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第2章 エンノア編
姉弟 1
「やっぱり、レベル上がらないかぁ」
昼食後は夕方まで常夜の森で色々と試しながら魔物を倒していたのだが、レベルに変化は見られなかった。やはり、簡単に上がるものではないようだ。
レベル2には簡単に上がったように見えたが、魔物との戦闘以外の点で経験値を得ていたのか、それとも1から2には上がりやすいだけか。今は判断がつかない。
いずれにしろ……。
レベルアップによる数値変化を確認したいんだよな。
レベル2になった時は、各種数値はほぼ1割の伸びを見せた。
この1割上昇というのが定率なら、高レベルに上がる前に可能な限り数値を上げておきたいと思っている。
この世界における、ステータスの各数値はレベルアップ以外でも上昇するということは確認済みだ。ならば、さらにレベルが上がりづらいであろう高レベル帯になる前に力や敏捷性などを鍛錬によって上げておくのが得策ではないのか。
鍛錬による上昇数値が僅かなものであったとしても、レベルアップによる定率上昇という仮説が正しければ、先々大きな違いを生み出すことになりそうだから。
そういうわけで、最近は基礎鍛錬を強化することにしている。
短期的に可能な限り各数値を上げておきたいからな。
おかげで、日本にいる時は鍛錬ばかりしているような気がするけどさ。
などと、ひとりで考えながら森の中を移動していると。
「きゃあぁぁ!!」
女性の叫び声。
悲鳴か?
ここ数日で通い慣れた常夜の森。
その中の獣道のような道を少し外れた辺りから聞こえてきた。
魔物にでも襲われたのか?
もちろん、無視するつもりはない。
すぐさま獣道を外れ、道らしき道もない木々の茂みの中に足を踏み入れる。
「うおぉぉ!」
今度は男の絶叫のような声が聞こえてくる。
距離は近いぞ。
視界に入る邪魔な枝を剣で斬り捨てながら駆ける。
「グルルゥゥゥ」
「おぉぉ」
「アル、危ない!!」
茂みを抜けると、小さい公園程度の開けた空間が目に入る。
そこには、冒険者らしき男女2人組と狼のような魔物が3頭。
女性を庇うように男性冒険者が前に出て狼3頭と対峙している。
「姉さん、おれを置いて逃げてくれ!」
「そんなこと、できないわ」
冒険者ギルドの掟として、冒険者が魔物と戦闘している最中に割り込む行為は原則禁止されているらしい。
もちろん、救援を求められた場合はその限りではない。
「手助けは必要ですか?」
「えっ!?」
「おっ!?」
背後の茂みから突然声をかけられ、驚いたようにこちらを振り向く2人。
女性の方は、こげ茶色の髪を肩まで伸ばしている。ぱっちりとした大きな眼は綺麗なグレー。その整った容貌に幾分幼さを残すが、おそらく成人しているのだろう。
対して、男性の方は女性同様のこげ茶色の髪を短く切りそろえている。眼の色は蒼色だ。その容貌は成人というにはやや幼い。女性より身長は高く165センチ程度はあるだろうが、見た目は少年と言っても良いぐらいだ。こちらも整った顔立ちをしている。
しかし、このふたり。
見覚えがあるような……。
「あ、あの、お願いします」
「了解」
少女の声と同時に、茂みから飛び出し少年の横に並び立つ。
「グルゥ」
狼たちは突然の乱入者を少しばかり警戒しているようで、3頭ともにその場に留まり低い声を発しながらこちらを睨んでいる。
「……そっちを頼んでいいか」
この少年……。
よく見ると、何か所も傷を負っているじゃないか。
切り裂かれた服に滲む血が痛々しい。
「ええ、ここは私に任せて、少し休んでいてください」
「なっ、おれもやるぞ」
少年の言葉を聞き終わる前に、俺の魔法が発動していた。
「雷撃!」
バチバチと音を発しながら雷光が鋭進し左端の狼に直撃する。
「ギャワン」
雷撃をその身に食らい、一撃でその場に倒れ伏す。
「もう一発、雷撃」
さらに魔法を放つ。
真ん中の狼は避けようと動くも躱しきれず、こちらも直撃した。
「ギャアン」
残すは1頭。
雷撃を放とうと魔力を込めたところ……。
最後の一頭が逃げていった。
……。
追いかける必要もないか。
「えっ、ええ!?」
「なっ、何だあの魔法?」
倒れている魔物を見つめたまま立ち尽くすふたり。
「ふたりとも大丈夫ですか?」
少年の方は怪我をしているのだから全く平気ということもないだろうが。
「すごい!」
「……」
聞いてないな。
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