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第7章 南部編
15分 1
剣は?
エビルズマリスを貫いたか?
っ、届いてない!
貫通手前で止まってる。
これでも足りないなんて。
なら!
ならば、もう一度!
「!?」
駄目だ。
もう動かない。
剣身が筋肉と真皮で固定されてしまった。
魔力の付与も消えて……。
剣姫の一撃目と同じ。
真横に突き刺さるドゥエリンガーとまったく同じ状態に。
「……」
俺の剣はドゥエリンガーより深く刺さっている。
首元に半ば以上埋まっている。
だが、貫通には至ってない。
これじゃあ、倒せない。
「アリマ、貫けぬのか?」
「……」
さっき悲鳴を上げたエビルズマリス。
雷撃の効果か、今は動きを止めている。
が、その眼には生気が。
確かな気力が。
「グルゥゥ」
雷撃で身体は痺れ、首元には二振りの剣が深々と突き刺さったまま。
青い鮮血も溢れ出ている。
なのに、あいつの眼は終わっていない。
「グギャ……」
ただ、この苦悶の表情。
もう一歩だ。
あと一押しがあれば倒せるはず。
「アリマ!」
「……続けます」
「……うむ」
剣身が首元に埋まっている状態では、剣に魔力を通すことはできない。
引き抜くのも容易じゃない。
いや、不可能に近い。
剣姫が試したことで、それは理解している。
じゃあ、何をすればいい?
どう続ければ?
続けるといった言葉が虚しく彷徨ってしまう。
と、その時。
「グゥオォ!」
あいつの周りの空間が歪み始めた。
「空間が? あいつ、逃げる気だぞ!」
そうだった。
半刻は過ぎてたんだ。
となると、いつ逃げられてもおかしくない。
このまま異界から去られたら……。
また、やり直し。
その上、次はエビルズマリスが進化してる可能性も。
「……」
防ぐ術は?
今できることは?
さっき握りしめていたあれはどうだ?
溜まって……?
間違いない、魔力の充填が完了してる!
なら、使える!
あの怪物に効果があるかどうかは分からない。
それでも、もうこれしかない。
賭けるしか!
「……エリルエイル」
「アリマ?」
「ベアサマ」
「どうした?」
「メニケアイニシャ」
「何を唱えて?」
「リゼンタ」
「まさか、宝具!?」
その通り。
マリスダリスの刻宝。
「リネムソウ!」
発動だ!
「グルゥ?」
唱え終わった呪言が、エビルズマリスを捕らえる。
呪言が実体化したかのように、歪んだ空間に喰らいつく。
「……」
「……」
空気が変わる。
エビルズマリスの周りが閉ざされ。
歪みがミシミシと音を立て、圧迫されていく。
呪言が幽鬼の息遣いをもって、エビルズマリスを喰らい尽くそうとしている。
そして。
キィィィン!
弾けた!
エビルズマリスの周りの歪みが弾け飛んだ!
「アリマ?」
「……上手くいったようです」
刻宝発動の結果。
俺たちの眼前では……。
異界脱出のための歪みが跡形もなく消失。
エビルズマリスも完全に動きを止めてしまった。
「宝具があいつを捕らえたんだな」
「ええ」
正直、成功確率が高いとは思っていなかった。
これしか手段がなかっただけなんだ。
けど、上手く発動してくれた。
逃亡を防ぐことができたんだ。
「……刻宝か?」
「はい、マリスダリスの刻宝です」
「なぜ君がそんな宝具を?」
「それは……」
オルセーから奪って……。
説明している時間はないな。
「今は急ぎましょう。刻宝の効果時間は長くないですから」
刻宝が効果を発揮するのは15分程度。
相手がエビルズマリスとなると、10分や5分の可能性もある。
「……うむ」
この限られた時間で、剣を貫通させることができなければ。
もう、あいつの脱出を防ぐ手立てはない。
15分が勝負。
正真正銘、最後の勝負だ。
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