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第五章
第3話 乙女たちの行方
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「聖騎士殿、黒騎士殿。お疲れ様です」
「この町の祭りはいかがですか?」
フランとキアランは行く先々で声をかけられた。砦の城から派遣された巡回の兵士たちや、交代で祭りを覗きに来ている者だ。
たまたまその場に行き会った町の人々は城の重要人物であるらしい騎士たちを見覚え、他の者たちに話し、二人の名はすぐに知れ渡った。若い娘たちが彼らを見て袖を引き合い噂にしたが、本人たちはそんなことに気づきもしなかった。気づいたとしても構っているひまはなかった。
「おい、いたか?」
「いえ、こちらにはいません。あの二人の姿を隠してしまうなんて、祭りの力を甘く見ていましたね」
大地の力が満ちる今宵。
多くの精霊、妖魔、祖霊たちが入り混じる中で魔法を使う訳にもいかない。小さな魔法が引き金になって連鎖を起こし、とんでもない事態を起こしてしまう恐れがある。うんざりするような人混みの中で迷子を探すには、地道に聞き込みをするしかなかった。
猫を抱いた金色の王女と、聖女と同じ若草の瞳の乙女。目立つ取り合わせだ。
目撃者は多かった。
「ああ、王女さまたちのことだね。少し前にあっちで大道芸を見ていたけれど」
「そうそう、芸人とシャボン玉をこしらえて遊んでいたね」
正体もばれていた。
「あたしが見たのは、砂絵描きと一緒に石畳に座り込んで、何か描いているところだったよ。ああ、ほらまだ残っている。あれは猫、なのかねえ」
どうやらシャトンとおぼしき地面にうねる白い砂の模様を見て、フランは久々に頭から湯気の出る思いを味わった。
「子どもか、あいつらは!」
あちこち駆けずり回ったせいで、ちょっと怒鳴っただけで息が切れる。ついでに堪忍袋の緒も切れそうだ。
「小さいころに、そういう遊びをしたことがなかったのでしょうね」
キアランがしんみりと呟く。こちらは肉体の疲れなどとは無縁だ。
「はあ?」
「あなたには、子ども時代に故郷の村で季節ごとの祭りを楽しんだ記憶があるでしょう?」
「大したことはしてねえよ。お袋とばあさんが占いの小屋をやっていたから、ほとんどそれの手伝いだな」
「それでも、村を包むお祭りの雰囲気は味わえたはずですよ。けれど、あの子たちにはこれが初めての経験なのじゃないですか? かく言う私も初めてですけれど」
涼しげな眼差しに影が差す。
「……」
「オルフェン王女は、王宮で堅苦しい作法に縛られていたでしょうし、エレイン王女の時代は他国との戦続きで、祭りを楽しむどころではなかったと思いますよ。庶民育ちのあなたとは違います。彼女たちは今、初めて祭りを体験する子どもなのですよ」
キアランは珍しく饒舌だった。
フランは黙った。それも一理あるかもしれない。
ふたりが通った後には、きらきらと光る痕跡が残っている。空気の中に残された幸せな虹色の光。
――少しくらいは大目に見て、自由にさせてやった方がいいのだろうか。
そう思うと、追う足が鈍る。
「それに、オルフェン王女にとっては、都合の良いところだけを切り取って見せられるのではなく、民のありのままの姿に触れて、生の声を聞くいい機会でしょう」
(しかし、放っておくわけにはいかないからな)
自分の目の届くところにその姿がないのは、どうにも不安だ。胸がざわざわする。
闇雲に走り回っても無駄なのが分かったので、歩きながら手がかりを拾うことにした。
「さっき、あそこのベンチでパンを食べていたのを見た」
「金髪のお姉さんが王冠が出たとか言って、みんなで大騒ぎしていたよ」
小さな子どもたちが木陰の方を指さした。
