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タイトルマッチPART4絶対王者、墜つ
しおりを挟むリングの上、三崎陸翔は、崩れ落ちかけた鷹城大牙の背中にまたがり、両腕を取り、ゆっくりと引き起こす。
「これは……キャメルクラッチの態勢! いや、違う、腰の落とし方が深い! 三崎、変形キャメルクラッチに入ったァァァッ!」
鷹城の咆哮が空気を裂く。
背筋が反り上がり、胸がえぐれるように張り詰める。
歯を食いしばる王者の表情からは、血の気が引いていた。
筋肉の隆起が波打ち、皮膚の下で苦悶が走る。
広背筋がギシギシと引き延ばされ、僧帽筋が極限まで盛り上がる。
「ぐっ……ぐあぁっ……!」
三崎は無慈悲なまでに腰を深く沈め、鷹城の顎を高く持ち上げる。
王者の腕が宙に泳ぎ、次第に力を失っていく――
「うおおっ……こ、これは……鷹城、もう限界か!?」
観客席から悲鳴混じりの声が飛ぶ。
「タカギさーん! 立ってくれ!」
「負けるな、王者ッ!」
だが、三崎は顔色ひとつ変えず、技を解く。
それは、“勝ちに行く”のではなく、“勝ちを選ぶ”ための判断だった。
「三崎、キャメルクラッチを自ら解いた!? なぜだ!?」
リングの隅に立った彼は、深く息を吸い、次なる一手に出る。
鷹城が四つん這いで膝をついた、その背後にゆっくりと回り込んだ三崎は、無言のまま脚を取った。
三崎は、無防備に崩れ落ちた鷹城の脚を抱え込み、巧みにリング中央へ引きずる。
そのまま自身の背筋を反らせて、、、、
「こ、これは……! 三崎、脚を抱え……まさか……!」
三崎の両手が鷹城の両脚をがっちりと掴み、その腰を反らせた。
「エビ固めだァァァァッッ!!」
リング中央に、完璧なブリッジ。
三崎の背筋が鋼のアーチを描き、その下に、鷹城大牙の身体がねじ伏せられるように押し込まれている。
鷹城の背は限界まで反らされ、両膝は胸に迫り、腕は虚しく開かれている。
「エビ固めっ、完璧だぁッ! 三崎、芸術的なまでのブリッジで押し込んだァァッ!」
リング中央に、完璧なブリッジ。
その体勢の中で、鷹城大牙の脚は高々と持ち上げられ、膝は耳元近くまで押しつけられた。
――その瞬間。
観客の視線が一斉に、ある一点に集中する。
鷹城の尻部。
厚みのある筋肉に覆われたその双丘が、エビ固めによって、真上へと晒されたのだ。
「うお……あのケツ、スゲェ張り、、、このケツは反則だろ……」
「いや、筋肉すげぇ……マジでプロレスラーの尻って感じ……」
鷹城が身に着けていた赤と金のリングパンツは、長時間の死闘で汗に濡れ、張り詰めた大腿と臀部にぴったりと張り付いていた。
とくに、引き上げられた体勢のせいで、布地は深く食い込み、まるで筋肉の凹凸までもが透けて見えるかのような状態になっていた。
「パンツ、喰い込みすぎじゃねぇか……」
「見ろよ、“芸術的エビ固め”じゃなくて“芸術的ケツ固め”だっての……!」
そんな中でも三崎のブリッジは美しく安定し、鷹城の腰は空中にさらされ続けた。
脚を取られたまま、股関節を極限まで開かされ、
太腿の裏の腱が軋み、ふくらはぎがピクピクと痙攣を始める。
足先は伸びきり、つま先がマットにわずかに触れるだけ。
だが、観客に見えているのは――
鍛え上げられた王者の“敗北の肉体”。
もう隠せない。
王者・鷹城大牙は、その誇るべき強靭な尻を、リングの照明と数千の視線の下に晒していた。
顔は苦悶に歪む。
いや、もはやそれは“意識”というより、“脱力”に近かった。
歯を食いしばっていた口は半開きになり、目は焦点を失い、口元から薄く涎が落ちる。
三崎は微動だにしない。
「……決め切る」
そう言わんばかりの静かな闘志を宿し、アーチを維持し続けた。
そして――
「ギ……ギブアップ……!!」
鷹城の叫びと同時に、観客席が爆発した。
「ギブ、、、ギブアップだァァァッ!! 王者、大牙、完ッッ全に沈んだッ!!!」
リングアナウンサーの叫びが、観衆の轟きに呑まれてもなお、確かに届いた。
固く締められていたエビ固めの体勢が解かれた瞬間、鷹城大牙の身体は、まるで糸が切れた人形のように崩れ落ちた。
鍛え上げられた筋肉の鎧が、今はただ無様に、床に広がる汗と交わって光を失っていく。
逞しかった背筋は弓なりに緩み、隆々たる大腿筋もすでに力を持たず、脚は内側に崩れている。
そこにあるのは、“敗北した王者”の姿だった。
「うそだろ……あの鷹城が……」
「立てよ大牙! なに負けてんだよ、情けねぇ!」
野次は、無慈悲に浴びせられた。
「王者のくせに」「もう終わりか」
罵声の合間に、あざけりと失望が交錯する。
四つん這いのまま、肩で荒く息をし続ける大牙。
広い背中が、大きく波打っている。
だが、彼の表情は観客から見えない。
顔を伏せたまま、マットに手を突き、動かない。
──そのすぐ横で。
三崎陸翔が、ゆっくりと立ち上がった。
両腕を広げて、観客席の歓声を浴びる。
黒のリングパンツに浮かぶ汗の筋が、若い肉体の輪郭を一層際立たせていた。
しなやかな肩、引き締まった腰、そして涼しげに上がる口角――
「ミサキ! ミサキ!」「新時代の王者だッ!」
叫ぶ声が響く。
客席の一角からは紙テープが舞い、スマホのフラッシュが煌く。
歓声の波が、押し寄せ、三崎の勝利を祝福する。
彼は、顔を上げた。
リングライトを浴びて、汗に濡れた髪の隙間から覗く瞳が、まっすぐに未来を見据えている。
その足元では、なおも動かない鷹城が横たわっていた。
──かつて憧れた背中を、超えた今。
三崎の姿には、若さと輝き、そして容赦のない現実の残酷さが宿っていた。
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