30年待たされた異世界転移

明之 想

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第7章 南部編

ヒーロー 1

<セレスティーヌ視点(姿は和見幸奈)>



「久しぶりだな」

「……」

 ああ、やっぱり。
 予知だったのね。

 ワディンから遠く離れたこの地で、祝福だけでなく予知まで使えるのは不思議だけど。少し疑っていたけど。
 私は間違いなく予知を使ったんだ。

「また、そんな表情を。せっかく婚約者である私が会いに来てやったというのに」

「……頼んでません」

「ふふ、相変わらずか」

「……」

 予知の通り、壬生兄と他に2人の男。
 3人の異能者が道を遮るようにして立っている。

「が、今日は伊織もいない。私の言うことを聞いてもらうぞ」

「……」

「心配しなくてもいい。悪いようにはしないからな」

「……」

「嫌なのか?」

「当たり前です!」

「ふふ、威勢がいいことだ」

 嫌なものを嫌と言っただけ。
 貴方の提案なんか受け入れるわけがない。
 私も幸奈さんも!

「だが、今の君にはどうしようもないだろ」

「……」

「伊織もいない。他に助けてくれる味方もいない。この状況ではな」

 自分の邪魔をする者がいないから思い通りになる。
 下劣極まりない考え。
 そんなことを恥ずかしげもなく口にするなんて。
 この人……。

「もちろん、君の父親の了承も得ている」

 和見の父が許した?
 家の外なのに?

「多少手荒なことをしてもいいそうだ」

「……お父様が直接そう言ったの?」

「ああ」

「……」

 やっぱり、あの父親は幸奈さんのことをモノとしか見ていないのね。

 分かっていたことだけど。
 心が痛い。

 これは、幸奈さんの心。
 父親を信じたい気持ちがまだ残っている?

 幸奈さん……。

 哀しく切ない。
 泣きたくなる感情。
 私まで……。


「まっ、こっちも君を傷つけたいとは思っていない。だから、分かるな?」

「……嫌です」

「ここまで言っても歯向かうのか。強情な娘だ」

「……」

「はあ~」

 呆れたような溜め息をつく壬生兄。
 呆れているのは私なのに。

「いったい、どこに不満がある? 壬生家の跡継ぎと婚約できるんだぞ」

 異能を使える権門の長男。
 あちらの世界で言えば、魔法を使える貴族家の後嗣みたいなもの。
 多くの人が自分の前に膝を屈し、世界が思い通りに動くと考えているような人物。

「答えてみろ」

 でも、この人は何も分かっていない。
 あなたのような人になびくのは、あなた自身になびいているからじゃないのよ。
 その力に魅力を感じているから。
 権力になびいているだけ。

 こんな男性と幸奈さんが婚約、結婚?
 考えられない。
 許せるわけがない。

「私の身には余りますので、遠慮させていただきます」

「父親が認めているというのに、壬生家の申し出を断るつもりか?」

「ええ! あなたとは婚約したくありません!」

「……」

 何、その気味の悪い表情は?

「ふふ……、ははは」

「……」

「君には壬生家の嫁として教育が必要みたいだな」

 その言葉とともに、壬生兄の後ろからふたりの男性が姿を現した。

 でも、これは予知通り。
 会話以外の展開はほぼ予知通りだ。

 会話が違ってしまったのは、私が言いたいことを言ったから。
 許してね、幸奈さん。

「このまま拘束してもいいんだが、趣向を変えよう」

「……」

 最初からそのつもりでしょ。


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