「またか。すごい強運だな」
フランが呆れる。
「買い食いですか。お行儀が悪いですが、座って食べていたのなら、まあ良しとしましょう」
キアランが溜め息をついた。
それぞれ全く異なる感想を口にしつつ、教えられた方角に向かう。
探し求める乙女のひとりがそこにいた。
広場の端っこ、植え込みの中から白いウサギ耳が垂れ下がっている。
「おい、シャトン!」
フランが名を呼ぶと、ガサガサと枝が揺れて猫が姿を現わした。
出てくるなり、はあ――…、と大きな溜め息をつく。
「何かあったのですか? 元気がないようですが」
「アタシは、占いってのを甘く見ていたよ……」
「なんのことだ?」
オルフェンの肩から下ろしてもらい、自分の足で歩き始めてすぐのことだった。わらわらと猫たちが寄って、シャトンを取り囲んだ。
妙齢のオス猫ばかり。ケンカを売りに来たわけではない。自分を売り込みに来たらしかった。
「侮れないものだね。あんなちっぽけな指輪ひとつがさ」
シャトンは男たちに背を向けて、しっぽをぶんぶんと振った。
フランとキアランは顔を見合わせた。彼女の言う指輪が、王子謹製のパイから出てきた指輪のことを指すらしいと思い当たるまでに少し時間がかかった。
季節外れの猫の恋。占いが当たったと言うべきか。突然シャトンにモテ期が訪れたのだった。
「それは、災難でしたね」
キアランが当たり障りのない慰めの言葉を口にする。フランは右のつま先でイライラと石畳を叩いた。
「そんなことは、今はどうでもいい。オルフェンとエレインはどうした」
「あの子たちなら、あたしが猫どもに囲まれている間にどこかに行っちまったよ」
変に気を回した乙女たちは、身動きの取れなくなったシャトンをその場に残していったのだ。
「最後に見たのは、あの店の前だね」
つい、と鼻先で一軒の露店を示す。客は全て女ばかりだ。店が見えなくなるほどの繁盛ぶりで、ここからでは何の店だか分からない。
シャトンが猫たちを振り切ってやっとここまで来たときには、すでに二人の姿はなかった。匂いをたどろうとしたが、あまりにさまざまな匂いが混じり合っていて、そこから先は追うことができなかった。
また猫たちに見つかると面倒なので、とりあえずこうして隠れていたのだという。
「もう広場はひととおり探しましたが。どうしますか?」
キアランが言い終える前に、フランはずかずかと女たちの塊の中に分け入っていった。
「なあ、あんたたち」
女たちが振り向いた。品定めをしていた鋭い目がそのまま、一斉に場違いな赤毛の男に向けられる。一瞬フランは怯んだが、ここで回れ右をすればただの不審者だ。ぐっと踏ん張って堪えた。
「人を探しているんだが。十六から十八歳くらいの娘、二人連れ。片方は派手な金髪、もう一人は亜麻色の髪をした……」
向こうも警戒しているのか、口を開く者はいない。お互いに顔を見合わせ、無言で押し合いながらじりじりとフランから距離を置こうとする。
見かねて、キアランが助け船を出した。
「お楽しみの邪魔をして、すみません。怪しい者ではありません。私たちは護衛の者なのですが、お嬢さまとはぐれてしまいまして。こうして皆さまのような同じ年頃の可憐な方々が集まる場所を探して回っているのです」
柔らかな声に、女たちはフランからその背後の男へと視線を移した。
もちろん、その場には同じ年頃より遙かに年長の元乙女たちもたくさん混じっている。彼女たちの目に己の姿がどう映るかをも十分意識した上での発言だ。
「何かご存じのことがあれば、どうかこの哀れな男にお教え願えませんか」
キアランは片手を胸に当ててにっこりと微笑んだ。
娘たちは一斉に美しい黒騎士の優雅な仕草に息をのんだ。ぽかんと口を開けて見惚れる者がいて、頬を染め、目を輝かせる者もいる。
