326 / 1,578
第4章 異能編
和見幸奈 6
しおりを挟む
※ 今話もセンシティブな内容となっております。
※ 後書きに、前話、今話の内容を簡単に記しておきますので、
※ 苦手な方は、後書きを読んで先に進んでください。
******************************
******************************
******************************
<和見幸奈視点>
それは、様々な……。
様々な爬虫類の死骸だった。
……。
……。
虫だけでも、どうしようもなく気持ちが悪かったのに。
辛かったのに。
爬虫類の死骸だなんて!
……あの時。
実際にそれを見たあの時。
目に入ったあの瞬間。
頭が真っ白になって。
何も考えられなくなってしまった。
気を失っていたのかもしれない。
……。
……。
でも、父は……そんなわたしの様子など気にする素振りもなかった。
養女が恐ろしい液体の中、真っ青な顔で震えているのに、何も……。
液体の中に追加されたそれら。
虫とは違い、確かな質量をもってわたしに迫ってくる異物。
耐えがたい不快感と絶え間ない嘔吐感。
そんなものに苛まれながらも、わたしは逃げ出すことができなかった。
父の言葉を拒絶することはできなかった。
それでも……。
やはり、慣れとは恐ろしい。
人とは恐ろしい。
何度もそれに浸かっているうちに、麻痺したように嘔吐感は消えていったのだから。
もちろん、不快であることに変わりはなかったのだけれど……。
3度目の変化。
それは浴槽内での変化ではなかった。
「はじめまして幸奈さん」
あの不気味な液体に身体を預けるようになって4か月が経過した頃。
父がある女性を連れて地下室にやって来た。
「こちらの素晴らしい異能の使い手が、異能発現の手助けをしてくれる」
父の傍らにいたのはわたしと同年代に見える細身の女性。
夏だというのに、全身を黒一色で覆っている。
黒のロングスカート、黒のシャツ、手にも黒い手袋。
素肌を見せているのは顔だけ。
まるでわたしを葬送にやってきた死神のような姿……。
対するわたしは、いつものように下着を身に着けているだけ……。
「では、さっそく始めますわ」
「よろしく頼む」
浴槽の前で呆然と佇む私の前に歩み寄って来る彼女。
顔にかかる長く綺麗な黒髪を払いのけた手が私に向けられ。
「憂波!」
彼女のその言葉とともに現れたのは……。
音?
とても小さいけれど……。
耳の中を、頭の中を直接触られているような、そんな音が響き渡る。
「……」
最初はちょっと不快なだけだった。
それなのに。
「痛い!?」
次第にその音が頭の中で動き回り、耐え難い痛みが頭を襲ってきた。
例えるなら……そう、火箸で頭の中をかき回されているような激痛。
「うぅぅ」
立っていることもできず、床に手をつき倒れてしまう。
あぶら汗があふれ出てくる。
「や、やめて」
「……」
「お願い、やめて!」
「……どうします?」
「もう少しだけ続けてくれるかな」
「ええ、分かりましたわ」
そんな!
「お父様」
お願い!
やめさせて!
お願いします!
お願いだから。
ああぁ……。
「……」
「……」
意識が消えてしまった。
異能をその身に浴びることで異能発現につながる。
異能の世界で囁かれているそんな話を信じた父。
その後も、わたしは何度となく異能に晒されることになってしまった。
その大半は、音波を使うこの女性。
あとひとり、20歳くらいの若い男性の異能者がやって来ることもあった。
そんな生活が半年間。
父がわたしの異能発現を諦めるまで続いた。
……。
……。
……。
液体に死骸に異能。
あの15歳の6か月。
もう思い出したくもなかったのに……。
また、父に呼び出されてしまった。
地下室に来るように言われてしまった。
あれを再開!
いや!!
いやだ!!!
あんな事されたくない。
もう、耐えられない。
それなのに……。
それなのに、この身体はいまだに反応してしまう。
父に命令されたら……。
……。
……。
……。
助けて。
助けて!
わたしを助けて、功己!!
……。
……。
でも……。
そんな姿、見られたくない。
知られたくない。
だから……。
だから、せめて。
わたしを見捨てないで!
わたしを嫌わないで!
お願い!!
こんな汚れたわたしだけど……。
こんなわたし……。
……。
……。
……。
******************************
******************************
<『和見幸奈 5、6』の概略>
異能発現のため、父親から様々な苦行を強いられる幸奈。
15歳時、半年の間その苦行に耐えた幸奈だったが、結局異能が発現することはなかった。
そして、20歳になった今。
また父親に呼び出され……。
※ 最後の40行は比較的読みやすい内容です。
※ 気になる方は、そちらを読んでから先にお進みください。
※ 後書きに、前話、今話の内容を簡単に記しておきますので、
※ 苦手な方は、後書きを読んで先に進んでください。
******************************
******************************
******************************
<和見幸奈視点>
それは、様々な……。
様々な爬虫類の死骸だった。
……。
……。
虫だけでも、どうしようもなく気持ちが悪かったのに。
辛かったのに。
爬虫類の死骸だなんて!
