30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
142 / 1,640
第2章 エンノア編

古野白楓季 2


「いいですか?」

「ええ、問題ないわ」

 駅前に到着後、週末でそれなりに混雑しているファミリーレストランに入ることになった。

 席に着き、ともにドリンクだけを注文する。
 これで、やっと落ち着けるな。

「調子はどうですか?」

「本当にもう大丈夫。全く問題ないわ」

「呼吸も辛くないですか」

「ええ、平気よ」

 見たところ、息が切れている様子もないし顔色も悪くない。

「良かった、一安心です」

 思わず頬が緩んでしまう。

「っ! 心配かけたわね」

「心配はしましたが、当然のことなので。まあ、気にしないでください」

「……ありがと」

「いえ」

「それと今日も、その、迷惑をかけたわ……。それにまた助けてもらったし」

 若干俯きながらも殊勝な顔つき。

「成り行きですよ」

「でも、あなたがいなければ、どうなっていたことか」

 まあ、かなりまずいことになっていたとは思う。

「何とかなって良かったです」

「……そうね」

 微妙な空気が流れ始めたところで、注文していた俺のコーヒーと古野白さんの紅茶が到着。
 ひとまず話を中断して、お互いにのどを潤す。

 普通にコーヒーを注文したのだけど、この時代にはまだドリンクバーはなかったんだな。
 それとも、この店舗だけ?

 どうだったかな?

 そんなこと、この俺が覚えているわけないか。

 しかし……。

 こうして、コーヒーを飲んでいても、気まずいな。
 こちらから話しかけようにも、古野白さんは何か考え込んでいるようだし。

「……」

「……」

「あなたには……」

 沈黙が数分続いたところで、ようやく口を開いてくれた。
 これで話ができるか。

「有馬くんには、2度も助けてもらったことになるのね」

「……」

 まあ、そうなるかな。

「その、本当に感謝しているわ。でも、この借りは必ず返すから」

 コーヒーを持つ手が止まる。
 感謝されるのはいいんだけど。
 そんな張りつめた表情で言わないでほしい。

 それと、感謝や恩といった話より今は。

「その言葉だけで充分ですよ。それより、これからどうするんです? 今日は明らかに狙われていましたよね」

「明日、上の者に相談するしかないけど……」

「明日ですか、それだと今夜は危なくないですか。それに明日の朝も」

「……」

「家にいるところを狙われたり、ひとりで道を歩いているところを狙われたりする可能性は?」

「家は大丈夫だと思うし、明日も人が歩いている通りを歩くから問題ないとは思うけど、絶対とは言えないわね」

「それなら、今からでも連絡して対応してもらうべきですよ」

「今夜はちょっと難しいのよ」

「……そうですか」

 その上司とやらに今夜は連絡できない事情があるのか。
 なら、そこを追及しても仕方ないか。

「でも、明日の朝なら対応してもらえるはずよ」

「そうすると、明日の朝以降は安心できそうですね。でも、朝までどうします?」

「……家は安全だから、帰るわ」

 家のセキュリティーはしっかりしていると。
 それなら。

「では、送りますよ」

「悪いわ」

「今さらですよ」

「……」

「まっ、送りますよ。家の近くではなく、家の前まで」

「いいの?」

「もちろん。では、一息ついたら帰りましょう」

「ええ、そうね」

「それで、明日以降ですが、古野白さんの家が敵方に知られている可能性はありますよね。それでも、安全なのですか?」

「セキュリティはしっかりしているけど……」

「古野白さんはひとり暮らしですか?」

「ええ、マンションにひとりよ」

「それなら、なおさら用心したいですね。異能者相手だと何があるか分かりませんし。何より気が抜けない」

「……」

「やはり、早急に引っ越すべきですよ」

「……そうね。その件についても、明日相談してみるわ」

「それがいいです」

 同じことが俺にも言える。

 おそらく、まだ大丈夫だとは思うが。
 異能者との2回の遭遇で、俺の身元が敵方に知られている可能性を完全に否定することはできない。

 そうすると、今後実家に害が及ぶこともあり得るわけだ。
 それは何としてでも避けなければいけない。
 近い内に1人暮らしを始めた方がいいかもな。

「さて、帰る前に少し訊きたいことがあります」

「私もあるわ」

 だろうね。

「では、お先にどうぞ」

「……もう一度聞くけれど、あなた本当に普通人なの?」

 声量を落として問いかけてくる。
 もう何度目かも知れないその質問を。



感想 11

あなたにおすすめの小説

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

[完]異世界銭湯

三園 七詩
ファンタジー
下町で昔ながらの薪で沸かす銭湯を経営する一家が住んでいた。 しかし近くにスーパー銭湯が出来てから客足が激減…このままでは店を畳むしかない、そう思っていた。 暗い気持ちで目覚め、いつもの習慣のように準備をしようと外に出ると…そこは見慣れた下町ではなく見たことも無い場所に銭湯は建っていた…

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。