「それって、王女さまとエレインって子のこと?」
真っ先に口を開いたのは、勝気そうなそばかすの少女だった。
「そう、ご存じですか?」
「ついさっきまでここにいたよ、ねえ」
振り返ってその場にいた友人たちに確認する。何人かが頷いた。
「どっちに行った?」
「さあ……」
首を捻る少女の後ろから、別の少女が顔をのぞかせた。
「占い通りじゃないかな」
ぴょこんと黒い三つ編みが揺れる。
「あのね、あたしたちが占いの話をしていたら、教えて欲しいって。行ってみたい、って言ってたよ」
「占い通り?」
この町に、そのような名称の通りは無い。
「今年はメガンさんだけじゃなくて、よそからもたくさん占い師やまじない師が来てて、ジェムドラウの川沿いがすごいことになってるんだ。そこのことだよ。柳の木の下だけじゃなくて、細い木の下も、みんな占い師たちに占領されちゃってるの」
三つ編みの少女の言葉に、フランは唸った。
(なぜ気づかなかった)
あれだけ歩き回って、まだ一軒も占い小屋を見かけていない。祭りの日は絶好の稼ぎ時だ。
北の海辺のささやかな祭りを思い出す。賢女であったフランの祖母にとっても、サウィンの夜は一年で一番忙しい時ではなかったか。
見えないものは自分の瞼。身をもって知っていたはずなのに。
「一番当たるっていう噂の占い師は、ここを出てすぐの橋を渡った南側にいるよ。一番大きな小屋だから、すぐに分かると思うけれど」
「行ってみますか?」
キアランがフランの方を振り返る。フランは頷いた。
「王女さまたち、見つかるといいね」
そばにいた娘たちがみな、祈るように指を組んだ。
「ああ、ありがとうな」
「感謝いたします」
親切な乙女たちに礼を言い、男たちは教えてもらった方角へと足を向けた。
嫌な胸騒ぎがする。
「よそから来た占い師とやらに、妙なものが混じっていないといいですね」
フランの危惧を、キアランがそっくりそのまま軽い調子で口にした。
ごった返す人の海を速歩で歩く。その勢いに、行く手を塞いでいた人間たちが慌てて、右に左に道を譲る。
フランはいつしか全力で走っていた。
「この町の祭りはいかがですか?」
フランとキアランは行く先々で声をかけられた。砦の城から派遣された巡回の兵士たちや、交代で祭りを覗きに来ている者だ。
たまたまその場に行き会った町の人々は城の重要人物であるらしい騎士たちを見覚え、他の者たちに話し、二人の名はすぐに知れ渡った。若い娘たちが彼らを見て袖を引き合い噂にしたが、本人たちはそんなことに気づきもしなかった。気づいたとしても構っているひまはなかった。
「おい、いたか?」
「いえ、こちらにはいません。あの二人の姿を隠してしまうなんて、祭りの力を甘く見ていましたね」
大地の力が満ちる今宵。
多くの精霊、妖魔、祖霊たちが入り混じる中で魔法を使う訳にもいかない。小さな魔法が引き金になって連鎖を起こし、とんでもない事態を起こしてしまう恐れがある。うんざりするような人混みの中で迷子を探すには、地道に聞き込みをするしかなかった。
猫を抱いた金色の王女と、聖女と同じ若草の瞳の乙女。目立つ取り合わせだ。
目撃者は多かった。
「ああ、王女さまたちのことだね。少し前にあっちで大道芸を見ていたけれど」
「そうそう、芸人とシャボン玉をこしらえて遊んでいたね」
正体もばれていた。
「あたしが見たのは、砂絵描きと一緒に石畳に座り込んで、何か描いているところだったよ。ああ、ほらまだ残っている。あれは猫、なのかねえ」
どうやらシャトンとおぼしき地面にうねる白い砂の模様を見て、フランは久々に頭から湯気の出る思いを味わった。
「子どもか、あいつらは!」
あちこち駆けずり回ったせいで、ちょっと怒鳴っただけで息が切れる。ついでに堪忍袋の緒も切れそうだ。
「小さいころに、そういう遊びをしたことがなかったのでしょうね」
