30年待たされた異世界転移

明之 想

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第6章 移ろう魂編

急転 11


 ここにいる幸奈がセレス様だなんて。
 あり得るのか?

「……」

 セレス様が何らかの魔法やスキルで、異世界間を渡った可能性もあると?

 待てよ。
 それなら、なぜ幸奈の姿をしている?
 幸奈はどこに行ったんだ?

 姿をそのままに中身が入れ替わるなんていう特殊なスキル、セレス様は持っていないはずだぞ。
 俺が王都に旅に出た後、スキルを手に入れたとでも?

 さすがに、それはないはず。
 とすると、他の可能性は?

 ……異能。

 まさか、異能!?
 異能なら可能なのか?

「……」

 壬生少年の異能、魂移たまうつり
 あれは自分の魂を他人の体の中に移し、その体を奪うものだった。

 魂移が存在するのなら、それに近い異能があってもおかしくはない。
 その異能を幸奈が持っていたとすれば?

 いやいや、それはおかしい。
 この病室に初めてやって来た日、意識を失った幸奈を鑑定したけれど、そんな異能なんて持っていなかったんだから。

 だから、異能なんて考えられない。
 あり得な……。

 そうか!
 異能発現の特徴だ!

 異能は、時に極限状態において発現する。
 鷹郷さんたちは、そう話していた。
 確かに聞いた覚えがある!

「……」

 今回の状況。

 自ら薬を大量服用するような状態。
 命が危険な状態。
 意識が戻らない状態。
 まさに、極限状態じゃないか。

 つまり、幸奈は意識を失っている間に異能を発現したと?

「……」

 幸奈は異能の家門である和見家の娘。
 弟の武志は異能所持者。

 だったら、可能性も十分!

 そうだ。
 確認すればいい。
 もう一度鑑定すればいい。

 鑑定で見れば、一目瞭然。
 異能の有無も、目の前の幸奈がセレス様かどうかも。

 はは。
 こんなことにも、すぐに気づけないなんて。
 動転しすぎだろ。


「コーキさん!」

 その一言に思考が中断。

「……」

 彼女の瞳は濡れたまま。
 痛切な想いが否応なく伝わってくる。

「本当に私のことが分からないのですか!?」

「……」

「本当に?」

「ちょっと待ってくれ。少しでいいから」

 鑑定だ。
 とにかく鑑定を!


 セレスティーヌ・キルメニア・エル・ワディン

レベル 1

17歳 女 人間

HP   35
MP   51
STR  21
AGI  23
INT 156

<スキル>
予知  祝福

 ローディン神の加護、トトメリウス神の加護



 セレス様だ!
 俺の前にいる幸奈は、本当にセレス様だった。

 数日前は鑑定結果も幸奈だった、この幸奈が。

「……」

 鑑定が間違っているということは?
 ないだろうな。

 そもそも、本人が自身をセレス様だと言っている。
 その上、この鑑定結果。
 間違いない、か。

 ……ん?

 何か見えるぞ。
 セレス様のステータス表示の奥に薄く、重なるように文字が残っている。

 これは……和見幸奈と書かれた文字?
 今にも消えそうなほど薄いものだが、見える。
 確かに見える!

 鑑定が、幸奈とセレス様が入れ替わったことを示しているんだ!

 さらに、幸奈のステータスも。
 異能も確認できる!


<異能>
魂替たまかえ


 幸奈が異能を!
 異能を発現したんだ!

 しかも、この魂替という異能。
 簡単な内容しか分からないが、その効果を見れば今回のことも理解できてしまう。


 魂替:魂を移すことで体を交換する。


 こんなことが現実に起こるなんて。
 推測はしていたものの、やはり信じがたい。
 こうして、現実を目にしても……。


「コーキさん?」

「……」

 今すぐには受け入れがたいものがある。
 それでも、事実は事実。
 だから。

「コーキさん!」

「ああ、すみません」

 納得するしかない。

「あなたは……セレス様なのですね」

「はい!」

 今の幸奈の体の中にいるのはセレス様。

「コーキさん、思い出してくれたのですか?」

「……セレス様のこと、忘れていたわけではないんです」

「本当に?」

「はい。忘れるわけありませんよ」

「あぁ……良かった」

 っ!
 また涙を?

 慌ててハンカチを手渡す。

「ありがとうございます」

 頬を拭ってくれたけれど、光るものはまだ消えていない。

「もう大丈夫です」

「……」

「でも、コーキさん。なぜ私のことが分からなかったのですか?」

「それは……」

 説明するよりも。

「こちらに来てください」

「えっ、はい」

 戸惑うセレス様を鏡の前に連れて行く。
 当然、鏡に映るのは幸奈の姿。

「……これは、何でしょう?」

「鏡です」

「鏡? 知らない方が映っていますが?」

「それが今のセレス様の姿です」

「えっ!?」

 信じられないよな。
 俺だって同じ気持ちだ。

 でも、これは事実なんだよ、セレス様。


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