チート願望者は異世界召還の夢を見るか?

扶桑かつみ

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第五部 『帝国』編

462 「3人の夜」

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 そして長い一日の就寝前。

「まあ、こうなるわよね」

 早めに休もうと言う事でみんな各部屋に別れた後、船長室でハルカさんが軽く溜息状態となった。
 部屋割り的にも、すでに全室埋まっているので、選択肢はここしかない。オレが今まで使っていたのは食料庫とされた部屋であって、ハルカさんが起きたのなら家臣の皆様の手前、そのままと言うわけにはいかない。
 それに、だ。

「ハルカさんは、眠ってる間もここで寝てたから、気にせず使ってくれ」

「えっ? じゃあ何、ショウがずっと添い寝してたとか?」

 自分の体を両腕で抱いて、嫌そうな仕草を見せる。表情もあからさまにキモオタを見る嫌悪の目だ。
 冗談なのは分かっている、分かってはいるけど、ちょっと凹みそうになる。
 けど今のオレは、ここで凹だりはしない。

「交代で看病してて、オレは食堂の隣で寝てた。それにオレ一応船長だから、艦橋に居る事多かったから、この部屋はだいたいハルカさん以外は女子の誰かがいた事になるかな」

「なんだ。ショウが献身的に看病してくれてたんじゃないんだ」

 今度はガッカリポーズ付きだ。

「彼氏でも、女子しか出来ない世話をするわけにいかないだろ」

「まあ、そうだけど。……ハァ、みんなには当分足を向けて寝れないわね」

「持ちつ持たれつだよ。シズさんも言ってただろ」

「そうだけど、三週間かぁ。取り敢えず、何があったか掻い摘んで話して」

 二人きりで何を話すのかは聞くまでもない。

「じゃあレナも呼ぼうか? しばらく入れ替わってたし」

「さっきもチラッと言ってたわね。じゃあ、ちょっと呼んで来る」

 そう言って彼女が部屋を出ている間に、テーブルメイクと飲み物、軽食を用意する。
 クロ達は、外で24時間警戒をしてもらっているので、船内にはどのキューブもいないから自分でするしかない。


「何? ショウが3Pしたいって聞いたけど」

「一言も言ってないでしょう」

「メンタル的には似たようなもんでしょ。羞恥プレイもいいとこだよ」

 入るなりテンション高いボクっ娘が、ハルカさんにボヤく。そのぼやきは、かなりマジだ。
 けどそれも一瞬で、大きく伸びをすると簡易ベッドにもなる長椅子へダイブ。
 ハルカさんもその横に座る。
 オレはその間ではなく、対面だ。

「まあ、今日はなるべく早く寝た方が良いだろうから、すぐ終わらせようね」

「主語がないと少しエロいな。で、なんで急ぐんだ。魔物が夜襲して来るのか?」

「魔物は夜が本番だし、夜だと空の戦力は役立たずだから、向こうが歩き中心の魔物の大群だったら、普通は夜に攻撃でしょ」

「そうよね。午前3時頃に仕掛けて短期決戦で押しつぶして、明るくなったら空の魔物を呼んで追撃、くらいが魔物側の理想でしょうね」

「まあ、ここに篭ってる限り、入ってこれるのは下級の悪魔以上で、しかも各悪魔の力もガタ落ちになるから、覚悟決めるほどじゃないとは思うけどね」

「そうね。ここなら私達の魔力の回復も早いし、深夜なら十分対応できると思うわ。怖いのは、強制睡眠だけ。だから、すぐ終わらせましょう。始めて」

 二人の冷静な分析で気を削がれたが、とにかく三週間の間にオレと二人のレナの間にあった事を掻い摘んで話す。
 足りない部分はボクっ娘が補ったのもあって話はすぐに終わったので、ハルカさんのお母さんに会ったあたりの話も少しをした。

