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第7章 南部編
婚約
しおりを挟む「仕方ない。鍛錬でもしようぜ、ヴァーンさん」
「そうだな」
「コーキさんもどうだ?」
「いや、遠慮しとく。ふたりでやってくれ」
「了解」
ヴァーンたちに限らず皆が暇を持て余しているようで、鍛錬をする騎士の姿をそこら中で見ることができる。耳に入ってくる熱のこもった声も少なくはない。
各人目立たないように気をつけてはいるものの、これじゃあな。
まっ、商人の護衛たちの訓練ってことになってるんだが……。
そんな村の中。
俺は時間を見つけては幸奈と会話をするようにしている。
が、残念ながらというか、当然ながらというか、まったく手応えがない。
手応えどころか、幸奈は俺と喋っていると頻繁に頭痛の兆候が出てしまうため、長く会話を続けられない状態だ。
前例があるから、周りの騎士たちの目も厳しいものがあるし……。
上手くいかないものだな。
「……」
頭痛は記憶が戻る前兆。
決して悪いことじゃない。
そう前向きに捉えることもできる。
ただ、苦しそうな幸奈を見るのは……。
頭痛で意識を失う姿なんて、もう見たくはない。
それに、無理やり記憶を戻そうとすると、どんな弊害が待っているかも不明だ。
幸奈は単なる記憶喪失じゃない。
オーバードーズと魂替が絡んだ複雑な症状なのだから。
やはり長期戦か。
覚悟せざるを得ないな。
「……」
異世界の幸奈だけでなく、日本も問題だ。
和見家でひとり頑張っているセレス様。
ここでは命の危険がないから大丈夫だと気丈に答えてくれる。
けど、そういう話じゃないだろ。
セレス様を長く放置していいわけがない。
なるべく頻繁に状況を確認すべき。
ということで、昨夜またセレス様に会ってきたのだが……。
「何かあったのですか?」
「いえ、その……少し」
「少し、何があったのでしょう?」
「……」
「セレス様?」
「……実は」
何度か同じ質問をすると、ようやくセレス様が話を始めてくれた。
「異能の関係者が幸奈さんである私に接触してきたんです」
和見の家は異能に関わりが深い家。
異能関係の接触もない話じゃない。
とはいえ、幸奈が異能に目覚めたという事実は誰も知らないはず。
そんな幸奈になぜ?
「どのようなことを?」
「それは、大したことでは……」
言葉に詰まっている。
俺に気を使っているから?
それとも幸奈に?
「こちらの世界に不慣れなセレス様ですから、小事が大事に至る可能性もあります。些細なことでも話してもらえませんか?」
「婚約……」
婚約?
誰が誰と?
「私に、幸奈さんに、異能者と婚約の話があったんです」
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