……あの時。
実際にそれを見たあの時。
目に入ったあの瞬間。
頭が真っ白になって。
何も考えられなくなってしまった。
気を失っていたのかもしれない。
……。
……。
でも、父は……そんなわたしの様子など気にする素振りもなかった。
養女が恐ろしい液体の中、真っ青な顔で震えているのに、何も……。
液体の中に追加されたそれら。
虫とは違い、確かな質量をもってわたしに迫ってくる異物。
耐えがたい不快感と絶え間ない嘔吐感。
そんなものに苛まれながらも、わたしは逃げ出すことができなかった。
父の言葉を拒絶することはできなかった。
それでも……。
やはり、慣れとは恐ろしい。
人とは恐ろしい。
何度もそれに浸かっているうちに、麻痺したように嘔吐感は消えていったのだから。
もちろん、不快であることに変わりはなかったのだけれど……。
3度目の変化。
それは浴槽内での変化ではなかった。
「はじめまして幸奈さん」
あの不気味な液体に身体を預けるようになって4か月が経過した頃。
父がある女性を連れて地下室にやって来た。
「こちらの素晴らしい異能の使い手が、異能発現の手助けをしてくれる」
父の傍らにいたのはわたしと同年代に見える細身の女性。
夏だというのに、全身を黒一色で覆っている。
黒のロングスカート、黒のシャツ、手にも黒い手袋。
素肌を見せているのは顔だけ。
まるでわたしを葬送にやってきた死神のような姿……。
対するわたしは、いつものように下着を身に着けているだけ……。
「では、さっそく始めますわ」
「よろしく頼む」
浴槽の前で呆然と佇む私の前に歩み寄って来る彼女。
顔にかかる長く綺麗な黒髪を払いのけた手が私に向けられ。
「憂波!」
彼女のその言葉とともに現れたのは……。
音?
とても小さいけれど……。
耳の中を、頭の中を直接触られているような、そんな音が響き渡る。
「……」
最初はちょっと不快なだけだった。
それなのに。
「痛い!?」
次第にその音が頭の中で動き回り、耐え難い痛みが頭を襲ってきた。
例えるなら……そう、火箸で頭の中をかき回されているような激痛。
「うぅぅ」
立っていることもできず、床に手をつき倒れてしまう。
あぶら汗があふれ出てくる。
「や、やめて」
「……」
「お願い、やめて!」
「……どうします?」
「もう少しだけ続けてくれるかな」
「ええ、分かりましたわ」
そんな!
「お父様」
お願い!
やめさせて!
お願いします!
お願いだから。
ああぁ……。
「……」
「……」
意識が消えてしまった。
異能をその身に浴びることで異能発現につながる。
異能の世界で囁かれているそんな話を信じた父。
その後も、わたしは何度となく異能に晒されることになってしまった。
その大半は、音波を使うこの女性。
あとひとり、20歳くらいの若い男性の異能者がやって来ることもあった。
そんな生活が半年間。
父がわたしの異能発現を諦めるまで続いた。
……。
……。
……。
液体に死骸に異能。
あの15歳の6か月。
もう思い出したくもなかったのに……。
また、父に呼び出されてしまった。
地下室に来るように言われてしまった。
あれを再開!
いや!!
いやだ!!!
あんな事されたくない。
もう、耐えられない。
それなのに……。
それなのに、この身体はいまだに反応してしまう。
父に命令されたら……。
……。
……。
……。
助けて。
助けて!
わたしを助けて、功己!!
……。
……。
でも……。
そんな姿、見られたくない。
知られたくない。
だから……。
だから、せめて。
わたしを見捨てないで!
わたしを嫌わないで!
お願い!!
こんな汚れたわたしだけど……。
こんなわたし……。
……。
……。
……。
******************************
******************************
<『和見幸奈 5、6』の概略>
異能発現のため、父親から様々な苦行を強いられる幸奈。
15歳時、半年の間その苦行に耐えた幸奈だったが、結局異能が発現することはなかった。
そして、20歳になった今。
また父親に呼び出され……。
※ 最後の40行は比較的読みやすい内容です。
※ 気になる方は、そちらを読んでから先にお進みください。
42
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
転生チートは家族のために ユニークスキル『複合』で、快適な異世界生活を送りたい!
りーさん
ファンタジー
ある日、異世界に転生したルイ。
前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。
そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。
「家族といたいからほっといてよ!」
※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
Gランク冒険者のレベル無双〜好き勝手に生きていたら各方面から敵認定されました〜
2nd kanta
ファンタジー
愛する可愛い奥様達の為、俺は理不尽と戦います。
人違いで刺された俺は死ぬ間際に、得体の知れない何者かに異世界に飛ばされた。
そこは、テンプレの勇者召喚の場だった。
しかし召喚された俺の腹にはドスが刺さったままだった。
幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。
アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚…
スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。
いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて…
気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。
愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。
生きていればいつかは幼馴染達とまた会える!
愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」
幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。
愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。
はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる