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第6章 移ろう魂編
急転 4
<セレスティーヌ視点>
「……」
分からない。
自分のことが思い出せない。
何も……。
……。
それに、ここは……。
ここは、どこなの?
……。
……。
分からない。
何も分からない。
自分の名前も。
ここがどこかも。
どうしてここで眠っていたのかも。
……。
自分に関する記憶がない。
まさか……記憶喪失?
わたしが記憶喪失。
そんなことが本当に起こっているの?
……。
信じられないけど、でも……。
そうとしか思えない。
だって、何も思い出せないのだから。
……。
わたしの眠っていた寝台のすぐそばには小さな燭台とロウソク。
その柔らかな光が部屋の中を照らしてくれる。
ひとりで眠るには広すぎる、少し古風な感じのする部屋。
全く覚えのない部屋。
……。
……。
わたしは記憶喪失という言葉を知っている。
ロウソクも知っている。
古風と感じる心もある。
なのに、自分のことは何も分からない。
何も分からないまま、見知らぬ部屋にひとり。
ひとり……。
「っ!」
……こわい。
自分の足元が崩れてしまったような、自分という存在が消えてしまいそうな。
言葉にならない不安!
そんなものが急にわたしを襲ってくる。
こわい。
思わず、両腕で自分を抱きすくめてしまう。
そうしないと、不安で押しつぶされてしまいそうだから。
……。
……。
どれくらいそうしていたのか……。
「えっ!?」
物音に気付いて顔を上げると。
これは……足音!
この部屋にやって来るの?
誰?
強張る身体をさらに強く抱きしめる。
すると、足音が部屋の前で消え。
扉が開き……。
「……」
「!?」
扉の前に現れたのは、息をのんでこちらを見つめる若い女性。
「セレス様っ!!」
誰?
何のこと?
「セレス様……」
セレス様って、何なの?
それに、あなたは?
「……」
わたしのことを知っているようだけど、わたしはあなたのことを知らないの。
でも、なぜだか……。
懐かしいような気も……。
「ああ、よかったぁ……」
その大きな瞳が潤んで、そして瞳から……。
「……!?」
わたしのために?
「目を覚まされて、うぅ……セレス様!」
直後、こちらに駆け寄って!
わたしは寝台の上に座り、動けないまま。
そんなわたしの前で立ち止まった彼女は、ゆっくりとわたしに腕を回し……。
優しく抱きしめてくれた。
「……」
「よかったです。このまま、このまま目を覚まされないのではと。不安でした。とても不安で……」
「……」
彼女の頬を伝うそれが、わたしの頬を温め。
心を満たしてくれる。
「本当によかった」
「……」
こんなに、わたしのことを心配してくれる彼女。
そんな彼女を……。
わたしは知らない。
知らないのに……。
不思議な感情が心の中に芽生え。
彼女の腕の中で、わたしの不安は信じられないくらい小さなものへと変わっていた。
「セレス様、申し訳ございません。失礼なことをしてしまいました」
少し落ち着いたのか、わたしから離れた彼女が頭を下げてくれる。
でも、どうして謝っているの?
わたしを心配してくれただけなのに?
分からない……。
「あの、頭を上げてください」
「えっ!」
頭を上げた彼女が、驚いたような顔でこちらを見つめて……。
「……まだ本調子ではないのですよね。そうですよ、これだけ眠っていたのですから。セレス様、もう少し横になって休んでください」
「……はい」
確かに、また頭が重くなってきた気がする。
「……」
記憶をなくしているということは、わたし頭に怪我でもしたのかな?
それとも病気?
「少し休まれれば元気になりますよ」
そう言って、グレーの綺麗な瞳に微笑みをたたえ、わたしの手を握ってくれる。
「……」
可愛らしい顔立ちに良く似合う茶色の髪を肩まで伸ばしている彼女。
まだ若いのかな?
20歳にはなっていないように見えるけど……。
「……」
やっぱり、何も分からない。
なのに、彼女と一緒にいると心が落ち着いてくる。
それは、わたしが彼女と親しかったから?
そうなのかもしれない。
「セレス様?」
でも、いつまでも、こうしていられないわ。
勇気を出して聞かないと。
「あの……。実はわたし記憶をなくしてしまったようなんです」
「えっ!?」
瞬間、空気が凍りついたような……。
「……」
彼女の優し気な顔が固まっている。
「あの、記憶が……」
「セレス様! 何をおっしゃっているのです?」
「……セレスという名前にも覚えがないんです」
「……」
「ごめんなさい」
「……本当ですか?」
「はい」
「本当に名前が分からないのですか?」
「……はい」
「そんな……」
また固まってしまった。
「あのぅ、お名前を伺ってもよろしいですか?」
「シアです! シアですよ、セレス様。……わたしのことも、分からない?」
シアさんというのね。
でも。
「……ごめんなさい」
「……」
「……」
ふたり、見つめ合ったまま時間だけが過ぎていく。
「……」
分からない。
自分のことが思い出せない。
何も……。
……。
それに、ここは……。
ここは、どこなの?
