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第2章 エンノア編
日常 2
しおりを挟むちなみに、この5日間。
古野白さんのことが気になってはいたが、それでもオルドウに移動して活動は続けている。
夕連亭に立ち寄りウィルさんと話をしたり、テポレン山のエンノアに赴き病から回復した後に問題が起きていないか確認をしたり、ギリオンやヴァーンベックと酒を飲んだり、魔物を狩ったり、などなど。
ウィルさんとエンノアの皆さんは特に問題なく無事に過ごしているようだった。
ギリオンとヴァーンベックも相変わらず。
剣の修練と冒険者活動、それに飲み歩きの毎日みたいだ。
まあ、オルドウ周辺で俺が関係する人たちは皆変わりない日常を続けている感じかな。
日本では大学が夏季休暇になったため、専ら鍛錬と訓練をしている。
幸奈とは1度珈紅茶館で会っただけ。
どうも、家の方が騒がしいみたいだな。
そうそう、先日香澄と夕食を食べに出かけたんだが、高級イタリアンの店で奢らされたおかげで結構な散財をする羽目になってしまった。
大学生には贅沢な店だとは思ったものの、前世の疎遠な関係を考え1回だけならと了解してしまったのが失敗だったな。
まあ、でも、こういう妹孝行も悪いものではない。
たまに、ならな。
そんな平和な5日間を過ごし、今はオルドウの冒険者ギルドに来ている。
ここに来るのも随分と久しぶりという感じがするな。
前回来たのは……。
そうか、テポレン山での薬草採取の依頼達成を伝えに来た時だ。
とすると、こっちの世界では、それほど日数が経過しているわけでもないか。
「フォルディさん、ここが私の所属する冒険者ギルドです」
今朝、フォルディさんがオルドウを訪問するという話を聞いていたので、俺も早朝に日本からこちらに移動しフォルディさんと行動を共にしている。
フォルディさんと俺はエンノアの皆さんに頼まれていた買い物をするため、さっきまで街の中を歩き回っていたのだが、それを済ませた後はフォルディさんの希望を聞いてこの冒険者ギルドにやって来たというわけだ。
「案内していただき、ありがとうございます。オルドウの街の建物はどれも立派ですが、ここはまた素晴らしいですね」
「ええ、私もそう思います」
「やっぱり、オルドウに来て良かった。これもコーキさんのおかげです」
「いえいえ、エンノアの皆さんがオルドウ行きを賛成してくれたからですよ」
「それでもコーキさんがこの街にいなかったら、こんなに早くこちらを訪れることもなかったと思いますから」
エンノアは長らくの間、外部との交流をほとんど断っていた。
そのエンノアの民が唯一訪れていた場所が、テポレン山を挟んでオルドウと反対側に位置するレザンジュ王国の都市ワディナート。
フォルディさんもエンノアの外と言えば、ワディナートしか知らなかったらしい。
「オルドウでフォルディさんと御一緒できて私も嬉しいです。それで、これからどうしましょう?」
「明日までは何の用事もないので、コーキさんの日常を見学したいですね。だから、もし良ければ依頼でも受けてください」
今回のフォルディさんのオルドウ訪問は俺との顔合わせと買い物が目的なので明日にはエンノアに戻る予定なのだが、今後は異文化の勉強のため頻繁にオルドウを訪れることになるそうだ。また、他のエンノアの人々も順次オルドウを訪れることになっているらしい。
そういうわけなので、俺の常宿に部屋を借りて活動の拠点とすることになった。
俺としてもエンノアの皆さんの力になれることがあるなら、惜しみなく助力するつもりだ。
「では、少し見てみましょうか」
依頼が貼り出された掲示板の前に移動し、依頼内容を眺める。
うーん……。
特に興味がある依頼はない。
朝の依頼貼り出し時間を過ぎると、良い依頼は残っていないものだな。
などと考えながら掲示板を眺めていると。
「あの、少しお時間いただけますでしょうか?」
見覚えのある2人が声を掛けてきた。
「君たちは、常夜の森で手助けした」
「はい、シアです」
常夜の森で魔物に襲われているところを、俺が助けた姉弟。
その姉のシアさんか。
「先日はわたしたちを助けていただき、本当にありがとうございました」
シアさんが丁寧に挨拶をしてくる。
「いえ、無事で良かったですよ」
「コーキさんのおかげです」
そう言って、また頭を下げてくれる。
礼儀正しい女性だな。
弟はそうでもないが。
「それでお話とは」
「それは……。ほら、アル、あなたからお願いしなさい」
「この前のあんたの腕は凄かった。だから……だから、おれを弟子にしてくれ」
これはまた、いきなりだな。
第2章 完
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