30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
283 / 1,640
第4章 異能編

廃墟ビル 6


<古野白楓季視点>



 4階で倒した炎の異能使いをロープで拘束した後。
 鷹郷さんが尋問したのだけれど、有益な情報はほとんど手に入れることができなかった。

 どうやら、この男。
 あいつらの仲間になったのは最近のことで、ただの下っ端らしい。
 詳しいことを知らないのも当然ね。

「こいつも連れて行くしかねえか」

「そうね」

 ロープで拘束済みとはいえ異能者を放置するのもはばかられる。
 余計な荷物が増えてしまうけれど仕方がない。
 ガムテープで口をふさいだ男を連れ、捜索を再開することに。




「あとはもう屋上だけですね」

「そうだな」

 5階から8階まで捜索したものの、結局彼らの姿を見つけることはできず。
 残るは屋上だけ。
 追い詰めたと考えていいのか、それとも……。

「あいつら、下に逃げてねえだろうな」

「それはないでしょ」

 ここで逃げるなら、何のために廃墟ビルにやって来たのかってことになる。

「屋上での戦いになりそうだな」

「はい」

「やっと戦えるぜ」

 鷹郷さんと武上君と私。
 万全の3人が揃っている状況。
 人質もいない。
 何も問題はない。

 ただ、この暑さは……。

「しっかしよぉ、このくそ暑い中、迷惑な連中だぜ」

「……」

 廃墟ビルの中なのだから、冷房などあるはずもなく。
 私たち3人は全員が汗にまみれている。

 シャツが肌に張り付いて不快でしかない。
 けど、もうそれも終わり。

 決着をつける。
 屋上で幕引きよ。

「おかげで、体力を削られちまった」

「やむを得まい。それより、ふたりとも分かっているな」

「もちろん」

「はい」

 屋上では、敵がこちらを待ち伏せているに違いない。
 何らかの仕掛けがある可能性も考えられる。

 それでも、ここは突入するしかないのだから。
 十分に警戒して進むだけ。

「屋上に出る前に、こいつの足も拘束しておこう」

 鷹郷さんの指示通り、炎の異能者の足をロープで拘束。

「うっ、うっ!」

「準備完了です」

「よし。いくぞ、突入だ!」

 その声と共に屋上への扉が開かれた。
 夏の強い陽光が目に入り、僅かに目を閉じてしまう。
 けど、そんなこと構ってられない。

 まずは、炎の異能者を屋上に転がす。
 そして、屋上に足を踏み入れ散開。

 敵はどこ?

 いた!

 屋上中央の少し奥。
 屋上の端よりに位置する出入り口から離れた地点に、ふたりが立っている。
 嫌な嗤いを浮かべながら。

「遅かったなぁ。待ちくたびれたぜ」

 喋るのは氷使いのパーカー男。
 傍らには念動力使い。

 この2人以外に敵は見当たらない。
 2人だけ?
 他にもいると思っていたのに……。

「2人だけみたいだぜ」

「相手がどうあれ、油断はするなよ」

「了解」
「了解」

 でも、本当にこれだけ?
 何もないの?

 敵は2人で、異能も使ってこない。
 待ち伏せの利点がない。

 どういうこと?
 こっちにとっては、助かるけれど……。

「元々お前らが勝てるチャンスなんてほぼねえけどよ。完全に勝機を逃したなぁ」

 不敵に言い放つ武上君も、不審に思っているのは間違いないわ。
 目がそう語っているもの。

「はっ、そんなわけないだろ」

「……」

 口の端に嗤いを残したまま。
 やっぱり、何かある?

「話は後でいい。ふたりとも、プランBだ」

 鷹郷さんの言葉に、止まっていた身体が反応する。
 勝手に動く。

 もう何度も行ってきたシミュレーション。
 染み付いている動き。

 武上君が駆ける。
 鷹郷さんが続き、私も。

「……」

 そうね。
 少し疑問は残るけれど、今は相手を倒すのみ。




***************************




「ここだよね?」

「ああ、このビルだ」

 里村とふたり、炎天下の中を歩き続け。
 目的地である廃墟ビルの前に到着した。

「思ってたより静かだよ」

「……そうだな」

 ビルの入り口にも周りにも、人の姿は見えない。
 戦闘音も聞こえない。
 静かなものだ。

「……」

 このビルは今秋に取り壊され新しいビルが建造される予定ということで、周りには仮柵が設置され立ち入り禁止の看板が置かれている。

 そんなビルの中に正面から堂々と入って行くのは、さすがに躊躇してしまう。
 この暑さもあって、近くに人がいないのはありがたいことだが……。

 とりあえず、ビルの周りを調べるか。

 仮柵を越え、ビルの敷地内へ足を踏み入れる。
 そのまま裏手に回り、周りに問題がないか確認。

 特に何もない、か。

「誰もいないし、問題もなさそう」

 里村の言う通り。
 人影どころか、気配すら感じない。



感想 11

あなたにおすすめの小説

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

[完]異世界銭湯

三園 七詩
ファンタジー
下町で昔ながらの薪で沸かす銭湯を経営する一家が住んでいた。 しかし近くにスーパー銭湯が出来てから客足が激減…このままでは店を畳むしかない、そう思っていた。 暗い気持ちで目覚め、いつもの習慣のように準備をしようと外に出ると…そこは見慣れた下町ではなく見たことも無い場所に銭湯は建っていた…

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達より強いジョブを手に入れて無双する!

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚。 ネット小説やファンタジー小説が好きな少年、洲河 慱(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りに雑談をしていると突然魔法陣が現れて光に包まれて… 幼馴染達と一緒に救世主召喚でテルシア王国に召喚され、幼馴染達は【勇者】【賢者】【剣聖】【聖女】という素晴らしいジョブを手に入れたけど、僕はそれ以上のジョブと多彩なスキルを手に入れた。 王宮からは、過去の勇者パーティと同じジョブを持つ幼馴染達が世界を救うのが掟と言われた。 なら僕は、夢にまで見たこの異世界で好きに生きる事を選び、幼馴染達とは別に行動する事に決めた。 自分のジョブとスキルを駆使して無双する、魔物と魔法が存在する異世界ファンタジー。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つ物なのかな?」で、慱が本来の力を手に入れた場合のもう1つのパラレルストーリー。 11月14日にHOT男性向け1位になりました。 応援、ありがとうございます!