30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
127 / 1,640
第2章 エンノア編

異能 1


「予知……」

 誰ともなく呟く声が聞こえてくる。

「厳密に言うと少し違うのですが、予知に近い能力を使い、この地に私が癒すべき方々がいると知ったのです」

 リセットを使っているわけだから、嘘とまでは言えないだろう。

「それは……」

「もちろん、信じるかどうかは皆さんの自由です」

「……信じます」

「私も」
「私もです」
「私も」

 ゼミアさんの声に続き、全員が信じると口にする。

 こうも簡単に信用されると、拍子抜けするような申し訳ないような複雑な心境になるが、ここからが本題だからな。

「信じていただき、ありがとうございます。それで、もうひとつ私に見えたモノがありまして、それは……」

「……」
「……」
「……」
「……」

 再び場が静まってしまう。

「あなた方、エンノアの皆さんには一般人が持ちえぬ力、異能がある」

 皆黙ったまま。

「それが見えたのです」

 異能が見えるというのは、どう考えても予知ではないだろうが。
 ここは押し切らせてもらおう。

「……」

 緊張から解き放たれたように息を吐く4人。

 ん?
 この反応は何だ。

「それは、どのような異能なのでしょう」

「……記憶を操作する異能です」

「なんと!」
「そこまで見えるとは!」
「……」
「……」

「ということは、事実なのですね」

「……はい」

「そうですか」

 やはり持っていたんだな。

 人の記憶を操るなんて容易には信じ難い能力だが、それを言うなら、俺のセーブ&リセットも充分異常な力だ。

 それに、ここは異世界。
 なら、その存在自体は信じることができる。

「となりますと、私としても正直警戒せざるを得ません」

 今この時点で既に記憶操作されている可能性もある。
 そう考えただけでも、落ち着かない気分になるな。

「それは誤解です」

「そうです、我らはコーキ殿にそのようなこと決していたしません」

「コーキさん、約束します」

「皆の言う通りです。大恩ある方に、決してそのような失礼はいたしません」

 そうは言っても、前回の時間の流れの中では多分使われているからな。
 ただもし、今回使われていないのならば、前回のことを責めるわけにはいかないんだよ。

 そこを詳しく話せないのが何とももどかしい。

「では、どのような時に使われるのですか」

「エンノアが危機に陥る可能性がある時です」

「フォルディ様、よろしいのですか?」

「サキュルス、ここは正直に話すべきだと思う」

「ゼミア様もそのように?」

「コーキ殿に隠すわけにはいくまい」

「……分かりました。出過ぎたことを、申し訳ございません」

「コーキ殿、サキュルスの発言はエンノアを心配してのこと、どうかお許しください」

 ゼミアさんが謝罪をしてくれる。
 サキュルスさんも頭を下げている。

「もちろんです、サキュルスさんの心配も分かりますので」

「ありがとうございます。……フォルディ、続きを」

「はい。コーキさん、まずエンノアがなぜ地下に住んでいるかを簡単に説明します」

「お願いします」

「エンノアの者にとってテポレン山は聖地ともいえる場所です。太古の昔、我らの祖先がこの地でトトメリウス神から加護を与えられて以来、変わることなく聖地であり続けてきました」

 トトメリウス神というのは広場にある石像、鳥頭人身の神様のことだな。




感想 11

あなたにおすすめの小説

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

[完]異世界銭湯

三園 七詩
ファンタジー
下町で昔ながらの薪で沸かす銭湯を経営する一家が住んでいた。 しかし近くにスーパー銭湯が出来てから客足が激減…このままでは店を畳むしかない、そう思っていた。 暗い気持ちで目覚め、いつもの習慣のように準備をしようと外に出ると…そこは見慣れた下町ではなく見たことも無い場所に銭湯は建っていた…

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)