30年待たされた異世界転移

明之 想

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第4章 異能編

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「ところで、コーキ先生。次の魔法の授業はいつになりそうですか?」

「……」

 そういえば、最近指導していなかったか。

「明日なら時間が取れそうだが、シアの都合はどうだ?」

「明日は……。セレス様、明日、少し出かけてもよいでしょうか?

「ええ。もちろんよ」

「ありがとうございます」

 シアの嬉しそうな顔を見ていると、申し訳ない気持ちになってくるな。
 まあ、明日はしっかり指導できるはずだから、許してくれよ。

「シアも時間を自由に使っていいのだから、気にしないで」

「でも、セレス様の側にいないと」

「時間がある時だけ、傍にいてくれれば十分。ここはオルドウで、あなたは冒険者なのだから、ある程度は自由に動きなさい」

「セレス様……ありがとうございます」

「それはもういいの。それより、シアはコーキさんに魔法を教えてもらっているのね?」

「はい、そうです!」

「そう……。コーキさん、もしよければ私も一緒に教えていただけませんか?」

「セレス様も魔法を?」

「いえ、その、スキルの練習をしたいなと思いまして」

 スキルを俺が教えると?

「やっぱり、駄目でしょうか?」

「駄目ではないのですが、私にスキルの指導ができるとは思えませんので」

「大丈夫です。問題ないです。一緒に練習さえできれば」

「そうですか……そういうことなら、分かりました。明日一緒に練習しましょう」

「はい、よろしくお願いします!」

「セレス様、一緒に練習できますね!」

「ええ、よろしくね。シア」

「こちらこそです」

 スキルの指導なんてできるとは思えないが、セレス様をひとりで残すのも気が引けるしな。

 こうして喜んでいるんだ。
 やれるだけやってみよう。

「コーキさん、おれからも話があるんだけど。というか、話すように言われてるんだけど」

「何の話だ?」

「冒険者ギルドのマスターがコーキさんを探しているからさ。コーキさんを見かけたら、ギルドに来るように伝えるよう頼まれてたんだ」

 ああ、そっちにも顔を出していなかったか。

「コーキさん、ダブルヘッドの報酬もまだ貰ってないんだろ。早く行った方がいいぜ。すごい大金なんだから」

 それは、分かっているんだけどな。
 いろいろと大変そうなんだよなぁ。

「おれと姉さんや他の皆でさえ、結構な金額を貰ったんだぜ。これもコーキさんがダブルヘッドを倒してくれたおかげだよ」

「本当にそう。全てコーキ先生のおかげです」

「だから、早くギルドに行きなって」

「……分かった。時間ができたらな」

「時間ができたらって。まだ行かないつもりかよ」

 できたら、そうしたいが。

「数日中には顔を出す、つもりだ」

「ホントかぁ? あっ、それと前にも話したと思うけど、ここの領主もコーキさんに興味があるみたいだぜ」

「……」

「わたしもその話は聞きました。ギルド経由でコーキさんを自宅に招こうとしているとか」

 ますます厄介だ。
 やっぱり、当分はギルドに足を運びたくないな。




 セレス様のもとを辞して、次に向かうは夕連亭。

「クゥーン」

 隣には、セレスさんのもとから連れて来た小型のノワール。
 甘えた声で鳴きながら時折鼻面を擦りつけてくる。
 相変らず犬のようなやつだ。

 が、可愛いな。

「……よろしく頼むぞ」

「アン」

 自分で言葉こそ使えないものの、こちらの言葉を理解し意思を感じ取ってくれるのは助かる。

 愛らしく従順で賢い、その上強い。
 申し分ないんだよなぁ。

 あの戦闘の記憶さえなければ……。




「せっかく訪ねていただいたのに申し訳ない。ウィルは今日休みなんですよ」

 出迎えてくれたのは夕連亭のベリルさん。
 ウィルさんはいないようだ。

「それにしても、お久しぶりです」

「そうですね。お元気でしたか?」

 夕連亭に足を運んでも、ベリルさんとは顔を合わすこともなかったから、本当に久しぶりだ。

「元気ですよ。コーキさんもお元気そうで。ご活躍はよく耳にしておりますが、こうしてお会いできて嬉しいですね」

「活躍ですか?」

「ダブルヘッドを討伐されたとか」

「ああ……」

 その話が街に出回っているのか。
 領主の耳にも入るわけだ。

「お忙しいでしょうが、時間がある時にでもまた夕連亭の食事を楽しんでください。待ってますよ」

「ありがとうございます。また伺いますので」

 ウィルさんと会えなかったのは残念だが、また夕連亭を訪れればいいだろう。
 今は特に重要な予定もないのだから。

 さて次の用事に向かうため、大通りに戻り歩いていると。
 前から歩いて来るのは……ウィルさん!

 こんなにすぐに会えるとは。

「コーキさん!」

 上ずったような声?

「ウィルさん、どうかしましたか?」

 そんな声を出して。

「よかったぁ、コーキさんに会えて」

「……」

 ホント、どうしたんだ?

「あっ、ごめんなさい」

「いえ。それで、何か急ぎの用ですか?」

「はい! あの……私と一緒に王都に行ってもらえませんか?」




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