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第6章 移ろう魂編
急転 11
ここにいる幸奈がセレス様だなんて。
あり得るのか?
「……」
セレス様が何らかの魔法やスキルで、異世界間を渡った可能性もあると?
待てよ。
それなら、なぜ幸奈の姿をしている?
幸奈はどこに行ったんだ?
姿をそのままに中身が入れ替わるなんていう特殊なスキル、セレス様は持っていないはずだぞ。
俺が王都に旅に出た後、スキルを手に入れたとでも?
さすがに、それはないはず。
とすると、他の可能性は?
……異能。
まさか、異能!?
異能なら可能なのか?
「……」
壬生少年の異能、魂移。
あれは自分の魂を他人の体の中に移し、その体を奪うものだった。
魂移が存在するのなら、それに近い異能があってもおかしくはない。
その異能を幸奈が持っていたとすれば?
いやいや、それはおかしい。
この病室に初めてやって来た日、意識を失った幸奈を鑑定したけれど、そんな異能なんて持っていなかったんだから。
だから、異能なんて考えられない。
あり得な……。
そうか!
異能発現の特徴だ!
異能は、時に極限状態において発現する。
鷹郷さんたちは、そう話していた。
確かに聞いた覚えがある!
「……」
今回の状況。
自ら薬を大量服用するような状態。
命が危険な状態。
意識が戻らない状態。
まさに、極限状態じゃないか。
つまり、幸奈は意識を失っている間に異能を発現したと?
「……」
幸奈は異能の家門である和見家の娘。
弟の武志は異能所持者。
だったら、可能性も十分!
そうだ。
確認すればいい。
もう一度鑑定すればいい。
鑑定で見れば、一目瞭然。
異能の有無も、目の前の幸奈がセレス様かどうかも。
はは。
こんなことにも、すぐに気づけないなんて。
動転しすぎだろ。
「コーキさん!」
その一言に思考が中断。
「……」
彼女の瞳は濡れたまま。
痛切な想いが否応なく伝わってくる。
「本当に私のことが分からないのですか!?」
「……」
「本当に?」
「ちょっと待ってくれ。少しでいいから」
鑑定だ。
とにかく鑑定を!
セレスティーヌ・キルメニア・エル・ワディン
レベル 1
17歳 女 人間
HP 35
MP 51
STR 21
AGI 23
INT 156
<スキル>
予知 祝福
ローディン神の加護、トトメリウス神の加護
セレス様だ!
俺の前にいる幸奈は、本当にセレス様だった。
数日前は鑑定結果も幸奈だった、この幸奈が。
「……」
鑑定が間違っているということは?
ないだろうな。
そもそも、本人が自身をセレス様だと言っている。
その上、この鑑定結果。
間違いない、か。
……ん?
何か見えるぞ。
セレス様のステータス表示の奥に薄く、重なるように文字が残っている。
これは……和見幸奈と書かれた文字?
今にも消えそうなほど薄いものだが、見える。
確かに見える!
鑑定が、幸奈とセレス様が入れ替わったことを示しているんだ!
さらに、幸奈のステータスも。
異能も確認できる!
<異能>
魂替
幸奈が異能を!
異能を発現したんだ!
しかも、この魂替という異能。
簡単な内容しか分からないが、その効果を見れば今回のことも理解できてしまう。
魂替:魂を移すことで体を交換する。
こんなことが現実に起こるなんて。
推測はしていたものの、やはり信じがたい。
こうして、現実を目にしても……。
「コーキさん?」
「……」
今すぐには受け入れがたいものがある。
それでも、事実は事実。
だから。
「コーキさん!」
「ああ、すみません」
納得するしかない。
「あなたは……セレス様なのですね」
「はい!」
今の幸奈の体の中にいるのはセレス様。
「コーキさん、思い出してくれたのですか?」
「……セレス様のこと、忘れていたわけではないんです」
「本当に?」
「はい。忘れるわけありませんよ」
「あぁ……良かった」
っ!
また涙を?
慌ててハンカチを手渡す。
「ありがとうございます」
頬を拭ってくれたけれど、光るものはまだ消えていない。
「もう大丈夫です」
「……」
「でも、コーキさん。なぜ私のことが分からなかったのですか?」
「それは……」
説明するよりも。
「こちらに来てください」
「えっ、はい」
戸惑うセレス様を鏡の前に連れて行く。
当然、鏡に映るのは幸奈の姿。
「……これは、何でしょう?」
「鏡です」
「鏡? 知らない方が映っていますが?」
「それが今のセレス様の姿です」
「えっ!?」
信じられないよな。
俺だって同じ気持ちだ。
でも、これは事実なんだよ、セレス様。
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