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第三部
224「『ダブル』のお偉いさん(1)」
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「誰かしら。まだ戻ったこと、どこにも伝えてないのに」
そう言いつつ、ハルカさんが怪訝な表情を浮かべて立ち上がる。
そこに「お待ちください。わたくしが」とクロが、ハルカさんを制する。
さらに、「クロでは、誰が来られたか分からない筈です。ここは、街の主要人物の大半を記憶しているわたくしが」と今度はスミレさんがクロを制し、そしていそいそと階下へと向かう。
1階は、玄関と玄関ホール、使用人用の部屋、厨房、風呂、水洗トイレがある。
さらに地階もあって、倉庫やシェルターになっている。出入りの多い『ダブル』が住むノヴァの少し大きい住宅だと、これが普通らしい。
この家自体は10人ほどが住めるので、構造も相まって住宅というより下宿用のアパートなどが近い。
「飛行場にボクたちが来た話が、どっかに伝わったんじゃない?」
「やっぱレナは有名人なのか?」
「シュツルム・リッター自体が数えるほどしかいないし、ヴァイスは他の子と色も違うからね」
「飛行場にいた空軍の皆様が、各所にお伝えしたのではないでしょうか」
クロの意見が一番無難、というかそれしかないだろう。
「それにハーケンでの話も、空の早便だと伝わっているんじゃないか?」
「その辺でしょうね。となると、神殿、評議会、軍、ギルドのどれかしら? 全部とかだったら最悪」
などと話していると、スミレさんが再び上がってきた。
「ハルカ様、それに元主人様も、評議会議員のジン様がお越しです」
「お通しして。いいですね?」
ハルカさんがスミレさんへの返答の後、その元主人に有無を言わせぬ口調で了解を取る。
丁寧語だけど、もはや雰囲気が慇懃無礼に入っている。
「う、うむ。だが吾輩、あの御仁は苦手だ」
「私もだけど、入れないわけにはいかないでしょう」
「そ、そうだがな」
博士の言葉にハルカさんが同意したが、こっちが長いシズさんは涼しい顔のままだ。とりあえず、以前のシズさんと面識のある人は評議会議員にはないのだろう。
そう言っている間に扉が開けられる音がして、「失礼するよ」という涼しげなよく通る声が響いてきた。声からしてイケメンだ。
その声を聞いてハルカさんが立ち上がり、部屋の前まで移動して客人を出迎える。
客人は一人ではなく二人。美男美女で、一見上司と部下もしくは秘書に見えなくもない。
「態々(わざわざ)のご来訪、誠に恐縮ですジン議員、それにリン様」
「何の、これもお勤め。そんな事よりルカ殿、ノヴァに戻るのなら一報をくれても良かったのではないかな」
「お久しぶりです、ルカ様」
「今日、報告も兼ねてお伺いするつもりでした。昨日は色々ありましたので、余裕がございませんでした」
「何、咎める気はないよ。ただ単に、私がルカ殿に早く会いたかっただけだからね。ところで、どなたか『ダブル』以外の方がいるのかな?」
ジン議員と呼ばれた男性が、全員を軽く一瞥する。
全身から切れ者で頭良さそうな雰囲気をビシバシ発散させている。雰囲気から想像すると、あっちではもう社会人なイメージがする。
「いいえ。ただ、このような時の振る舞いは習慣付けておかないと、いざという時に醜態を晒すことになりますので」
「確かにそうだね。でも、そろそろ良いだろう」
「そうね。じゃあ、適当に座って」
ハルカさんの砕けた態度と言葉で、二人の雰囲気と態度も少し緩んだ。
「ああ。それじゃお言葉に甘えさせてもらうよ」
「ご無沙汰ね、ハルカ」
「うん。久しぶりリン」
男の方はキザな挨拶をしつつ優雅な仕草で歩き、そしてソファーへとこれまた洗練された仕草で腰掛ける。
身長180オーバーの細身の長身。体のバランスは良く、動きが洗練されているせいか、大柄という印象はあまり受けない。男性誌のモデルでもしたら似合いそうだ。
顔立ちは、アクセルさんほどじゃないが十分以上にイケメン。