 ハルカさんがこっちで眠り姫の間、現実だけでも、二つの運動会、入れ替わり、ハルカのお母さんに会った事、中間テスト、テスト結果発表など、オレ的には色々有りすぎた。
 けど、3人もしくは4人に関わる話となると、それほど多くはない。『帝国』からエルブルスへの二人旅と、レナの入れ替わりが話の中心だ。

 そして一通り話すと、ハルカさんが座っていた長椅子の背もたれにグーっと倒れこんで天井を仰ぐ。
 胸が強調されて、なかなかに魅惑的な光景だ。

「そっかー。玲奈は自分の心にケリをつけちゃったのか。なんだか、先に選ばれちゃった気分ね」

「ボクには主導権ないけど、気持ちはちょっと分かる」

「けどさ、もう一人のレナはまた来るって言ってたけど、レナは方法わかるか?」

「全然。もう向こうは見えないし、混ざった感じより別れた感じの方が気持ち的には強いしね。
 まあ、これから神様なり世界なりに会いに行くんだし、そこでついでに頼んでみるよ。前も言ったけど、ボクもたまに向こうに行きたいから。主に物欲面で」

 そう言ってにニカリと笑みを浮かべる。
 それにハルカさんが反応したように、身を起こしてボクっ娘に軽く抱きつく。
 なんだろう。ハルカさんには百合もレズも属性ない筈なのに、今までにない行動だ。

「そうしてもらえる? 私が復活できるとなると、もう一度玲奈とは話さないと。復活だけでも予想外なのに、こんなに早いなんてね。ホント、どうしたらいいのよ」

 愚痴がボロボロとこぼれてくる。
 恐らく、今自分がレナに半ば抱きついているのも無意識に違いない。
 けれども抱かれ慣れているボクっ娘は、気にするでもなく目の前のハルカさんに首を向けて視線を合わせる。
 こうなると、間近で見つめ合う感じになる。しかも、すぐにもキスしそう間合いだ。

「ちなみに、もし元気に復活できたとして、ハルカさんは向こうでどうするの? ボクらの場合、簡単に入れ替われるなら、もう一人の天沢さんは気軽に会えてしまう事になるよ」

「そうよね。二人のレナがこっちとあっちで完全分離なら、一度も会わずに済ませれば良いんだけど。ねえ、ショウはどうして欲しい?」

「ハーレム一直線だよね」

「そこで茶化さないで。一応真面目な答え聞きたいのに」

「でも、こんな話 素面(しらふ)で出来る?」

 また見つめ合っている。
 やっぱり意識してないんだろうか。

「やってられないのは分かるけど、一応真面目な言葉の一つは聞きたい」

 その言葉で二人の顔が一緒にこっちに向く。

「だってさ、ショウ。あ、そだ。ボクって本当に第二夫人とか妾とかってアリだと思ってるけど、ハルカさん的にはダメだよね。うん、分かってるんだよ」

「私もレナの想いは、私なりに分かってるつもり。この世界の性や婚姻についてもね。取り敢えず今言えるのは、一番は譲らないって事くらいかしら」

「それは全然。そっちはもう一人の天沢さんと競ってくれたら、ボク的にはむしろ助かるし」

「人の目の前で、なんて話するんだよ。答えたくても答えられないだろ」

 二人の会話に、思わず本音と弱音が出てしまう。流石に二人も小さく苦笑した。
 けど、二人とも無回答を許してはくれないらしい。

「それで?」

「逆に聞くけど、オレが主導権持っていいのか? オレ的には一番ダメな気がするんだけど」

「まあ、それも一理あるよね」

「だろ。そもそも、ハルカさんともう一人の天沢さんが最初に決めた事だし。オレが今言えるとしたら、精々願望とか要望くらいしかないぞ」

「それでも聞きたい。状況が変わったんだから、むしろ聞かないといけないと思う」

 ハルカさんの視線はあくまで真剣だ。

「それも一理あるよね」

「レナはどっちなんだよ」

「願望でいいじゃん。ボクだって願望は言ってるし」

「願望でいいなら、みんな仲良く丸く収まるのが一番だよ。今度タカシさんに会えたら、秘訣とか聞いとくかな」

「要するにハーレムエンドが希望? いや、確かに今のは願望か。ショウの頭の中は、いつもエロエロだね」

 オレの言葉にハルカさんは苦笑気味だったけど、ボクっ娘は言葉だけ冗談めかしつつも追撃してきた。
 逃げちゃダメらしい。

(まあ、誤魔化す場面でもないよな)

