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第4章 異能編
幽霊
幸奈と別れた俺は、無駄だと思いつつも確認のため駅周辺に足を向け。
とりあえず、小走りで駅の周りを一周する。
やはり、武志の姿は見当たらない。
結局、今日も成果はなし。
香澄から目撃情報を得たにもかかわらず、成果はなしだ。
「……」
簡単に見つかるわけがないのは分かってる。
分かってるが、連日の無駄足に精神的疲労が溜まってしまう。
また、足が重くなってしまう。
幸奈とお茶をして少し軽くなっていたというのに。
そんな重い足を引きずるようにして駅を離れた俺が向かうのは一人暮らしの自室。
ただ、今日は少しばかり遠回りして例の公園を確認してから帰ろうと思っている。
足も身体も重いけれど歩いていけない距離じゃないのだから、思い立った時に確認しておきたい。
まあ、今この時間に武志が公園にいるとも思えないか。
「……」
諦念の中の僅かな希望にすがる思いで公園に到着。
入口から公園の中に入る。
公園の中をひとり歩いてたどり着いたのは、古野白さんと俺が閉じ込められていた場所。
何の変哲もない公園の一角だ。
当然、今は何もない。
人影もほとんど見られない。
それは、そうなのだが……。
やっぱり、勘違いじゃないよな。
「……」
後ろに感じていた奇妙な気配。
時折気配が消えたりもしていたので偶然かとも思ったこの気配。
もう間違いない。
尾行に違いないだろう。
しかも、尾行者は。
「そこにいるのは、あの屋上にいた……君かな?」
20メートル以上離れた木陰に向かって声をかけてみる。
木陰に半身以上を隠しているが、そこにいるのはベースボールキャップを目深に被った少年。
「隠れていないで、近くまで来たらどうだ」
「……」
まだ少し距離がある。
前回もしっかりと顔を確認することができなかったし、今もそう。
だから、断定はできない。
が、こいつはあの透けた幽霊少年のはず。
「用があるんだろ?」
この距離で木陰に隠れている状況では鑑定もできない。
姿を現してもらおうか。
「……」
返事がない。
というか、この少年の声を聞いたことがない。
そうだ。
少年はまだ一度も口を開いていないんだ。
いつもただ微笑むだけ。
喋っていない!
「君……」
本当に人間なんだよな?
「……」
木陰の後ろに感じる気配。
一般的な人のそれじゃない。、
何とも奇妙な気配だ。
まさか本物の幽霊?
幽霊の気配?
いや、いや、さすがにそれは。
「……」
前回はできなかった鑑定。
今回こそ鑑定で、正体を暴いてやる。
結果、幽霊だったら……。
それは、その時のことだ
「出て来ないのか?」
「……」
何度尋ねても返答がない。
口を開こうとしない。
「……」
いいだろう。
そっちが来ないというなら、こちらから行くだけ。
警戒しながら、慎重に足を進める。
木陰に向かって一歩、また一歩。
よし、着いたぞ。
この木の後ろに少年が……!
「なっ!?」
いない!
少年がいない!
「……」
少年は木陰にいたはず。
今の今まで、確かに気配があった。
それなのに。
「……」
異能を使って、この僅かな間に姿を消したのか?
それとも、本当に……。
いったい何者なんだ?
「何だか、落ち着かないね」
「……そうだな」
里村の声に、頷いてしまう。
「ボクも同じだよ。あの人たちも、まだ捕まっていないみたいだし」
その通り。
橘は捕まっていないし、武志の消息も掴めていない。
つまり、武志の問題は未解決のまま。
あの不思議な少年のことも……。
そんな状況で、今日これから鷹郷さんに会うんだ。
気が重くなるのも当然だろ。
「やっぱり、ボクも行きたくないかも。うん、行きたくないや」
「里村は、興味あるんじゃないのか?」
「それはさあ、異能には興味あるよ。この前も古野白さんから色々話を聞いて、もうワクワクが止まらなかったし。でも、政府関係の機関なんでしょ。だったら、ボクだってあまり関係持ちたくないよぉ。そこは有馬くんと一緒だから」
さすがの里村も、鷹郷さんとの面談には気後れするんだな。
「でもさ、もう逃げられないんだよね?」
「……ああ」
「だよねぇ」
今さら今回の呼び出しを無視することなんてできない。
仮に今日キャンセルできたところで、問題を先送りするだけだ。
なら。
ここは腹を据えてかかるしかない。
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