チート願望者は異世界召還の夢を見るか?

扶桑かつみ

文字の大きさ
223 / 528
第三部

223「異世界召喚者?(2)」

しおりを挟む
「こっちの体で他に異常がないとなると、向こうの世界との接続か遮断が正しく出来ていないというのが、無難なところだろうな」

「向こう、現実世界に幽霊なり残留思念的なものが残っていると考えるのなら違うと思うぞ」

「なぜそう言い切れる、シズ君」

 自分の仮説が否定されたからだろうか、博士はかなり言葉が強い。
 それにさっきから完全な真面目モードだ。

「次に話すつもりだったが、私は一度こちらで死んで、その後マジックアイテムの影響で亡者のような状態になっているが、意識が二つの世界を行き来するのは生前と同じ、という状況に一度陥ったんだ」

「マジか!! おおっ、マジなのか! 1日に2回もこんな驚きに出会うとはな。が、シズ君の疑問はもう一つあるぞ」

 目を見開いて、メチャ驚いている。
 しかし、すぐにも冷静になった。この辺りは博士っぽい。

「獣人のことは後で話すよ。それより、まずはハルカのことだ」

「おお、そうだった。しかし向こうに何か思念なり思考が残っているという仮説はダメのようだな」

「振り出し、分からずじまいですか」

 何か判るかもと思ったが、そう簡単ではなかった。

「うむ。しかし、吾輩とハルカ君の状態は違う。これは事実だ。ハルカ君には何かあるという考えで、これから行動するべきだろうな」

「そうですね。予想外に有益なお話を聞けて、ありがとうございます」

「いや、何もしてないだろ。それに吾輩臆病者だから、何もできんだろうしなあ」

 意外にちゃんとした人のようだ。
 というか、40才を超えているというのなら、これくらいの対応が普通なのだろう。

「そんな事ないでしょう。本当に臆病なら大学に篭っていると思いますよ」

「そうか? あーそうそう、大学は行かん方がいいと思うぞ。下らん事か妙な事しかしとらんからな。行くなら、本当に優秀な連中の個人研究所か工房に行く事をお勧めする。紹介状なり、付き添いならしても良いぞ。
 もう少し、本来予定していた話を聞ければ、だがな」

「話すよ。ハルカの件はこちらとしてもイレギュラーだ。
 で、こっちが交換条件に教えるのは3点だ。そこの執事姿の黒いキューブの魔導器、この深い空色の魔導器、そして私自身の今の形(なり)だな。で、黒いキューブと私の体は話が一つだ」

「詳しく聞こうか」

 続いて、興味津々のレイ博士の視線を受けつつ、かいつまんだことの経緯をシズさんが話して聞かせた。
 その上で、深い空色のキューブのこともごく簡単に話した。


「なるほどなあ。まあキューブの件は、スミレの事もあるからこっちでも改めて調べてみよう。で、こっちはスミレの件でいいのか?」

「他に聞きたいことはない。というより、レイ博士が私達と同じような魔導器を持っているとは、全く予想していなかった。で、キューブは他にもあるのか?」

「さあ、隠し持っている奴はいるかもしらんが、聞いた事はない。吾輩については、スミレを300年ほど昔の遺跡で偶然見つけただけだからな。似たようなものが他にあったというだけで、十分以上に驚きだ」

 その言葉とともに、博士の後ろに控えていたスミレさんが肯定の会釈をする。
 二人の空気感は良好に見える。

「どんな遺跡だ?」

「切り開いた魔の大樹海にあった都市跡。場所は秘密だ」

「魔導器や金目のものに興味ないよ。それより、スミレは何か他の用途で使われていたりしたのか?」

「いいや、厳重に封された密室にあっただけだ。吾輩が入ったら、突然光ったかと思うと人型になって全裸で抱きついてきたから、もう吾輩の人生いきなりクライマックスって感じだったな」

 言葉の半ばからが、めっちゃ嬉しそうだ。
 けど、そういう劇的な出会いもあるのだと思うと、ちょっと感慨深く感じてしまう。

「ふむ、藍色の方は道具として使われていたから、既に誰かが見つけて別目的で使っている可能性もあると思ったが。クロやスミレさんのように、人知れずという場合がやはり多いのかもな」

「かもしれん。で、そのキューブを探して回るのか?」

「いいや。今の所欲しい知識を持っている可能性は低そうだから、あえて必要はないだろう。ただ、キューブのある場所にはこの世界の核心に触れる知識や手がかりがある可能性は他より高いだろうから、一つの目標や指針といった所だな」