キアランがしんみりと呟く。こちらは肉体の疲れなどとは無縁だ。
「はあ?」
「あなたには、子ども時代に故郷の村で季節ごとの祭りを楽しんだ記憶があるでしょう?」
「大したことはしてねえよ。お袋とばあさんが占いの小屋をやっていたから、ほとんどそれの手伝いだな」
「それでも、村を包むお祭りの雰囲気は味わえたはずですよ。けれど、あの子たちにはこれが初めての経験なのじゃないですか? かく言う私も初めてですけれど」
涼しげな眼差しに影が差す。
「……」
「オルフェン王女は、王宮で堅苦しい作法に縛られていたでしょうし、エレイン王女の時代は他国との戦続きで、祭りを楽しむどころではなかったと思いますよ。庶民育ちのあなたとは違います。彼女たちは今、初めて祭りを体験する子どもなのですよ」
キアランは珍しく饒舌だった。
フランは黙った。それも一理あるかもしれない。
ふたりが通った後には、きらきらと光る痕跡が残っている。空気の中に残された幸せな虹色の光。
――少しくらいは大目に見て、自由にさせてやった方がいいのだろうか。
そう思うと、追う足が鈍る。
「それに、オルフェン王女にとっては、都合の良いところだけを切り取って見せられるのではなく、民のありのままの姿に触れて、生の声を聞くいい機会でしょう」
(しかし、放っておくわけにはいかないからな)
自分の目の届くところにその姿がないのは、どうにも不安だ。胸がざわざわする。
闇雲に走り回っても無駄なのが分かったので、歩きながら手がかりを拾うことにした。
「さっき、あそこのベンチでパンを食べていたのを見た」
「金髪のお姉さんが王冠が出たとか言って、みんなで大騒ぎしていたよ」
小さな子どもたちが木陰の方を指さした。
「またか。すごい強運だな」
フランが呆れる。
「買い食いですか。お行儀が悪いですが、座って食べていたのなら、まあ良しとしましょう」
キアランが溜め息をついた。
それぞれ全く異なる感想を口にしつつ、教えられた方角に向かう。
探し求める乙女のひとりがそこにいた。
広場の端っこ、植え込みの中から白いウサギ耳が垂れ下がっている。
「おい、シャトン!」
フランが名を呼ぶと、ガサガサと枝が揺れて猫が姿を現わした。
出てくるなり、はあ――…、と大きな溜め息をつく。
「何かあったのですか? 元気がないようですが」
「アタシは、占いってのを甘く見ていたよ……」
「なんのことだ?」
オルフェンの肩から下ろしてもらい、自分の足で歩き始めてすぐのことだった。わらわらと猫たちが寄って、シャトンを取り囲んだ。
妙齢のオス猫ばかり。ケンカを売りに来たわけではない。自分を売り込みに来たらしかった。
「侮れないものだね。あんなちっぽけな指輪ひとつがさ」
シャトンは男たちに背を向けて、しっぽをぶんぶんと振った。
フランとキアランは顔を見合わせた。彼女の言う指輪が、王子謹製のパイから出てきた指輪のことを指すらしいと思い当たるまでに少し時間がかかった。
季節外れの猫の恋。占いが当たったと言うべきか。突然シャトンにモテ期が訪れたのだった。
「それは、災難でしたね」
キアランが当たり障りのない慰めの言葉を口にする。フランは右のつま先でイライラと石畳を叩いた。
「そんなことは、今はどうでもいい。オルフェンとエレインはどうした」
「あの子たちなら、あたしが猫どもに囲まれている間にどこかに行っちまったよ」
変に気を回した乙女たちは、身動きの取れなくなったシャトンをその場に残していったのだ。
「最後に見たのは、あの店の前だね」
つい、と鼻先で一軒の露店を示す。客は全て女ばかりだ。店が見えなくなるほどの繁盛ぶりで、ここからでは何の店だか分からない。
