30年待たされた異世界転移

明之 想

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第13章

感謝


<和見幸奈視点>



「功己、ベッドの上で座って何してんの?」

「……眠りすぎたんだろうな、寝ぼけて頭が回ってなかったみたいだ」

「はあ~」

 今の様子も、言い訳も、まったくらしくない。
 遮光カーテンを開いた今、その疲れきった顔色にわたしが気づかないわけないのに。
 もちろん、功己がまいっているのは十分理解してるけど……。

 まあ、いいわ。

「功己、今日はまだ何も食べてないんでしょ」

「……ああ」

「だったら、外に出かけない? 中途半端な時間だから夕食には早いけど、軽く何かつまんでもいいし」

 本当は今夜もわたしが料理を作るつもりだった。
 でも、こんな功己を見ていると考えが変わってしまう。

 今は家に籠るより外に出た方がいい。
 気分を変えた方がいいに決まってる。





「それで、どこ行くんだ?」

 通りに出て歩くこと数分。
 功己が問いかけてきた。

「うーん……」

 わたしを見る功己の目に力が戻ってる。
 顔色もさっきよりまし。
 やっぱり、外に出て正解だ。

「功己は行きたいところある?」

「……珈紅茶館とか?」

「そこ好きだよね功己。でも、食べなくていいの?」

「幸奈も言ってただろ、夕食には早いって。だから、珈紅茶館で少し休んでから夕食に行けばいい」

「えっ? お茶と食事で2軒?」

「悪くないだろ?」

「わ、悪くはないけど」

 引っ越したばかりのわたしの財布の中身が……。

「ああ、今夜は俺がご馳走するぞ」

 嘘?

「嫌か?」

「そんな、嫌なわけないよ!」

 むしろ、嬉しい。
 とっても嬉しい。
 飛びつきたいくらい。

 ただ、今日の目的は功己の気分転換、功己を元気づけることなのに、ご馳走してもらうのはちょっと違うような気がする。

「嫌じゃないなら?」

「……悪いかなぁ、なんて」

「何言ってんだ。幸奈には散々迷惑かけてるし世話にもなってるだろ」

 功己、そういう風に思ってくれてたの。

「だから、こんな時くらい奢らせてくれ。それに……」

 うん?

「それに?」

「……」

「功己?」

「その、あれだ。たまには幸奈の喜ぶ顔も見たいし……」

「っ!」

 わたしは一緒に外食できるだけで大満足。
 なのに、そんなこと言われたらもう!

 嬉しすぎる!
 幸せすぎる!
 顔がにやけてしまう!

 でも、ちょっと待って。
 このままだと、今日の趣旨を忘れちゃう。
 それは駄目。
 
 だから、ここはいったん落ち着いて、冷静に冷静に……。


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