……。
……。
分からない。
何も分からない。
自分の名前も。
ここがどこかも。
どうしてここで眠っていたのかも。
……。
自分に関する記憶がない。
まさか……記憶喪失?
わたしが記憶喪失。
そんなことが本当に起こっているの?
……。
信じられないけど、でも……。
そうとしか思えない。
だって、何も思い出せないのだから。
……。
わたしの眠っていた寝台のすぐそばには小さな燭台とロウソク。
その柔らかな光が部屋の中を照らしてくれる。
ひとりで眠るには広すぎる、少し古風な感じのする部屋。
全く覚えのない部屋。
……。
……。
わたしは記憶喪失という言葉を知っている。
ロウソクも知っている。
古風と感じる心もある。
なのに、自分のことは何も分からない。
何も分からないまま、見知らぬ部屋にひとり。
ひとり……。
「っ!」
……こわい。
自分の足元が崩れてしまったような、自分という存在が消えてしまいそうな。
言葉にならない不安!
そんなものが急にわたしを襲ってくる。
こわい。
思わず、両腕で自分を抱きすくめてしまう。
そうしないと、不安で押しつぶされてしまいそうだから。
……。
……。
どれくらいそうしていたのか……。
「えっ!?」
物音に気付いて顔を上げると。
これは……足音!
この部屋にやって来るの?
誰?
強張る身体をさらに強く抱きしめる。
すると、足音が部屋の前で消え。
扉が開き……。
「……」
「!?」
扉の前に現れたのは、息をのんでこちらを見つめる若い女性。
「セレス様っ!!」
誰?
何のこと?
「セレス様……」
セレス様って、何なの?
それに、あなたは?
「……」
わたしのことを知っているようだけど、わたしはあなたのことを知らないの。
でも、なぜだか……。
懐かしいような気も……。
「ああ、よかったぁ……」
その大きな瞳が潤んで、そして瞳から……。
「……!?」
わたしのために?
「目を覚まされて、うぅ……セレス様!」
直後、こちらに駆け寄って!
わたしは寝台の上に座り、動けないまま。
そんなわたしの前で立ち止まった彼女は、ゆっくりとわたしに腕を回し……。
優しく抱きしめてくれた。
「……」
「よかったです。このまま、このまま目を覚まされないのではと。不安でした。とても不安で……」
「……」
彼女の頬を伝うそれが、わたしの頬を温め。
心を満たしてくれる。
「本当によかった」
「……」
こんなに、わたしのことを心配してくれる彼女。
そんな彼女を……。
わたしは知らない。
知らないのに……。
不思議な感情が心の中に芽生え。
彼女の腕の中で、わたしの不安は信じられないくらい小さなものへと変わっていた。
「セレス様、申し訳ございません。失礼なことをしてしまいました」
少し落ち着いたのか、わたしから離れた彼女が頭を下げてくれる。
でも、どうして謝っているの?
わたしを心配してくれただけなのに?
分からない……。
「あの、頭を上げてください」
「えっ!」
頭を上げた彼女が、驚いたような顔でこちらを見つめて……。
「……まだ本調子ではないのですよね。そうですよ、これだけ眠っていたのですから。セレス様、もう少し横になって休んでください」
「……はい」
確かに、また頭が重くなってきた気がする。
「……」
記憶をなくしているということは、わたし頭に怪我でもしたのかな?
それとも病気?
「少し休まれれば元気になりますよ」
そう言って、グレーの綺麗な瞳に微笑みをたたえ、わたしの手を握ってくれる。
「……」
可愛らしい顔立ちに良く似合う茶色の髪を肩まで伸ばしている彼女。
まだ若いのかな?
20歳にはなっていないように見えるけど……。
「……」
やっぱり、何も分からない。
なのに、彼女と一緒にいると心が落ち着いてくる。
それは、わたしが彼女と親しかったから?
そうなのかもしれない。
「セレス様?」
でも、いつまでも、こうしていられないわ。
勇気を出して聞かないと。
「あの……。実はわたし記憶をなくしてしまったようなんです」
「えっ!?」
瞬間、空気が凍りついたような……。
「……」
彼女の優し気な顔が固まっている。
「あの、記憶が……」
「セレス様! 何をおっしゃっているのです?」
「……セレスという名前にも覚えがないんです」
「……」
「ごめんなさい」
「……本当ですか?」
「はい」
「本当に名前が分からないのですか?」
「……はい」
「そんな……」
また固まってしまった。
「あのぅ、お名前を伺ってもよろしいですか?」
「シアです! シアですよ、セレス様。……わたしのことも、分からない?」
シアさんというのね。
でも。
「……ごめんなさい」
「……」
「……」
ふたり、見つめ合ったまま時間だけが過ぎていく。
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