30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
86 / 1,640
第2章 エンノア編

姉弟 1


「やっぱり、レベル上がらないかぁ」

 昼食後は夕方まで常夜とこよの森で色々と試しながら魔物を倒していたのだが、レベルに変化は見られなかった。やはり、簡単に上がるものではないようだ。

 レベル2には簡単に上がったように見えたが、魔物との戦闘以外の点で経験値を得ていたのか、それとも1から2には上がりやすいだけか。今は判断がつかない。

 いずれにしろ……。

 レベルアップによる数値変化を確認したいんだよな。

 レベル2になった時は、各種数値はほぼ1割の伸びを見せた。
 この1割上昇というのが定率なら、高レベルに上がる前に可能な限り数値を上げておきたいと思っている。

 この世界における、ステータスの各数値はレベルアップ以外でも上昇するということは確認済みだ。ならば、さらにレベルが上がりづらいであろう高レベル帯になる前に力や敏捷性などを鍛錬によって上げておくのが得策ではないのか。

 鍛錬による上昇数値が僅かなものであったとしても、レベルアップによる定率上昇という仮説が正しければ、先々大きな違いを生み出すことになりそうだから。

 そういうわけで、最近は基礎鍛錬を強化することにしている。
 短期的に可能な限り各数値を上げておきたいからな。

 おかげで、日本にいる時は鍛錬ばかりしているような気がするけどさ。

 などと、ひとりで考えながら森の中を移動していると。


「きゃあぁぁ!!」

 女性の叫び声。
 悲鳴か?

 ここ数日で通い慣れた常夜の森。
 その中の獣道のような道を少し外れた辺りから聞こえてきた。

 魔物にでも襲われたのか?

 もちろん、無視するつもりはない。
 すぐさま獣道を外れ、道らしき道もない木々の茂みの中に足を踏み入れる。

「うおぉぉ!」

 今度は男の絶叫のような声が聞こえてくる。
 距離は近いぞ。

 視界に入る邪魔な枝を剣で斬り捨てながら駆ける。

「グルルゥゥゥ」

「おぉぉ」

「アル、危ない!!」

 茂みを抜けると、小さい公園程度の開けた空間が目に入る。
 そこには、冒険者らしき男女2人組と狼のような魔物が3頭。
 女性を庇うように男性冒険者が前に出て狼3頭と対峙している。

「姉さん、おれを置いて逃げてくれ!」

「そんなこと、できないわ」

 冒険者ギルドの掟として、冒険者が魔物と戦闘している最中に割り込む行為は原則禁止されているらしい。
 もちろん、救援を求められた場合はその限りではない。

「手助けは必要ですか?」

「えっ!?」

「おっ!?」

 背後の茂みから突然声をかけられ、驚いたようにこちらを振り向く2人。

 女性の方は、こげ茶色の髪を肩まで伸ばしている。ぱっちりとした大きな眼は綺麗なグレー。その整った容貌に幾分幼さを残すが、おそらく成人しているのだろう。

 対して、男性の方は女性同様のこげ茶色の髪を短く切りそろえている。眼の色は蒼色だ。その容貌は成人というにはやや幼い。女性より身長は高く165センチ程度はあるだろうが、見た目は少年と言っても良いぐらいだ。こちらも整った顔立ちをしている。

 しかし、このふたり。
 見覚えがあるような……。

「あ、あの、お願いします」

「了解」

 少女の声と同時に、茂みから飛び出し少年の横に並び立つ。

「グルゥ」

 狼たちは突然の乱入者を少しばかり警戒しているようで、3頭ともにその場に留まり低い声を発しながらこちらを睨んでいる。

「……そっちを頼んでいいか」

 この少年……。

 よく見ると、何か所も傷を負っているじゃないか。
 切り裂かれた服に滲む血が痛々しい。

「ええ、ここは私に任せて、少し休んでいてください」

「なっ、おれもやるぞ」

 少年の言葉を聞き終わる前に、俺の魔法が発動していた。

「雷撃!」

 バチバチと音を発しながら雷光が鋭進し左端の狼に直撃する。

「ギャワン」

 雷撃をその身に食らい、一撃でその場に倒れ伏す。

「もう一発、雷撃」

 さらに魔法を放つ。
 真ん中の狼は避けようと動くも躱しきれず、こちらも直撃した。

「ギャアン」

 残すは1頭。
 雷撃を放とうと魔力を込めたところ……。

 最後の一頭が逃げていった。

 ……。

 追いかける必要もないか。

「えっ、ええ!?」

「なっ、何だあの魔法?」

 倒れている魔物を見つめたまま立ち尽くすふたり。

「ふたりとも大丈夫ですか?」

 少年の方は怪我をしているのだから全く平気ということもないだろうが。

「すごい!」

「……」

 聞いてないな。




感想 11

あなたにおすすめの小説

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

[完]異世界銭湯

三園 七詩
ファンタジー
下町で昔ながらの薪で沸かす銭湯を経営する一家が住んでいた。 しかし近くにスーパー銭湯が出来てから客足が激減…このままでは店を畳むしかない、そう思っていた。 暗い気持ちで目覚め、いつもの習慣のように準備をしようと外に出ると…そこは見慣れた下町ではなく見たことも無い場所に銭湯は建っていた…

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達より強いジョブを手に入れて無双する!

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚。 ネット小説やファンタジー小説が好きな少年、洲河 慱(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りに雑談をしていると突然魔法陣が現れて光に包まれて… 幼馴染達と一緒に救世主召喚でテルシア王国に召喚され、幼馴染達は【勇者】【賢者】【剣聖】【聖女】という素晴らしいジョブを手に入れたけど、僕はそれ以上のジョブと多彩なスキルを手に入れた。 王宮からは、過去の勇者パーティと同じジョブを持つ幼馴染達が世界を救うのが掟と言われた。 なら僕は、夢にまで見たこの異世界で好きに生きる事を選び、幼馴染達とは別に行動する事に決めた。 自分のジョブとスキルを駆使して無双する、魔物と魔法が存在する異世界ファンタジー。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つ物なのかな?」で、慱が本来の力を手に入れた場合のもう1つのパラレルストーリー。 11月14日にHOT男性向け1位になりました。 応援、ありがとうございます!