チート願望者は異世界召還の夢を見るか?

扶桑かつみ

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第五部 『帝国』編

491 「勝利(1)」

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「行け、『神槍撃』!」

 その言葉と共に、無数の強く輝く槍が、混沌龍に全方位から殺到する。
 どうやらこの魔法は、対象の大きさはあまり関係ないらしい。
 さすが陽帝最強魔法だ。

 そして輝く槍が混沌龍の全身を串刺してそれが消えると、『煉獄』の魔法と『煉獄』に誘われた熱と炎が、混沌龍の中に入っていく。
 なまじ図体がデカイのが仇になった。
 そこにライムとテスタロッサのブレスが、さらに叩きつけられる。今度はどちらも放射ではなく集中なので、混沌龍の体内へと突き刺さった。
 もう痛いと言うレベルじゃないだろう。

 けどそれでも混沌龍は暴れた。
 そしてついに、攻撃の手を振り切って、海に向かって一気に動いた。
 慌てて海方向から攻撃していた騎士や兵士達が退避していく。
 原始的手段だけど、水で火を消そうと考えたのかもしれない。

 けど海の方向には、もしかしたらと考えてオレ達接近戦組が待ち構えている。

「心臓と頭を狙え! そこにキューブがある!」

 遠くからシズさんの声が聞こえる。
 そして格闘戦に入る数秒前に、先ほどより少し遅く感じる速度で疾風の騎士によるソニックバスターが2回叩きつけられる。
 一瞬の間に二発なので、ほとんど同時に思える攻撃だ。
 ボクっ娘と空軍元帥の息は意外にあっている。訓練の賜物なのだろうか。
 そして左右斜め上から叩きつけられた形なので、混沌龍の動きが固定される。

 さらに混沌龍の翼は、もう根元くらいしか残っておらず、翼で飛ぶことは全くできそうにない。
 そして戦闘職でSランク級の身体能力があれば、十分に対応できる動きだ。



「オレが先頭に立ちます」

「そのあとは私が。みんなは私、と言うよりショウを信じてそのまま突っ込んで下さい」

「ブレスはなんとでもします。けど、防いだ後はオレは一歩遅れるかもですので、越えて行って下さい」

「策があるのだな。心得た!」

「分かった。信じます!」

「じゃあ私が頭の核を狙うから、よろしく!」

 そう言っている間に、混沌龍が目の前の障害物となるオレ達へのブレス放射体制に入る。
 この前後が、一番のドラゴンの弱点となる動きだ。
 勿論、ブレスを何とかできればと言う前提が必要なので、普通なら弱点にはならない。
 けど、オレには過去に一度、ほぼ同じ状況を体験済みだ。
 違いは、その時は一人で今は後ろに4人。

 オレが炎を切り裂いて、ハルカさんが防ぎ、その間から3人が躍り出て、ドラゴンの急所を叩くのだ。
 即席で作戦を伝えてすぐに動いたのだけど、動く直前に見送り側のレイ博士が「まるでジェットストリームアタックだな」と言っていたから、似たような攻撃方法は古今東西どこにでもあるらしい。

 そしてこちらのリクエストに応えるかのように、混沌龍が特大のブレスを真っ直ぐ集中的に放射してきた。
 先ほど『帝国』軍の一群を粉砕した攻撃で、攻撃力は飛龍どころか並みの大型龍すら上回っている。

 けどドラゴンの炎には、一つの特徴がある。
 それは魔法と同じく、魔力によって生み出された炎の吐息という事だ。普通の火ではない。
 龍の種類によっては、自然現象を利用した放電だったり音速の衝撃波だったりするけど、こいつが炎なのはすでに見た通りだ。

 そして放射されたドラゴンブレスに対して、オレは剣に魔力相殺の力を目一杯込めて縦一文字に切り裂く。
 愛刀を大きく振り抜く為に立ち止まったけど、立ち止まったのは直後のハルカさんも同じ。
 そしてハルカさんはありったけの防御魔法を自分の前に展開して、オレが切り裂いた炎のブレスをさらに防ぐ。

 これで後ろの3人には、被害が全く及ばない。
 それどころか前が大きく開け、目の前にはブレス放射体制で一種の硬直状態にあるドラゴンの頭がある。
 そしてこの好機を逃す3人ではない。

 右からはマーレス第二殿下が、左からはヒイロさんが、そしてハルカさんの肩を乗り越えたハイジャンプで、正面上方からトモエさんが飛び抜けて行く。
 そして3人それぞれの剣技が、オレとハルカさんの前で炸裂。

(この光景は、一生もんだな)

 そんな事を思いつつ突撃を再開したオレのすぐ横に、ハルカさんが並ぶ。
 そして短く頷き合う。

 すでに首はマーレス殿下が豪快な一振りで半ば切り落とし、丁寧な一撃でヒイロさんが頭部を切り裂き、そしてトモエさんの天才しか出来ない正確無比な一撃で、頭の龍玉が砕かれる。
 しかも同時に「キンっ!」と鋭い音と共に、赤いキューブがドラゴンの頭から弾かれていった。
 一連のキューブの丈夫さを実感させてくれる。

 そしてオレとハルカさんは、そのまま3人の下を駆け抜け、心臓辺りを目指す。
 ほぼ首を失った混沌龍は、すぐにも首元辺りの自己再生が暴走して、スライム化の様相を見せつつある。
 やはり魔物化していたのだ。
 このままでは、スライム化した混沌龍に飲み込まれてしまうだろう。

 けどそこに、今度は横殴りで魔力相殺を目一杯載せた一撃を見舞う。
 すると半ば澱んだ魔力の塊であるスライム状の体が大きく切り裂かれる。
 普通の龍ならこうはいかないけど、澱んだ魔力の塊となっているのなら、魔力相殺で魔力を不活性状態にすれば一瞬で肉体が崩壊から消滅へと向かう。
 そして切り開かれて消滅しつつある胴体の先に、二つの魔力の反応を捉える。

 二つの場所がバラバラなので、一人では二つは狙えそうにない。
 もう一人いれば二つ同時に狙えただろうけど、ハルカさんは躊躇いなく目標の片方、青いキューブへ狙いを定めて剣を振るう。
 それで青いキューブが弾かれ、ドラゴンの体から遠く離れた場所に転がっていった。

 けど、心臓付近にあった大型龍本来の龍石が、命令系統を失ってもなお活動を止めることはなかった。
 しかも魔物と化し暴走したキューブの影響により、ドラゴンではなく魔物のそれとして活動したため、暴走した魔力の塊となって軟体動物のようになる。
 オレ達が言うところのスライム化だ。

 そして巨大なドラゴンの図体のど真ん中に居るオレとハルカさんは、そのままスライムに飲み込まれた。
 半透明ならいいが、どす黒いので視界はゼロ。
 すぐそばのハルカさんの姿も見えない。
 他の3人は飛び退くのが見えたので大丈夫だろうけど、剣で救援は無理だろう。

 全身を覆う澱んだ魔力の塊によって、少しずつ体の魔力が吸い出されている感じがある。
 当然と言うべきか、呼吸もできない。
 服や体が溶ける気配はないのが僅かな救いだ。
 けど、逃げるなら今すぐ逃げるべきだ。
 その手段があれば、であるが。
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