「「はっ」」

 その言葉で石の扉が2体の人型魔導器によって押し開けられ、最初に「閃光」の魔法の強い明かりが投射されて部屋を強く照らし出す。
 そして閃光の明かりを避けつつ中を確認した次の瞬間、すぐさま無数の魔法の矢と魔法を乗せた弓矢が放たれる。
 魔物が喋れたとしても、何も言わせる暇も与えない速攻だ。

 しかも魔物の半数以上は、突然の強い明かりに視界をやられて、ほとんど身動きが取れない。
 二人合わせて14本の魔法の矢は、魔物だけを追尾して次々に居抜いた。
 ていうか、ほぼ同時に二つの魔法を使えるシズさんの凄さを、こんなところでも認識させられる一瞬だ。

 ボクっ娘の矢は言葉通り後追いとなったが、狙い違わず一番魔力の高そうな、まともな装備を持った魔物の心臓辺りを盾にしていた机ごと射抜いて、大きな風穴を空ける。

 オレとキューブな二人が、その後に部屋に飛び込むも、もはやすべての魔物が倒されていた。
 下級悪魔らしい装備の整った人型の魔物も、ボクっ娘の一撃の他に余った形の魔法の矢が殺到して、息絶えていた。

 ただし、そうでなければ人質を取られた形で、攻めあぐねていたかもしれない。
 その倒れた魔物のすぐ側に、痩せた男性が一人残されたからだ。
 何かの植物のツタで、グルグル巻きにされた姿で。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

処理中です...