目元涼しげな貴公子だけど、栗毛を今風のふわふわした髪型にしているのが逆にちょっと似合ってない。
知的な印象が強く、着ているこの世界での役人風の上等な衣装も十分に着こなしている。それでも腰には、長剣と短剣を差していた。
身のこなしから戦士職なのだろうが、騎士や貴族と言われる方が納得出来る風格を持っている。
女性の方は一見すると彼のお付きのように見えるが、ハルカさんの本来の名前を口にした事からも親しい関係なのは分かる。
銀髪という『ダブル』どころかこの世界でも珍しい髪の持ち主で、淡い蒼の瞳と合わせてクールな印象を放っている。
元が黒髪黒目でこの色になるのだとしたら、チョット前に話した妖人(エルフ)になりかけている人なのだろう。
容貌は、可愛いより美人というのが相応しく、こちらも男と同じビジネススーツに少し似た役人風の衣装を身につけているが、妙に似合っていた。
そしてクロが二人分のお茶を新たに出し、それを一口つける。
湯飲みのも持ち方に違和感がないので、それで中身が日本人なのだと自然に察しがつく。
「それにしても、久しぶりだねルカ君。あとはレイ博士とスミレ君。他の方々には、お初にお目にかかる」
「獣人の娘は、全然気にしなくていいわよ。私と主従契約を結んでるくらいだから」
「分かった。気楽に話させていただくよ」
「紹介してもらえる、ハルカ?」
ハルカさんの言葉を聞いて、ようやく二人は完全にリラックスというか砕けた感じになった。
『ダブル』に獣人がいるわけないので、これは仕方ないだろう。
「ええ。彼は評議会議員のジン。こっちが冒険者ギルドで委員をしてるリン。どっちもノヴァの重鎮の一人よ。あとリンは私の友人なんだけど、いつからジン議員に付いてるの?」
「そういう訳じゃないのよ。飛行場に大勢乗せた疾風の騎士が来たって少し話題になっていて、誰か話を聞いてこいって事になったから、ジン議員が訪問するっていうのに便乗したの。
ギルドも神殿も、ハルカが居たって情報知らないし、何か知っているのは評議会と市民軍の一部だけだったから」
「私としても、女性の家を訪問するのにリン君が一緒の方が都合がいいので、同行してもらったのさ。それで、そちらの方々は?」
視線を受けて、ようやくこっちのターンだ。そして受けた視線と席順から俺が一番最初のようだ。
「オレはショウ。ハルカさんに従ってます」
「従者契約の話も届いているが、事実なのかな」
どこかで話しただろうかと思ったが、『ダブル』もいる場で儀式をしているので、その話が伝わっているのだろう。ハルカさんが重要人物だから、自警団の人とかなら、その辺は連絡してそうだし。
「このお人好しは、私と二回目の契約までしてるわ」
「そりゃすごい。『ダブル』だと今はいないんじゃないか?」
「昔は結構いた筈だけど、最近は珍しいわね」
「そうだな。長期の戦争でもないと不要だろうからな」
二人の訪問者がそれぞれ少し驚いている。
けど、オレ自身が気にしていないので、気にする必要性はないだろう。
「私はルカ様から、シズという名をもらった。諸々に付いては詮索しないでもらえると助かる」
「素性に関しては我々も似たようなものだ。それにしても5本の尾を持つとは素晴らしい」
二人とも話し方を弁えている。というより、場慣れしているのだろう。
オレじゃあ、まず無理な態度だ。
そんな完全にこっちの人の雰囲気なシズさんが、自分の尻尾をゆっくり柔らかに撫でる。
「手入れが存外面倒だがな」
「確かに大変そうだね。それで、実力も相応と思っていいのだろうか?」
「私は恩義のあるルカ様の為以外に、力を使うつもりはない。詮索されても答えられないし、期待や願望に応えるつもりもないよ」
「それは残念。ところで、そこの執事服の君も『ダブル』でいいのかな?」
あ、何か気づいている。そういう視線と言葉をあえて伝えている。
けど、オレが何かを言う前に博士が口を開いた。
「あ、ああ、彼、いやこの個体は、スミレと同様に吾輩の最高傑作の一つなのだ」
「つまり、人型ゴーレムだと?」
「その通り。ハルカ君が長旅をするというので、貸すことにしたんだ。な、そうだな」