 シズさんの口から、今後の方針が出た。
 こういう会話だと特に饒舌になるシズさんに、博士も相槌を打つという流れだったが、それもそろそろ終わりっぽい。

「それで、スミレは人型になる以外に何ができる?」

 そう、本来聞きたかったのは、そういうところだ。
 何が出来るのかで、この世界の事が少しでも分かるかもしれない。

「錬金術のように物品を作り出す。あれの持っている武器も、自分で作り出したものだ。ゴーレム作りも手伝ってもらっているのだが、非常に助かっている」

「彼女の骨格もか?」

「あれは吾輩が作った。未来からマッパでやって来るマッチョなサイボーグみたいだろ」

「確かにあれは、こっちの美的感覚じゃないな。で、物品は何でも作れるのか?」

「材料や素材は必要だし、作れるのは『ダブル』の初期装備程度の魔法武器か魔法発動用の魔導器くらいまでだな。それに、無から有を生み出せるわけじゃない。マジックアイテムを作るには時間も相応にかかるし、魔力もかなり使う。そっちのクロは?」

「この体を作る時は、魔力を使い切って短期間の休眠に入ったな。この体の素材は、周辺にあった有機物などから集めたのではないかと思う」

「今、体を作れるのか?」

「どうだ、クロ?」

 シズさんは博士と二人だけの会話を続けていたが、言葉と共にオレの後ろに立っているクロへと視線を向ける。

「『客人』の皆様のお体をご用意出来るだけの魔力は蓄積できましたが、この場に該当される方がいらっしゃいません」

「ボクとしては、ボクの体をもう一人の天沢さんと別に欲しいんだけど。無理かな?」

 ボクっ娘が冗談っぽく茶化しているが、意外に真剣なのが瞳に出ていた。

「以前と違い一人の『客人』の魂と認識し辛くなっておりますが、我が力では一人を二人に認識する事は不可能です」

「いいよいいよ。聞いてみただけだから。でも、クロがそう言うって事は、やっぱり別れ始めてるのかな?」

 ボクっ娘が手をヒラヒラと左右にした後、腕組みをする。

「その方がいいのか?」

「どうだろう。でもさ、その時はショウも付き合いで二人に別れてね」

「何の付き合いだよ。それにオレ、最初から一人分しか人格ないだろ」

 ちょっと空気が軽くなったのでホッとしたが、ボクっ娘の本心だっただろう。
 ただ、何も知らない博士は何かの戯言とでも思っているのか、スルーしている。
 それに雑談に入りつつあるので、これでお互い知りたいことや知るべきことの情報交換は終わったという雰囲気になっていた。

「話はこんなところかしら? それでみんなはこれからどうする?」

「吾輩はノヴァの研究所に行くついでに、冒険者ギルドと評議会に報告に行かないとな。
 あとは、来たついでにノヴァにあるゴーレム工房を覗くくらいだから、明日でよければシズ君が大学なり誰か著名人の元に行くのなら、紹介のためにつき添おう」

「助かる。しかし、レイ博士自身として、私達のキューブの事を調べないのか?」

「それを吾輩に預けるというならしたいところだが、シズ君らのもんだろ。他人のもんを横取りはできんよ」

「いい人だね。じゃボクは、空軍の方に顔出してくるよ。来いってうるさいし」

「有名人だな」

「有名じゃないよ。ただボクも、一応ここの空軍の予備役だから、たまに寄った時は大抵同じように訓練しろってうるさいんだ」

「昨日の戦闘について聞かれたりするのか?」

「あー、大量に魔物倒した記録はオートログされてるから、ヤバイかもなあ。グリフォンは、空飛ぶ魔物の中でもドラゴンの次に強いって事になってるからね」

「そう言えば、魔物鎮定の報告はどうするんですかレイ博士」

 そこで少し真剣になっている。
 犠牲者も出ているし、役所や政府、冒険者ギルドに何かしら必要だろう。もしかしなくても、オレ達がした戦闘も。

 そうして全員がどうするかと考えていると、階下から来客の鐘の音が鳴り響いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸
ファンタジー
天上魔界「イイルクオン」 世界は大きく分けて二つの勢力が存在する。 ”人類”と”魔族” 生存圏を争って日夜争いを続けている。 しかしそんな中、戦争に背を向け、ただひたすらに宝を追い求める男がいた。 トレジャーハンターその名はラルフ。 夢とロマンを求め、日夜、洞窟や遺跡に潜る。 そこで出会った未知との遭遇はラルフの人生の大きな転換期となり世界が動く 欺瞞、裏切り、秩序の崩壊、 世界の均衡が崩れた時、終焉を迎える。

最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日 冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる 強いスキルを望むケインであったが、 スキル適性値はG オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物 友人からも家族からも馬鹿にされ、 尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン そんなある日、 『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。 その効果とは、 同じスキルを2つ以上持つ事ができ、 同系統の効果のスキルは効果が重複するという 恐ろしい物であった。 このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。      HOTランキング 1位!(2023年2月21日) ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

処理中です...