「愛されたかっただけ…」1番目の父と8番目の母・私と最後の弟

フミヤ

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脱走・家出

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私が住んでいたのは横須賀市だった。
父親には4つ歳下の弟がいる。私にとっては叔父にあたる。
叔父は私達親子が住む所から駅でいうと5つ程離れた所に住んでいた。
初めての家出は、その叔父の家まで歩いていった。
ただやはり身内の家に家出をしても次の日には帰される事を知った私は、次の家出は少し計画的に事前の下準備をする。
まずは現金の調達だ。
父や母の財布から隙を見つけては少しずつくすねる。
両親は500円貯金をしていたが、その貯金箱からも色々な手を使い抜き取る。
次に住めそうな場所を目星をつけた。
2回目の家出はこの後すぐに実行する。
所持金は頑張ったが5000円程だった。
すぐに実行しなきゃならない理由があった。
それは夏休み前だったから。
夏休みになってしまうと学校に行けなくなる為半軟禁生活が始まってしまうのだ。
きっと朝から勉強させられて、1日中ドリルをやらされるだろう。
朝からやるのだからノルマのページだってきっと増やされる。
学校も無いから食事だってどうなるのか分からない。
こうして小学校5年の一学期の終わりに通知表を持ったまま家出をした。

住めそうな場所は洞窟?防空壕?みたいな穴だった。
そばには公園もあり水も飲めた。
最初の3日位は特に何もなく暮らせたが、夏場で蚊がすごく4日目に新居を探しに出る。
が、どうにもそんな都合の良い場所は無く4日目は団地に戻り、高層の階段で寝た。
5日目には所持金が底を尽きた。
夜に空腹感を我慢しながら階段で蹲ってウトウトしていたら、いつの間にか高校生位の人達5人位に囲まれていた。
この人達は当時団地内で構成されていた暴走族のメンバーだったが、とても気さくな良いお兄ちゃん達で私の話を色々聞いてくれた。
1人がどこからかクリームパンとコーラを持ってきてくれて私にくれた。
私は産まれて初めてコーラを飲んだ。
炭酸が強くて、でもすごく美味しかった記憶は残っている。

6日目は朝から海へ行き、貝やカニを取った。
潜って魚を取ろうとしたが初心者の私には難しくどうにも無理だったが、昨日お兄ちゃんから貰ったライターで火をおこしてカニをボリボリ食べたり貝を焼いてから割って食べた。
蚊に食われたところが海水でしみたのが気持ち良かったのを覚えている。
その夜またいつもの階段で微睡んでいた時肩を叩かれたから、またお兄ちゃんが来たのかと思ったらパトロール中の警察だった。
この日私の2回目の家出は終了する。

近くの交番まで連れていかれ家へ連絡されると、お母さんがすぐに来た。
警察官の前でいきなり引っぱたかれたのだけ覚えている。
その後家まで連れていかれたが、父にボコボコにぶん殴られて途中から記憶が無い。
次の日からは家出前に想像していた上を行く夏休み生活となった。
毎日ドリルとだけ向き合い、ノルマは3倍以上とプラス夏休みの宿題だったから夜まで終わる訳がない。
襖1枚隔てた向こうからはごく普通の家族の団欒が朝から聞こえてくるが、そこに私が混ざる事は無かった…


何だか分からないが泣きながらドリルを睨んでいた…
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