「左様にございます。クロと申します。以後お見知り置きを」
クロは空気読んで、全く疑われない仕草と口調で嘘を押し通す。二人の来客も、少なくとも表面上疑いを持っていないようだ。
そう言いつつ、ハルカさんが怪訝な表情を浮かべて立ち上がる。
そこに「お待ちください。わたくしが」とクロが、ハルカさんを制する。
さらに、「クロでは、誰が来られたか分からない筈です。ここは、街の主要人物の大半を記憶しているわたくしが」と今度はスミレさんがクロを制し、そしていそいそと階下へと向かう。
1階は、玄関と玄関ホール、使用人用の部屋、厨房、風呂、水洗トイレがある。
さらに地階もあって、倉庫やシェルターになっている。出入りの多い『ダブル』が住むノヴァの少し大きい住宅だと、これが普通らしい。
この家自体は10人ほどが住めるので、構造も相まって住宅というより下宿用のアパートなどが近い。
「飛行場にボクたちが来た話が、どっかに伝わったんじゃない?」
「やっぱレナは有名人なのか?」
「シュツルム・リッター自体が数えるほどしかいないし、ヴァイスは他の子と色も違うからね」
「飛行場にいた空軍の皆様が、各所にお伝えしたのではないでしょうか」
クロの意見が一番無難、というかそれしかないだろう。
「それにハーケンでの話も、空の早便だと伝わっているんじゃないか?」
「その辺でしょうね。となると、神殿、評議会、軍、ギルドのどれかしら? 全部とかだったら最悪」
などと話していると、スミレさんが再び上がってきた。
「ハルカ様、それに元主人様も、評議会議員のジン様がお越しです」
「お通しして。いいですね?」
ハルカさんがスミレさんへの返答の後、その元主人に有無を言わせぬ口調で了解を取る。
丁寧語だけど、もはや雰囲気が慇懃無礼に入っている。
「う、うむ。だが吾輩、あの御仁は苦手だ」
「私もだけど、入れないわけにはいかないでしょう」
「そ、そうだがな」
博士の言葉にハルカさんが同意したが、こっちが長いシズさんは涼しい顔のままだ。とりあえず、以前のシズさんと面識のある人は評議会議員にはないのだろう。
そう言っている間に扉が開けられる音がして、「失礼するよ」という涼しげなよく通る声が響いてきた。声からしてイケメンだ。
その声を聞いてハルカさんが立ち上がり、部屋の前まで移動して客人を出迎える。
客人は一人ではなく二人。美男美女で、一見上司と部下もしくは秘書に見えなくもない。
「態々(わざわざ)のご来訪、誠に恐縮ですジン議員、それにリン様」
「何の、これもお勤め。そんな事よりルカ殿、ノヴァに戻るのなら一報をくれても良かったのではないかな」
「お久しぶりです、ルカ様」
「今日、報告も兼ねてお伺いするつもりでした。昨日は色々ありましたので、余裕がございませんでした」
「何、咎める気はないよ。ただ単に、私がルカ殿に早く会いたかっただけだからね。ところで、どなたか『ダブル』以外の方がいるのかな?」
ジン議員と呼ばれた男性が、全員を軽く一瞥する。
全身から切れ者で頭良さそうな雰囲気をビシバシ発散させている。雰囲気から想像すると、あっちではもう社会人なイメージがする。
「いいえ。ただ、このような時の振る舞いは習慣付けておかないと、いざという時に醜態を晒すことになりますので」
「確かにそうだね。でも、そろそろ良いだろう」
「そうね。じゃあ、適当に座って」
ハルカさんの砕けた態度と言葉で、二人の雰囲気と態度も少し緩んだ。
「ああ。それじゃお言葉に甘えさせてもらうよ」
「ご無沙汰ね、ハルカ」
「うん。久しぶりリン」
男の方はキザな挨拶をしつつ優雅な仕草で歩き、そしてソファーへとこれまた洗練された仕草で腰掛ける。
身長180オーバーの細身の長身。体のバランスは良く、動きが洗練されているせいか、大柄という印象はあまり受けない。男性誌のモデルでもしたら似合いそうだ。
顔立ちは、アクセルさんほどじゃないが十分以上にイケメン。
目元涼しげな貴公子だけど、栗毛を今風のふわふわした髪型にしているのが逆にちょっと似合ってない。
