7 / 11
勉強
しおりを挟む
弟の誕生…
妹の生まれ変わりと言い伝えられた弟は、それはそれは大切に大切に慈しまれ育っていく。
私のアルバムにも、とても嬉しそうな顔をして弟を抱っこする写真が数枚あった。
妹の時と違い健康体で生を受けた弟は、家族から沢山の愛情に包まれながらスクスクと成長した。
その成長過程を両親は当たり前だがとても喜んだ。
弟が寝返りを覚えて掴まり立ちをする様になる頃から、私は学校から帰ると遊びに行く事を止められる事が増えた。
最初の頃はどこに転がるか分からない弟の面倒を見る様に、また買い物行くから見ておく様に等言われたから。
妹の時の様な思いをしたくはないのだろうとは、子供ながらに感じていた為、特に嫌だとは感じなかった。
弟が1歳の誕生日を迎えお母さんは弟をベビーカーに乗せ出掛けたりする様になると、誰もいない家で留守番をさせられる様になる。
鍵すれば遊びに行けるはずなのに何故行けないのか…少しずつ不満になっていくが、毎日弟と寄り添う様にしているお母さんに言えなかった。
同時期から父は毎日の様に口を酸っぱくして私に
「お前もお兄ちゃんなんだからしっかり勉強して良い高校に入れ」と言う様になった。
この2つが何故かうまく重なり、私は学校から帰るとまずは勉強をさせられる生活へと変わっていった。
小学校5年生になった頃、まず父が働いていた運送業を辞めてきた。自営でたこ焼き屋を開業する。
開業と言えばまだ聞こえが良いが、軽トラの荷台を改造した屋台で、スーパーの空きスペースでたこ焼きや焼き鳥を売っているあれだ。
ただ、始めたからってすぐに利益を得る訳でもなく、我が家の家計は日に日に苦しくなっていった様だ。
お母さんはやり繰りがとても大変だったろう。貯金や保険を切り崩したりしていたと一時期愚痴っていたのを覚えている。
父は自営を始めた事で平日の昼間家にいる事が増えた。
その結果教育パパが誕生する。
ただ父自体は最終学歴が中卒でとても子供に勉強を教えられる程頭は良くない。
そこで父は本屋で「ドリル」なる物を買ってくる。
国語・算数のそのドリルは、中学受験のある有名な中学校の入試問題の過去問で構成されていた。
最後の方のページには答えがあったがそれはしっかり切り取られたドリルを手渡され言われたのは
「今日から毎日1日1ページずつやれ。全問正解するまではご飯抜きな。」だった。
多分普通ならこういう問題は塾や家庭教師から解き方を教わって覚えていくものだろう。
でも誰も解き方なんて教えてくれない。
お母さんに聞こうにも「そんな事も分からないの?」で終わり。
父は家にいる時は昼間から飲みながら私がお年玉で買ったテレビゲームで三國志をやっている。
夕飯が食べれない日が続いた…
小学校5年生の私は勉強をしながらもどうにかしなきゃと必死に対策を考え、両親がいないタイミングで色々な行動に出る。
1.冷蔵庫を漁り食料を確保しておく
バレた時から冷蔵庫に鍵が付いた。
2.ドリルの解答を探し出して写しておく
バレた時から部屋の外に鍵がかけられた。
3.ドリルをこっそり持ち出し学校の先生に教えて貰う
バレた時から学校へ行く前に毎日荷物検査された。
他にも色々な事をしたがバレる度に両親も対応策を講じてくる為その内八方塞がりになった。
ある日の月曜日、土曜日・日曜日とずーっとドリルをしていただけの私は2日間食事を得る事が出来ずそのまま学校へ行かされた為授業中に気を失う。
意識を取り戻した私は保健室の先生に事情を話し、まだ3時間目辺りだったが保健室で給食を食べさせて貰った。
確かその後問題になり、親と担任が話をしたと思う。
しかし30年以上前のあの時代は、今程親からの「躾」に対して子供は守られる事は無かった。
それでも両親は食事抜きはさすがにマズイとでも思ったのだろうか新しいルールが出来た。それは
「1日分のドリルが出来なかった場合は、物置でおにぎり1個だけ。」
当時私達家族が住んでいたのは県営住宅で、元々はバブル期に他県から仕事の為に引っ越してくる人々を受け入れる為に建てられたマンモス団地だった。
5階建ての中層棟が主だったけど数棟11階建ての高層があり、私達家族はその高層の11階に住んでいた。
高層には玄関脇に小さな物置があった。
その物置の中にゴミ袋と一緒に気配を消しながらおにぎりを食べる日が週の半分だった…