シャトンが猫たちを振り切ってやっとここまで来たときには、すでに二人の姿はなかった。匂いをたどろうとしたが、あまりにさまざまな匂いが混じり合っていて、そこから先は追うことができなかった。
また猫たちに見つかると面倒なので、とりあえずこうして隠れていたのだという。
「もう広場はひととおり探しましたが。どうしますか?」
キアランが言い終える前に、フランはずかずかと女たちの塊の中に分け入っていった。
「なあ、あんたたち」
女たちが振り向いた。品定めをしていた鋭い目がそのまま、一斉に場違いな赤毛の男に向けられる。一瞬フランは怯んだが、ここで回れ右をすればただの不審者だ。ぐっと踏ん張って堪えた。
「人を探しているんだが。十六から十八歳くらいの娘、二人連れ。片方は派手な金髪、もう一人は亜麻色の髪をした……」
向こうも警戒しているのか、口を開く者はいない。お互いに顔を見合わせ、無言で押し合いながらじりじりとフランから距離を置こうとする。
見かねて、キアランが助け船を出した。
「お楽しみの邪魔をして、すみません。怪しい者ではありません。私たちは護衛の者なのですが、お嬢さまとはぐれてしまいまして。こうして皆さまのような同じ年頃の可憐な方々が集まる場所を探して回っているのです」
柔らかな声に、女たちはフランからその背後の男へと視線を移した。
もちろん、その場には同じ年頃より遙かに年長の元乙女たちもたくさん混じっている。彼女たちの目に己の姿がどう映るかをも十分意識した上での発言だ。
「何かご存じのことがあれば、どうかこの哀れな男にお教え願えませんか」
キアランは片手を胸に当ててにっこりと微笑んだ。
娘たちは一斉に美しい黒騎士の優雅な仕草に息をのんだ。ぽかんと口を開けて見惚れる者がいて、頬を染め、目を輝かせる者もいる。
「それって、王女さまとエレインって子のこと?」
真っ先に口を開いたのは、勝気そうなそばかすの少女だった。
「そう、ご存じですか?」
「ついさっきまでここにいたよ、ねえ」
振り返ってその場にいた友人たちに確認する。何人かが頷いた。
「どっちに行った?」
「さあ……」
首を捻る少女の後ろから、別の少女が顔をのぞかせた。
「占い通りじゃないかな」
ぴょこんと黒い三つ編みが揺れる。
「あのね、あたしたちが占いの話をしていたら、教えて欲しいって。行ってみたい、って言ってたよ」
「占い通り?」
この町に、そのような名称の通りは無い。
「今年はメガンさんだけじゃなくて、よそからもたくさん占い師やまじない師が来てて、ジェムドラウの川沿いがすごいことになってるんだ。そこのことだよ。柳の木の下だけじゃなくて、細い木の下も、みんな占い師たちに占領されちゃってるの」
三つ編みの少女の言葉に、フランは唸った。
(なぜ気づかなかった)
あれだけ歩き回って、まだ一軒も占い小屋を見かけていない。祭りの日は絶好の稼ぎ時だ。
北の海辺のささやかな祭りを思い出す。賢女であったフランの祖母にとっても、サウィンの夜は一年で一番忙しい時ではなかったか。
見えないものは自分の瞼。身をもって知っていたはずなのに。
「一番当たるっていう噂の占い師は、ここを出てすぐの橋を渡った南側にいるよ。一番大きな小屋だから、すぐに分かると思うけれど」
「行ってみますか?」
キアランがフランの方を振り返る。フランは頷いた。
「王女さまたち、見つかるといいね」
そばにいた娘たちがみな、祈るように指を組んだ。
「ああ、ありがとうな」
「感謝いたします」
親切な乙女たちに礼を言い、男たちは教えてもらった方角へと足を向けた。
嫌な胸騒ぎがする。
「よそから来た占い師とやらに、妙なものが混じっていないといいですね」
フランの危惧を、キアランがそっくりそのまま軽い調子で口にした。
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