知的な印象が強く、着ているこの世界での役人風の上等な衣装も十分に着こなしている。それでも腰には、長剣と短剣を差していた。
身のこなしから戦士職なのだろうが、騎士や貴族と言われる方が納得出来る風格を持っている。
女性の方は一見すると彼のお付きのように見えるが、ハルカさんの本来の名前を口にした事からも親しい関係なのは分かる。
銀髪という『ダブル』どころかこの世界でも珍しい髪の持ち主で、淡い蒼の瞳と合わせてクールな印象を放っている。
元が黒髪黒目でこの色になるのだとしたら、チョット前に話した妖人(エルフ)になりかけている人なのだろう。
容貌は、可愛いより美人というのが相応しく、こちらも男と同じビジネススーツに少し似た役人風の衣装を身につけているが、妙に似合っていた。
そしてクロが二人分のお茶を新たに出し、それを一口つける。
湯飲みのも持ち方に違和感がないので、それで中身が日本人なのだと自然に察しがつく。
「それにしても、久しぶりだねルカ君。あとはレイ博士とスミレ君。他の方々には、お初にお目にかかる」
「獣人の娘は、全然気にしなくていいわよ。私と主従契約を結んでるくらいだから」
「分かった。気楽に話させていただくよ」
「紹介してもらえる、ハルカ?」
ハルカさんの言葉を聞いて、ようやく二人は完全にリラックスというか砕けた感じになった。
『ダブル』に獣人がいるわけないので、これは仕方ないだろう。
「ええ。彼は評議会議員のジン。こっちが冒険者ギルドで委員をしてるリン。どっちもノヴァの重鎮の一人よ。あとリンは私の友人なんだけど、いつからジン議員に付いてるの?」
「そういう訳じゃないのよ。飛行場に大勢乗せた疾風の騎士が来たって少し話題になっていて、誰か話を聞いてこいって事になったから、ジン議員が訪問するっていうのに便乗したの。
ギルドも神殿も、ハルカが居たって情報知らないし、何か知っているのは評議会と市民軍の一部だけだったから」
「私としても、女性の家を訪問するのにリン君が一緒の方が都合がいいので、同行してもらったのさ。それで、そちらの方々は?」
視線を受けて、ようやくこっちのターンだ。そして受けた視線と席順から俺が一番最初のようだ。
「オレはショウ。ハルカさんに従ってます」
「従者契約の話も届いているが、事実なのかな」
どこかで話しただろうかと思ったが、『ダブル』もいる場で儀式をしているので、その話が伝わっているのだろう。ハルカさんが重要人物だから、自警団の人とかなら、その辺は連絡してそうだし。
「このお人好しは、私と二回目の契約までしてるわ」
「そりゃすごい。『ダブル』だと今はいないんじゃないか?」
「昔は結構いた筈だけど、最近は珍しいわね」
「そうだな。長期の戦争でもないと不要だろうからな」
二人の訪問者がそれぞれ少し驚いている。
けど、オレ自身が気にしていないので、気にする必要性はないだろう。
「私はルカ様から、シズという名をもらった。諸々に付いては詮索しないでもらえると助かる」
「素性に関しては我々も似たようなものだ。それにしても5本の尾を持つとは素晴らしい」
二人とも話し方を弁えている。というより、場慣れしているのだろう。
オレじゃあ、まず無理な態度だ。
そんな完全にこっちの人の雰囲気なシズさんが、自分の尻尾をゆっくり柔らかに撫でる。
「手入れが存外面倒だがな」
「確かに大変そうだね。それで、実力も相応と思っていいのだろうか?」
「私は恩義のあるルカ様の為以外に、力を使うつもりはない。詮索されても答えられないし、期待や願望に応えるつもりもないよ」
「それは残念。ところで、そこの執事服の君も『ダブル』でいいのかな?」
あ、何か気づいている。そういう視線と言葉をあえて伝えている。
けど、オレが何かを言う前に博士が口を開いた。
「あ、ああ、彼、いやこの個体は、スミレと同様に吾輩の最高傑作の一つなのだ」
「つまり、人型ゴーレムだと?」
「その通り。ハルカ君が長旅をするというので、貸すことにしたんだ。な、そうだな」
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