30年待たされた異世界転移

明之 想

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第5章 王都編

迎撃 9

 逃亡を許しただって?
 ヴァルターさんが、そんなミスを?

「オルセーの持っていたロシュノワの瞬宝だ」

「っ!?」

「宝具を使われた」

 そういうことか。

「時を止めて、バシモスが逃げたのですね?」

「ああ」

「……」

「申し訳ない。オレの責任だ」

「いえ」

 違う。
 これは俺の失態だ。

「私がオルセーの宝具を奪っておくべきでした」

 オルセーを倒した直後に、あいつの宝具を、ロシュノワの瞬宝とマリスダリスの刻宝を手に入れておくべきだったのに!

 あの時。
 後続のレンヌ兵の相手をして、その後目眩に襲われてしまったから……。

 完全に失念していた。

「私の責任です」

「いや、俺の責任だ」

「……」

「……」



「師匠、コーキさん! とりあえず、倒れているレンヌ兵たちを片付けましょう」

 何とも言えない沈黙を破ってくれたのは、御者のレントさん。

「時間をかけると、再び追手がやって来る可能性もありますので」

 尤もな意見だ。

「……そうだな。まずは、生きてる者を拘束するぞ」

「はい、では狭隘地の方から」

 ということで、皆で狭隘地に戻ったのだが……。

「ヴァルターさん、オルセーの亡骸がどうなったか知りませんか?」

 俺がオルセーを倒した場所から遺骸が消えている。

「オルセーの遺骸?」

「消えたんですよ」

「遺骸が勝手に消えるわけがない。ということは、バシモスが運んだのかもしれん」

「逃亡するのに、わざわざ遺骸を?」

 何か意味があるのか?

「分からん。が、他には考えられんだろ」

「……そうですね」

 状況的には、その通り。
 ただ、理由が分からない。
 オルセーの亡骸に何らかの価値があるとでも?

「……」

 と?
 またか!

 また目眩が襲ってきた。
 さっきより少しましだが、それでも立っているのが辛い。

「どうした?」

「コーキさん?」

「クゥーン」

 すぐ横にいたヴァルターさんとウィルさんが支えてくれる。
 ノワールも。

「すみません。また目眩が」

「それはいけません。コーキさんは馬車で休んでください」

「いえ……」

「駄目です。病人なのに無理して戦ってくれたのですから、あとは任せてください」

「休んでくれ、コーキさん」

「あとは私たちがやりますから」

 カロリナさんもレントさんも頷いている。

「……では、少し甘えさせてもらいます」

 ヴァルターさんの肩を借り馬車の中へ。
 すぐに横になり治癒魔法をかけていると……。

 いつの間にか意識を手放していた。




**************

<ヴァルター視点>



「よし、これで終了だ」

 かなりの数のレンヌ兵が倒れていたが、無事に拘束することができた。

「師匠、この後はどうしましょう?」

「こいつらをどうにかせにゃならんが、数が多すぎる。それに、こっちはレザンジュに早く入りたいからな」

「それでは?」

「最寄りの街まで戻って、家門の者を連れて来てくれるか?」

「数が足りない場合は、ギルドで集めても?」

「ああ、そこはお前に任せる」

 レントに任せておけば、問題はないだろう。

「了解しました。では、あの馬を使います」

 オルセーの乗っていた馬に跨り、すぐさま駆け出すレント。
 あっという間に視界から消えてしまった。

 さすがだな。
 あいつは仕事が早い。

 さてと……。
 しばらくはここで待機というわけか。

「お嬢、半刻から1刻は待機になりそうです」

「ええ、分かってる。でも、今日中にはレザンジュに入れるでしょ?」

「間違いないですな」

「だったら問題ないわ」

 レザンジュでは、レンヌの者も簡単には手を出せないはず。
 問題発生の確率も大幅に低下するはず。

 レザンジュに入国さえすれば。

「それに、もう急ぐ必要もないわね。レンヌの追手を撃退したのだから」

 再び追手がかからなければ、その通り。

「あまり早くカーンゴルムに着いても……。父はまだ王都にいないだろうし」

「確かに、御父上は王都カーンゴルムには戻っていませんな」

「ワディンに出征中だものね」

「ええ」

 近々王都に戻るという噂は聞いているが、それがいつになるかは分かっていない。

「……会えるかしら?」

「もちろんです」

「出征から戻られたら、会えるのね」

「はい、必ずや」

「そう……」

 ワディン紛争も、そろそろ決着がつくと思われる。
 いや、既に領都ワディナートが陥落している可能性すらある。

「父が戻ったら会える。やっと会える」

 その時も遠くはないだろう。

「……」

 お嬢の実の父。
 レザンジュ現国王の凱旋の日は近いのだから。




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