妹の生まれ変わりと言い伝えられた弟は、それはそれは大切に大切に慈しまれ育っていく。
私のアルバムにも、とても嬉しそうな顔をして弟を抱っこする写真が数枚あった。
妹の時と違い健康体で生を受けた弟は、家族から沢山の愛情に包まれながらスクスクと成長した。
その成長過程を両親は当たり前だがとても喜んだ。
弟が寝返りを覚えて掴まり立ちをする様になる頃から、私は学校から帰ると遊びに行く事を止められる事が増えた。
最初の頃はどこに転がるか分からない弟の面倒を見る様に、また買い物行くから見ておく様に等言われたから。
妹の時の様な思いをしたくはないのだろうとは、子供ながらに感じていた為、特に嫌だとは感じなかった。
弟が1歳の誕生日を迎えお母さんは弟をベビーカーに乗せ出掛けたりする様になると、誰もいない家で留守番をさせられる様になる。
鍵すれば遊びに行けるはずなのに何故行けないのか…少しずつ不満になっていくが、毎日弟と寄り添う様にしているお母さんに言えなかった。
同時期から父は毎日の様に口を酸っぱくして私に
「お前もお兄ちゃんなんだからしっかり勉強して良い高校に入れ」と言う様になった。
この2つが何故かうまく重なり、私は学校から帰るとまずは勉強をさせられる生活へと変わっていった。
小学校5年生になった頃、まず父が働いていた運送業を辞めてきた。自営でたこ焼き屋を開業する。
開業と言えばまだ聞こえが良いが、軽トラの荷台を改造した屋台で、スーパーの空きスペースでたこ焼きや焼き鳥を売っているあれだ。
ただ、始めたからってすぐに利益を得る訳でもなく、我が家の家計は日に日に苦しくなっていった様だ。
お母さんはやり繰りがとても大変だったろう。貯金や保険を切り崩したりしていたと一時期愚痴っていたのを覚えている。
父は自営を始めた事で平日の昼間家にいる事が増えた。
その結果教育パパが誕生する。
ただ父自体は最終学歴が中卒でとても子供に勉強を教えられる程頭は良くない。
そこで父は本屋で「ドリル」なる物を買ってくる。
国語・算数のそのドリルは、中学受験のある有名な中学校の入試問題の過去問で構成されていた。
最後の方のページには答えがあったがそれはしっかり切り取られたドリルを手渡され言われたのは
「今日から毎日1日1ページずつやれ。全問正解するまではご飯抜きな。」だった。
多分普通ならこういう問題は塾や家庭教師から解き方を教わって覚えていくものだろう。
でも誰も解き方なんて教えてくれない。
お母さんに聞こうにも「そんな事も分からないの?」で終わり。
父は家にいる時は昼間から飲みながら私がお年玉で買ったテレビゲームで三國志をやっている。
夕飯が食べれない日が続いた…
小学校5年生の私は勉強をしながらもどうにかしなきゃと必死に対策を考え、両親がいないタイミングで色々な行動に出る。
1.冷蔵庫を漁り食料を確保しておく
バレた時から冷蔵庫に鍵が付いた。
2.ドリルの解答を探し出して写しておく
バレた時から部屋の外に鍵がかけられた。
3.ドリルをこっそり持ち出し学校の先生に教えて貰う
バレた時から学校へ行く前に毎日荷物検査された。
他にも色々な事をしたがバレる度に両親も対応策を講じてくる為その内八方塞がりになった。
ある日の月曜日、土曜日・日曜日とずーっとドリルをしていただけの私は2日間食事を得る事が出来ずそのまま学校へ行かされた為授業中に気を失う。
意識を取り戻した私は保健室の先生に事情を話し、まだ3時間目辺りだったが保健室で給食を食べさせて貰った。
確かその後問題になり、親と担任が話をしたと思う。
しかし30年以上前のあの時代は、今程親からの「躾」に対して子供は守られる事は無かった。
それでも両親は食事抜きはさすがにマズイとでも思ったのだろうか新しいルールが出来た。それは
「1日分のドリルが出来なかった場合は、物置でおにぎり1個だけ。」
当時私達家族が住んでいたのは県営住宅で、元々はバブル期に他県から仕事の為に引っ越してくる人々を受け入れる為に建てられたマンモス団地だった。
5階建ての中層棟が主だったけど数棟11階建ての高層があり、私達家族はその高層の11階に住んでいた。
高層には玄関脇に小さな物置があった。
その物置の中にゴミ袋と一緒に気配を消しながらおにぎりを食べる日が週の半分だった…
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる