30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
570 / 1,640
第7章 南部編

君の……

「どうやら……戻れたようだな」

 周囲には多くの魔物の遺骸、レザンジュ兵の遺体。
 これはもう、間違いない。

「ええ、戻ってきましたね」

「うむ」

 強く頷く剣姫イリサヴィア。
 その顔には、心からの笑顔を浮かべている。
 俺も同じ表情をしているんだろうな。

 そんな彼女の後ろから。

「コーキ!!」

 懐かしい顔に、懐かしい声。
 数日異界に閉じ込められていただけなのに、そんな感慨を覚えてしまう声だ。

「ヴァーン、戻って来たのか?」

「おうよ。おめえを探しに来たんだぜ」

「……そうか」

 けど、幸奈は?
 皆は、どうした?

「皆はどうしている? 今はどういう状況なんだ?」

「ん? 安心していいぜ。皆は野営地で待機中だかんな。俺がひとりここまで様子を見に来たってわけだな」

 まだ野営地で待機している。
 ということは、やはり時間の経過が普通じゃない。
 魔落同様、外では時間が止まっていたと?

 いや、待てよ。
 それにしては、周りのこの様子?
 俺たちが異界に取り込まれた時間とは明らかに異なっているような……。

「ヴァーン、今の時刻は?」

「正確には分かんねえが、4刻くらいだろ」

 4刻(8時)。

「4刻とは、いつの?」

「……おめえが消えた翌朝の4刻だが?」

 やっぱり、異界では時間が止まっていたわけじゃない。
 緩やかに進んでいたってことか?

「つうか、おめえ、なぜ石壁の中に?」

「……」

「とりあえず、出てこいよ」

「ああ」

 急ぎ、周りのストーンウォールを解除。

「で、おめえらはどっから現れたんだ?」

 ヴァーンからすれば、俺と剣姫は何もない空間からいきなり現れたように見えたんだろう。

「それは……」

 説明すると長くなりそうなので、簡単に。

「あいつの創った異界に閉じ込められていたんでな。今はまさに脱出したところになる」

「異界だって? ホントかよ?」

「間違いない」

「そうか……。で、今ここにいるってことは、竜の怪物を倒したってか?」

「おそらくは」

「何だ、煮え切らねえ」

「遺骸が消えてしまっては、確認のしようがないからな」

「どういうこった?」

 ということで、少しだけ経緯を説明すると。



「そんなことがなぁ」

「ああ」

「どれもこれも信じづれえが……。まっ、コーキの言うことだから本当なんだろうよ」

 そう、すべては真実。
 何の誇張もない。

「まっ、詳しい話はあとにして。とりあえず野営地に戻ろうぜ。5刻半までに合流しねえと、あいつら先に出発しちまう」

 そういう話になってんのか。

「分かった」

「ちょっと待て!」

 ヴァーンが話し始めてから、ずっと黙っていた剣姫。
 その表情は?

「ん? 何か用かよ? って、そっちも迎えが来たようだぜ」

「迎え?」

 坂の上から冒険者が歩いてくる。
 メルビンだ。


「よかった。イリサヴィアさん、無事だったのですね」

「メルビン、どうしてここに?」

「もちろん、あなたが心配だったからですよ」

「……そうか」

「ええ。イリサヴィアさんが無事で皆も喜びます。さあ、戻りましょう」

 ここで剣姫とはお別れ。
 異界で共に濃密な時間を過ごしてきたから、少し名残惜しい思いもある、が……。

 今は早く幸奈と合流したい。
 俺はまだ、幸奈と詳しい話をしてないんだ。
 つまり、当初の目的には着手すらしていないってことになる。

 お互い、迎えてくれる者もいることだし。

「では、イリサヴィア様、私たちはここで失礼します」

「いや、だから、ちょっと待て」

 ああ、呼び方が悪かったか。

「……イリサヴィアさん、これでいいですよね?」

「うっ、それはそれでいいのだが。そこじゃない」

「というと?」

「君の名はアリマではないのか? コーキという名前は何なのだ?」


感想 11

あなたにおすすめの小説

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

[完]異世界銭湯

三園 七詩
ファンタジー
下町で昔ながらの薪で沸かす銭湯を経営する一家が住んでいた。 しかし近くにスーパー銭湯が出来てから客足が激減…このままでは店を畳むしかない、そう思っていた。 暗い気持ちで目覚め、いつもの習慣のように準備をしようと外に出ると…そこは見慣れた下町ではなく見たことも無い場所に銭湯は建っていた…

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)