 そう思い直し、初志貫徹の言葉をもう一度ぶつけるべきだと感じた。
 だからなるべく真面目な、真摯な気持ちで二人に向き合う。
 
「オレは、向こうでもハルカさんと会いたい。この気持ちは今も変わってない。後のことは、その時のオレに考えさせる」

「私も会いたい」

 すぐにハルカさんからも言葉が返ってきた。
 ボクっ娘の方は、二人を交互に見つめると、小さくため息をつく。しかも、わざとらしく。

「ハァ。やっぱり二人とも一途だよね。いや、まあ、分かってたけどね。もう一人の天沢さんも、分かってると思うよ」

「それでも、って気持ちも強いわよね。両方のレナは」

 ハルカさんはそう言うと、今度は自分の意思でボクっ娘を抱きしめる。
 あの間は、さぞかし幸せな空間な事だろう。

 けど二人の視線が、オレの現実逃避な願望を表面化させた表情を伺い、そしてニコリと悪巧みでも思いついたような笑みを二人同時に浮かべる。

「まあ、今日はそこのエロガキの願望を少しだけ叶えてあげましょうか。さあ、一緒に寝ましょう」

「でも、エロい事は禁止だからね。特にボクには」

「レナは律儀というか義理堅いわよね」

 そう言いつつ、ハルカさんがレナの顔を覗き込む。
 本当にさっきから、今にもキスしそうな間合いだ。

「せめて、もう一人の天沢さんには義理を立てないとね。じゃあ、毛布と枕とってくるね。エロい事はその間にしておいて」

 それだけ言うと、ハルカさんの手を振りほどいて元気に椅子から立ち上がり、そのまま部屋を後にする。
 飛行船内は狭いので、往復十数メートルの距離。多少ボクっ娘が猶予を見てくれているとは言え、1分どころか30秒あれば良い方だろう。
 そんな一瞬のオレの思考の間に、ハルカさんが立ち上がってオレの目の前へと来る。
 顔も目線も同じ高さだ。

「ああ言ってくれたし、取り敢えずのご褒美」

 そう言って距離がゼロになる。
 そして数秒で離れたが、やられっぱなしはオレの性分ではない。

「じゃあオレも」

 そうして同じように、数秒間最接近して離れる。
 すると彼女が目をパチクリさせる。

「どうしてショウもなの?」

「眠り姫を目覚めさせるキスをしてなかったからな」

「……眠り姫の自覚は、あんまりないのよね」

 そう言って、彼女がまた急接近。
 そこでなんだかやり返すのも面倒に思えたので、そのままハグへと入る。
 何しろ時間がない。
 同時に何してるんだろうとも思わなくもないけど、次に目が覚めたらまた厳しい戦闘の可能性が高いので機会は逃すべきじゃないと思い直す。
 彼女も強めにハグ仕返してきたので、気持ちは同じなのだろう。

 ただ少しお互い熱くなりすぎていたようだ。

「あの~、そろそろ良いかな? それともボクが仲間入りするの待ってたりした?」

 取り繕ったりはしないけど、さすがに二人して苦笑いだ。
 そしてその夜は、船長室にしつらえられているそれなりに大きなダブルベッドで、川の字になって眠りについた。

 もっとも、二人がオレに抱きつく感じになっていたので、団子状と表現するべきかもしれない。
 なんにせよオレにとっては幸せ空間すぎて、眠つくのに苦労したのは言うまでもない。
 けどそれ以上に、明日の事は明日のオレに考えさせようと思わせてくれたので、穏やかに眠れた気がする。
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